かつてのホンダは、国内販売ランキングでいえば3番手から4番手のメーカーだった。
ところが今は違う。2018年1~8月の累計販売ではトヨタに次いでホンダが2位。3位はスズキ、4位はダイハツ、5位が日産。ひと昔前と比べて大幅に増加したホンダの国内シェアを支えるのが、ぶっちぎりの販売No.1車となった軽自動車のN-BOXだ。
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一方で、ホンダ関係者は「嬉しいけれど、いくらN-BOXばかりが売れても……」と苦しい胸の内を漏らす。折しも2017年発売のシビックに続き、SUVのCR-Vも国内市場に帰ってきた。その新型CR-Vにホンダが抱える苦悩が見て取れる。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、Honda
今やホンダ車の約半数! それでも軽は「儲かる商品ではない」
ホンダは絶好調に思えるが、苦悩も抱える。以前に比べて、売れ筋が小さな車種に移ったことだ。
特に最近は軽自動車の販売比率が急増した。1998年には軽自動車規格が一新されて販売比率を高めたが、それでもホンダ全体に占める割合は33%だった。
ところが2018年1~8月は、軽自動車の比率が49%に達する。国内で売られるホンダ車の約半数が軽自動車になった。
しかも今は2017年9月に発売されたN-BOXが国内販売の1位を独走して、N-WGNやN-ONEは売れ行きを下げた。
直近の2018年8月には、N-BOX(N-BOXスラッシュ含む)がホンダ車全体の33%を占める。軽自動車に限れば、N-BOXの比率は64%だ。
販売会社のホンダカーズでは「今はN-BOXの売れ行きが圧倒的に多い。N-BOXは軽自動車だが、売れ筋の価格帯は150~180万円だから、以前のライフなどに比べると1台当たりの粗利は上まわる。それでも儲かる商品ではない。今はメーカーの直営店を中心に店舗が大型化して、管理費も高騰しており、経営はラクではない」という。
N-BOXバカ売れで進むホンダ党の登録車離れ
また、小型/普通車の売れ方も変化した。コンパクトなフィット+フリード+ヴェゼルの割合が、小型/普通車の63%に達した。
今は安全装備と環境性能の向上で車両価格が上昇傾向にあり、N-BOXは前述のように150~180万円、フィットはハイブリッドも含めると160~200万円が売れ筋だから、売れる車が全般的に小型化した。そうなれば薄利多売に向かってしまう。
ちなみに2011年に初代(先代)N-BOXが発売された時、ホンダは軽自動車を国内販売の柱にする計画を打ち出した。「2012年には軽自動車の年間販売台数を2倍に増やし、28万台にする」と宣言した。
この目標はかなり強気と思われたが、2012年の実際の届け出台数は、目標を大幅に超える32万1300台に達した。前年の2.6倍で、初代N-BOXの凄さを物語る。
2017年(1~12月)には、ホンダの軽自動車販売は34万台を超えて、ホンダ車の約半数に達したから、軽自動車に偏りすぎてしまった。
こうなると勢いは止まらない。ホンダ車のユーザーが次々とN-BOXに乗り替えていく。フィットやフリードはもちろん、ステップワゴンなどのミドルサイズからも乗り替えられ、ホンダが軽自動車に染まっていく。ホンダは内心慌てているだろう。
シビック&CR-V復活の狙いとチグハグな販売戦略
この販売動向に向けた対策のひとつが、一度廃止されたシビックとCR-Vの復活だ。シビックが復活した背景には、セダンを国内の寄居工場で生産するようになったことも影響したが、軽自動車に突っ走り過ぎた国内販売を修正する意図もあるだろう。
ただし、少し身勝手にうつる。シビックはホンダにとって最初の量産小型乗用車で、1972年に初代を発売して以来、日本の多くのユーザーに愛された。ホンダはシビックを通じて、日本のユーザーに育てられたといっても大げさではない。
そのシビックを2010年の8代目で廃止して、10代目で「改めて買ってください」というのは、日本のユーザーとしては快くない。しかも10代目シビックは、日本市場を意識して開発された車ではなく、海外専用車として2015年に発売された後、2017年に国内導入された。
CR-Vも4代目で国内販売を終了させ、5代目を海外専用にして2016年に発売した。この後、国内では2018年になって8月31日にターボ、11月1日にハイブリッドを発売している。
いずれも場当たり的な印象が強い。特にシビックは2017年7月27日に発表、発売は9月29日だった。同時期にはN-BOXの発売、フィットやステップワゴンのマイナーチェンジも行われている。
フィット、ステップワゴンともに販売台数の多い車種だから、販売店は多忙になる。せっかくシビックを発売するなら、この時期は避けて、腰を据えて取り組むべきだった。
それでもシビックの売れ行きは、1か月にタイプRを含めて1500~1600台で推移している。ホンダはユーザーに感謝すべきだろう。
CR-Vも含めて、愛車が国内から撤退して海外専用車になると、ユーザーは他メーカー車に乗り替えることも多い。販売店とユーザーの関係が途切れやすいから、シビックが月販1500~1600台なら成功と見るべきだ。
しかし、ホンダが喜ぶのは早い。シビックが堅調な背景には、300万円以下で買える運転の楽しい車が減った影響もあるからだ。
以前はトヨタならアルテッツァとそのワゴンになるアルテッツァジータ、アベンシス、日産はプリメーラと同ワゴン、三菱はギャランとレグナムという具合に車種を豊富にそろえ、ホンダのアコードもミドルサイズのスポーティなセダン&ワゴンだった。
ところが、今はこれらの大半が廃止されたり肥大化して、300万円以下で買える相応に設計が新しいスポーティな車種が減った。インプレッサ、アクセラ、カローラスポーツ、レヴォーグ程度しかない。
このうち、インプレッサは動力性能が大人しく、6速MTの採用を含めてシビックを選ぶ余地が生じた。車好きに向けた手頃な(といっても上限価格は300万円だが)セダン/ワゴン/ハッチバックが減ったことで、シビックが売れている面もある。
競合車より「高い」CR-Vのなぜ
ならばCR-Vはどうだろう。カーナビが標準装着されるものの、価格の最も安いターボのEX(5人乗り)は、2WDが323万280円、4WDは344万6280円だ。少し高めの設定になる。
今はSUVが人気のカテゴリーになり、販売増加に伴って価格競争も生じてきた。エクストレイル、CX-5、フォレスター、エクリプスクロスでは、2WDが260~280万円、4WDは280~300万円付近に、機能や装備の割に価格の安い主力グレードを設定する。
そうなるとCR-Vは、25万円相当のカーナビが標準装着されると考えても、ライバル車に比べて価格が20~30万円は高い。競争関係を考えれば、もう少し安く抑えるべきだ。
ユーザーの心証を考えると、せめてカーナビはディーラーオプションにすべきだった。標準装着は良心的ともいえるが、ライバル車がオプション設定にして価格を安く見せていると、ユーザーは第一印象でCR-Vが割高だと受け取ってしまう。見積書でライバル車と比較される段階に至らない。
先に述べたシビックの発売時期、CR-Vの装備と価格など、販売会社の意見を聞き、国内市場にもう少し目を向けて欲しい。N-BOXも生産初期の段階では、助手席にスーパースライドシートを装着した仕様の供給が過剰気味になったりした。
軽偏重是正は正しいが「やり方」に課題も
それでもホンダが軽自動車に偏った国内販売を是正しようと考えるのは正しい。軽自動車の増加を野放しにして全体需要の50%前後に達したりすると(2014年の全体需要に占める軽自動車比率は41%)、国内販売の儲けが減るだけでなく「軽自動車の増税」に発展するからだ。
そうなれば公共の交通機関の未発達地域では、主に高齢者が増税に苦しめられる。軽自動車の国内比率は多くて30%、理想は25%前後に抑えるべきで、ホンダの軽自動車比率が50%ではバランスが悪すぎる。
従ってホンダは今後も小型/普通車を増やすように力を入れるべきだが、もう少し上手にやって欲しい。軽自動車の比率が増えたことも含めて、諸悪の根源は、国内市場を真っすぐに見ていないことにある。
国内市場と真剣に向き合わないと、さまざまな問題が噴出する。
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