ポルシェは2018年6月9日、ツッフェンハウゼンで開催される「ポルシェ スポーツカー70周年」公式祝賀会の一環として、「911スピードスターコンセプト」のワールドプレミアを行うと発表した。
ポルシェのスピードスターモデルの歴史は長い。1952年に米国市場向けに16台製造された356 1500アメリカロードスターは、完全にハンドメイドのアルミニウム製ボディを採用し、356クーペより60kg軽量な2座オープンカーに仕上がっていた。
ポルシェ「911 GT3 RS」ベースのレーシングカーを開発
最高出力70PSの水平対向4気筒エンジンによる175km/hの最高速度は、当時としては偉業とも呼べるもの。また、ドアのスロットインウインドウ、折りたたみ式レインカバートップ、軽量バケットシートを備えていて、スピードスターデザインのいくつかの主要エレメントが、この時すでに具現化されていた。
その後、2010年までに、8つのシリーズとスペシャルモデルが「スピードスター」の名称で製造され、「356A 1500GSカレラGTスピードスター」は1957年に、そして1988年には初代911スピードスターが続いている。しかし、2010年に356台が製造されたタイプ997の911スピードスターをもって、スピードスターモデルの生産は中断されていた。
今回、ポルシェ スポーツカーの誕生70周年を記念した911スピードスターコンセプトは、非常にエキサイティングなオープントップスポーツカーの公道仕様スタディモデルとなっている。この新しいスピードスターが重視するのは、純粋な運転体験だ。
ツートンシェルに覆われたドライブテクノロジーは、現行型のGTモデルに基づいている。開発は、「911 GT2 RS」や「GT3 RS」を生み出した、ヴァイザッハのポルシェ モータースポーツセンターで行なわれたそうだ。
今のところ、このコンセプトカーの生産型は2019年まで公開されることはないとされている。しかし将来的な市販車としてのポテンシャルは随所に垣間見ることができ、市販化を進めるか否かの判断は、今後数ヶ月以内に決定されるらしい。
911スピードスターコンセプトの特徴には、いっそう傾斜したフロントウインドウと短いウインドウフレーム、またこれに合わせて短縮されたサイドウインドウなどが挙げられる。こうした特徴が、非常に低いフライラインを備えた力強いプロフィールを与えていて、「356 1500スピードスター」などの過去のモデルを彷彿させる。
フロントシート後方では、1988年の911スピードスター以来の伝統的なエレメントである「ダブルバブル」カーボンファイバー製リアカバーが、ロールオーバープロテクション構造を覆っている。また、バブル間の対照的な2つのブラックスラットは空力機能を付加し、透明なプレキシガラス製ディフレクターには“70 years of Porsche”ロゴが刻印されている。
さらに、911スピードスターコンセプトは、歴史的オリジナルモデルのように、コンバーチブルトップの代わりに軽量トノカバーを備えている。駐車時に車内を雨から守るこのカバーは、8個のTenaxファスナーで取り付けられるようになっている。
スピードスターフィロソフィの核となる軽量設計は、ナビゲーション、ラジオ、およびエアコンシステムの全てが排除されたインテリアに受け継がれている。フルバケットシートはカーボン製。コニャック356のライトブラウンのアニリンレザーカバーは、先代ゆずりのクラシックな仕様となっている。
コンセプトカーのワイドなボディは、「911 カレラ4カブリオレ」から採用されたもの。フェンダー、フロントフード、およびリアカバーは軽量の炭素繊維複合材料でできていて、このへんは最新のスペックといっていい。
一方、GTシルバーとホワイトの伝統的なボディカラーは、フロントフード中央に配置された50年代スタイルのセンター燃料タンクキャップ、タルボ形状のドアミラー、あるいはヘッドライトのユニークなデザインなどとともに、クラシックな雰囲気を醸し出すものとなっている。いずれも丁寧な仕上げが特徴で、かつてのポルシェ レーシングカーを想起させるのに充分だ。
ちなみに十字型のような効果を生み出すヘッドライトカバーの表面処理は、ポルシェ モータースポーツの黎明期に普及した、飛び石による破損を防ぐためヘッドライトにテーピングを施すという、慣例への敬意を表したものだ。またワイドなBピラーと車体後部は、圧延金メッキされた“Speedster”のレタリングで飾られている。
911スピードスターコンセプトのメカニズムは、最先端のコンポーネントを備えている。シャシーは911 GT3由来で、フックスデザインの21インチホイールは、ハイグロスポリッシュのクローバーリーフが細かなコントラストを生み出している。このタイプのホイールとしては、初めてセンターロック方式を採用した。
チタン製テールパイプを備えたエグゾーストシステムと6速マニュアルトランスミッションを含むパワートレインも、最新のGTモデルから受け継いでいる。搭載される水平対向6気筒エンジンは、最高出力500PSを発生。最高回転数は9,000rpmに達する。
この911スピードスターコンセプトを作るきっかけにもなった、スポーツカー70周年を記念する行事としては、特別展やこの記念すべき年を祝う数々の活動も行なわれる。
ポルシェ ミュージアムの特別展では、ポルシェがスポーツカーの開発に大きな影響を与えてきた1948年から今日に至るまでの数多くの物語とマイルストンを展示。もちろんその目的は、過去70年間にわたるポルシェの目覚しい躍進にハイライトを当てることにある。
また2018年、ポルシェは世界中のファンと共に、6月9日を“Sports Car Together Day”として祝福する。6月16日~17日の週末には、従業員、ツッフェンハウゼンの住民、および将来の顧客を、シュトゥットガルトの工場周辺で開催される祝賀会に迎えることになっている。
7月12日~15日にイギリスのグッドウッドで開催される“Festival of Speed”、9月27日~30日にカリフォルニアで開催される“Rennsport Reunion”でも、70周年記念が祝われる。そして10月13日にシュトゥットガルトのポルシェ アリーナで初開催される“Sound Night”のイベントで、祝賀会はフィナーレを迎える。
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