風の力でクルマの動きをコントロール
クルマのトランクの上に柱を立てて、その上に颯爽と乗っているのが「リアウイング」。「GTウイング」と呼ばれることもあります。小ぶりなものは「スポイラー」という名前です。スポーツカーなど、クルマの多くには、そうした部品が使われていますが、いったいどのような役割を果たしているのでしょうか。
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リアウイングやスポイラーは走行中にクルマが受ける空気の流れを受けて、その力を走行に利用します。空気の力を使うため「空力パーツ」や「エアロパーツ」と呼ばれ、部品のある部分によって役割が異なっています。
非常に目立つ、大きなリアウイング/GTウイングは、カーブを速く曲がるのに貢献します。カーブを曲がる速度を高めてゆくと、遠心力が大きくなり、最後にはタイヤが滑って走りたい走行ラインよりも外側に膨らんだり、最悪、クルクルと回るスピン状態になったりしてしまいます。その限界点はタイヤが地面をつかむ力=グリップ力にかかっています。グリップ力が高いほど、より速くカーブを曲がることができるのです。そしてタイヤのグリップ力は、地面に押し付ける力が強いほど高まります。消しゴムで紙に書かれた文字を消すときに、力をかけて押し付けるほうが、よりきれいに消せるように、ゴムは上から力をかけた方がより強く地面との抵抗を増やせます。
実際に、カーブを曲がっているときに上から力をかけるのがリアウイング/GTウイングです。走行中に前から流れてくる風を受けて、その力を下向きに変え、車体を地面に押し付けます。この力を「ダウンフォース」と呼びます。つまり、大きなリアウイング/GTウイングを装着したクルマは、カーブで大きな下向きの力が発生して、タイヤに大きなグリップ力を生み出します。その結果、カーブを速く走ることができるのです。けっして飾りの存在なわけではありません。
スポイラーもただの飾りではない
小さなスポイラーにも、リアウイング/GTウイングのようにダウンフォースを生み出す力があります。とはいえ、その力はサイズ並みに小さいもの。それよりもスポイラーには大事な役割があります。それが走行中の前後姿勢の調整です。
クルマは速度を高めてゆくと、クルマの下に流れた風がクルマを持ちあげようとします。空を飛ぶほどのものではありませんが、タイヤにかかる上からの力が弱まるので、タイヤのグリップは少なくなります。ここで問題になるのが前後のバランスです。車体の前側ばかりが浮き上がると、タイヤのグリップ力が弱まって舵の効きが悪くなります。逆に後輪側が浮き上がってグリップ力が後輪だけ減ると、なにかのはずみに後輪側から滑ってスピン状態に陥る可能性が高まります。前か後ろか、どちらかとなれば当然、後輪が浮き上がるほうが危険です。そのため車体の後ろ側にスポイラーを装着するクルマが多いのです。
ちなみに車体の前側の下に装着するスポイラーもあります。フロントスポイラーと呼ばれるパーツです。車体の下に風が流れ込むのを減らすことで、車体の浮き上がりを防止します。たいていは前後のスポイラーをセットで装着してバランスがとられます。
「空気の力」が燃費を左右する?
リアウイング/GTウイングやスポイラーで、路面に押し付ける力を強くしようとすれば、前から流れてくる風を、なるべく大きな面で受けるのが最上です。しかし、下向きの力は大きくなりますが、前に進む力を邪魔する抵抗にもなります。つまり、遅くなったり、燃費が悪くなったりします。そのためレース車両などに装着される空力パーツは、下向きの力をなるべく大きくしつつも抵抗にならないような形状が模索されています。
実のところ、一般的な量産車にも空力パーツが数多く採用されています。車体の下を通り抜ける風をスムーズに流せるようになれば、抵抗が減ります。また、車体の下側のタイヤの前の部分に風よけを取り付けることで、タイヤに走行風が当たって生まれる抵抗を減らすというものも。さらに車体のサイド部に小さな突起をつけて、車体の表面を流れる空気の流れをコントロール。抵抗を減らすことで燃費向上を狙う空力パーツもあります。ミラーの根本や、ボディ後ろの角の部分を探すと見つけることができるでしょう。
クルマは走行すれば必ず走行風にさらされます。その風の力を有用に利用するために存在するのがリアウイングを筆頭にした空力パーツだったのです。
【写真】FF車のリアウイングは? 「シビック タイプR」の場合
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