欧州で電動車両へのシフトが喧伝され、中国ではNEV(ニュー・エネルギー・ビークル)法が施行されるという世界的な流れがある。それを受けて、「電気自動車が次世代の主流になる」、しかし「日本のメーカーは対応が遅れている」といった報道が目立っている。
こうした報道に基づく指摘について、おそらくクルマに一家言ある自動車ファンは納得していないではないだろうか。たとえば電気自動車の量産でいえば、日産が先行していることは事実である。
クルマがぜんぶ電気自動車になると走る楽しさは消えてしまうのか?
もちろん、各国市場においていえば現地メーカーがリードしている面はあるが、普及価格帯の電気自動車を量産して、すでにフルモデルチェンジを果たしたという段階であり、いまから電気自動車に本格参入しようというメーカーを周回遅れにしている感はある。
また、欧州でいうところの電動車両には実はハイブリッドが含まれている。しかも、48VのISG(モーター機能付発電機)を使ったマイルドハイブリッドも電動車両にカウントする節が見られる。
たしかに48Vの電装系には効率とコストと燃費改善効果のバランスで優れている部分はあるが、電動車両と呼ぶのには違和感を覚える。なにしろ日本市場でいえばスズキの軽自動車に採用されているハイブリッドシステムと基本的には変わらないからだ(12Vとはいえ)。
電動車両といってもピュアEVだけを指しているわけではないのだ。そして、ハイブリッドを電動車両に含めるだとすると、そのトップランナーは、20年も前に初代プリウスをリリースしたトヨタになる。
トヨタによると、ハイブリッド、電気自動車、燃料電池車を合わせた「電動車両」の世界販売台数のうち43%がトヨタ車なのだという。それでも、トヨタが100%電気自動車を現時点で量産していないことは事実であり、そのディスアドバンテージはあるだろう。しかし、現実的に電動車両のカテゴリーでいえば圧倒的な存在感を示す。
大手メディアのいう「日本のメーカー」が、具体的にどこを指しているのかは不明だが、少なくとも日産(外資系ではあるが)が100%電気自動車で実績があり、その傘下となった三菱自動車はプラグインハイブリッド車を量産している。そして、当面は電動車両の中心となるであろうハイブリッドについてはトヨタがリードしている状況で、どこで遅れを取っているのか、わかりづらいのも事実だろう。
具体的に「トヨタは、実績あるハイブリッド技術を利用して、普及価格帯の電気自動車を出すべきだ」という指摘であればわからなくはない。たしかにハイブリッド車からエンジンを外して、バッテリーを増やせば100%電気自動車になるというロジックは理解できるが、ハイブリッドと100%電気自動車ではバッテリーに求められる特性やマネージメントが異なるのも事実であり、そうした部分での経験不足は否めない。研究所とリアルワールドでは得られる知見も異なるからだ。もちろん、現在主流のリチウムイオン電池にかわるエネルギー密度に優れた新しい蓄電システムの開発も必要だ。解決すべき問題は山積みである。
このように個別の自動車メーカーには課題はあるだろう。しかし電動車両ムーブメント全般において、安易に「日本の自動車メーカーは遅れている」という前提に立つのは事実に基づいた判断ではないように思うのだ。リードしている部分もあり、その優位性を活かす戦略を議論するほうが生産的かつ前向きではないだろうか。
もちろん、技術は日進月歩であり、ちょっと判断を誤ったり、対応が遅れたりすれば、現在のアドバンテージもあっという間にライバルにキャッチアップされてしまうので、ドンと構えておけばいいといった類の話ではないのは当然のことだが、むしろ、ハイブリッドという言葉を表に出さず、ハイブリッドカーを含んだ「EV(電動車両)シフト」というプロモーションには、土俵を変えようという、ブランディング的な意図があると考えるのが妥当ではないだろうか。
(文:山本晋也)
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