日本車には複数のカテゴリーがあるが、販売台数が最も多いのは軽自動車だ。新車として売られるクルマの約36%を軽自動車が占める。
従って軽自動車には人気車が目立つが、地味だったり注目度の低い車種も含まれる。ここではそのような軽自動車の中から、優れた特徴を持つ埋もれた車種をガイドしたい。
文:渡辺陽一郎
■ダイハツ コペン 2017年8月販売台数185台
まず取り上げるのは、2シータースポーティクーペのダイハツコペンだ。2017年1~9月の月販平均台数は238台で、ダイハツタントの2%程度。発売から3年以上を経過しながら、メーカーが宣伝を行わないこともあって売れ行きが大幅に落ち込んだ。
しかし軽自動車では画期的なクルマだ。マツダロードスターRFのようなアクティブトップ(電動開閉式のハードトップ)を装着して、スイッチ操作により手軽にオープンドライブを満喫できる。近所に買い物に出かける時でも、ハードトップを開けば気分が変わり、爽快な走りを味わえる。毎日の移動を楽しくするアクティブトップと、軽自動車のカテゴリーは相性が良い。
またコペンは外装に樹脂を使うため、ボンネット、フェンダー、前後のバンパー、さらにヘッドランプを含めて「着せ替え」を可能にした。コペンにはローブ/セロ/エクスプレイという3つのシリーズがあり、この内のローブとセロは互換性があって互いに着せ替えられる。
例えば古くなった時にローブの外観をセロに着せ替えれば、リフレッシュされて新車の気分を味わえるだろう。価格はフルセットが37万4760円、フロントあるいはリヤまわりだけなら20万6280円だ。
■スズキ アルトラパン 2017年8月販売台数1853台
コペンと同様、趣味性の強い軽自動車ではスズキアルトラパンも取り上げたい。実用重視の軽自動車ではなく、あまり注目されないが優れた商品だ。現行型はホイールベース(前輪と後輪の間隔)を拡大したこともあり、従来型に比べて外観の存在感を強めた。落ち着いた色彩も用意されて従来の「女の子路線」を脱している。男性ユーザーが使っても気後れしない。
内装は細かく工夫され、インパネの助手席前側付近はテーブル状にデザインした。下側には引き出し式の収納ボックスも装着する。リラックスできる雰囲気は貴重で、類似車種は日産キューブくらいだろう。輸入車には見当たらない。
実用性も高く、特に後席が広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。これはミドルサイズのセダンと同程度だから、大人4名が窮屈に感じることなく乗車できる。従来型に比べると、幅広いユーザーに適する軽自動車に発展した。
■ホンダ N-ONE 2017年8月販売台数1413台
ホンダN-ONEも、もう少し注目されて良いクルマだ。2017年1~9月の月販平均台数は1146台だから、相応に売れてはいるがN-BOXに比べると7%程度にとどまる。
N-ONEはフロントマスクやリヤビューを1967年に発売されたホンダN360に似た雰囲気に仕上げ、天井は高めに設定したから車内が広い。インパネなどの内装は上質で、前席は座り心地も良い。コンパクトカーと同等か、それ以上の質感を備える。
乗り心地も軽自動車では快適な部類に入り、ターボの最大トルクは10.6kgm(2600回転)。コンパクトカーの1Lエンジンと同等の性能だから走りの質も高まった。余裕のある動力性能、快適な乗り心地、上質な内装により、プレミアム感覚の軽自動車といえるだろう。
しかもローダウンというグレードは、全高を1545mmに抑えたから立体駐車場を利用しやすい。全高が1610mmの標準ボディとはルーフの形状も異なり、要は2種類のボディを用意した。
■スズキ ハスラー 2017年8月販売台数4609台
かつて人気を高めながら、最近は話題にならない車種としてスズキハスラーも挙げられる。2014年1月の発売後には、1か月の販売台数が1万台を超えたこともあるが、2017年1~9月の月販平均は6505台だ。今でも堅調に売れてはいるが、発売から4年近くを経てインパクトは薄れた。
それでもハスラーの魅力は色褪せない。前後席の居住性はワゴンRと同等で、大人4名が快適に乗車できる。後席の背もたれを前側に倒すと座面も下がってフラットで広い荷室になり、汚れを落としやすい素材を使うからアウトドアグッズも気兼ねなく積める。荷室の実用性は今でも十分に魅力的だ。
インパネの表面は、シボ(細かな模様)を使わず滑らかに仕上げ、ステッカーなどを貼ることができる。
安全装備にはデュアルカメラブレーキサポートが用意され、衝突の危険が迫った時は、緊急自動ブレーキを作動させる。センサーとして2個のカメラを使うから、歩行者の検知も可能だ。
■スズキ エブリイワゴン 2017年8月販売台数1264台
ハスラーよりもさらに荷室の広い軽自動車として、同じスズキのエブリイワゴンにも注目したい。軽商用車のエブリイをベースに開発されたワゴンで、エンジンは前席の下に搭載する。そのために室内長に余裕があり、4名乗車時でも荷物をタップリ積むことが可能だ。後席はコンパクトに畳めて、大人2名が就寝可能な広い荷室に変更できる。
居住性も優れ、後席のスライド位置を後端まで寄せると、前後席に座る乗員同士のヒップポイント間隔は1080mmに達する。ワゴンRの1035mmを上まわり、後席の足元空間にも十分な余裕を確保した。
全高が1800mmを超えるために頭上の空間も広く、軽商用車をベースにしたワゴンでは、ナンバーワンの居住性を誇る。ライバル車のダイハツアトレーワゴン、ホンダバモスと比べても居住性は格段に快適だ。
後席側にはスライドドアを装着して開口幅は775mmに達する。スペーシアの580mm、N-BOXの640mmを上まわって乗降性も優れている。
そして軽商用車をベースにしたワゴンでは、唯一、緊急自動ブレーキのレーダーブレーキサポートを装着した。赤外線レーザー方式だから、作動速度の上限は時速30kmにとどまって歩行者は検知できないが、市街地での追突事故を防止する効果は高い。
エブリイワゴンは、日産NV100クリッパーリオ、マツダスクラムワゴン、三菱タウンボックスとして、3メーカーにも供給される。目立たない存在でも実用性は抜群に高く、そのために乗用車を手掛ける国産メーカー8社の内、半数がエブリイワゴンおよびそのOEM車を売っている。
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