車両保険を上手く使うと得をすることも
ここ数年の日本の夏は異常な気候が続いている。毎年のように、日本のどこかで大規模な洪水被害が発生しているし、ほぼ日本全国でゲリラ豪雨が頻発。今年は東京都内でも雹(ひょう)が頻繁に降り、洪水による水没や雹害により多くのクルマが被害を受けた。
水没被害や雹害を受けた車輛の修理にはかなり高額な修理費用がかかる。たとえばハイブリッド車が水没した場合には、規定によりハイブリッドユニットすべてが交換対象となるので、車種にもよるが修理費用が80万円ほどかかるケースもざらとのこと。
それにも増して冠水した車内が完全に乾くことはないし、車内に侵入した河川や下水道水などによる異臭は残ってしまう。雹害についても、最低でもボンネット、トランクリッド、そして屋根の交換作業を行わなければならないので、やはり80万円ほどの修理代は覚悟しなければならないようである。しかも屋根の交換に際しては、ピラー部で車体と被害を受けた屋根を切り離し、新しい屋根とピラー部を溶接することになるので、事故車扱いとなり、車両の価値を大きく失うことになる。
かなり高額な修理費用については、車両保険に加入していれば保険金にて修理費用をカバーすることが可能だ。今回はこの車両保険を上手く使って、水没被害や雹害を受けたことを逆手にしっかり得をしたという話を紹介しよう。
新車販売業界に精通しているA氏によると、「3回目車検(つまり新規登録から7年ほど経過)を迎えるか迎えないかといったクルマで、やや過走行気味で、内外装の状態があまり良くない車両(つまり下取り査定額が同年式同型車のなかでも悪い)がとくに旨味が大きいですね」とのことであった。
そして「このような車両の場合、下取り査定額より、車両保険で得られる修理代相当額のほうが多いことがあります。このときには全損扱いせずに、あくまで修理対応にすることが肝心となります。水没車や雹害車は再販価値がほとんどなくなりますが、新車代替えの際の下取り査定では、新車値引き支援のためや、リサイクル料金の関係もあり再販予定扱いとするので、数万円でも査定額をつけるディーラーがほとんどです。そうなると保険金に加え、さらに下取り査定額も計上されますので、水没や雹害などを受けない状態で下取り査定に出して新車を購入するよりも、下取り査定額は結構ダウンしてしまいますが、トータルで見ると得するケースがあるのです」とのこと。
もちろんすべてのケースがあてはまる場合ではないが、水没や雹害に遭った場合に、修理を前提に保険金を請求するが、結局修理しないで保険金も新車購入資金の一部に充当して、新車へ入れ替えるほうが得するというのである。
「実際このようなケースで新車へ入れ替えるケースも多いようですし、雹害などは見た目が悪いですが、そのままでも動きますので修理も新車代替えもせずに、保険金を生活費に充当するツワモノもいるようですよ」とのこと。
レアケースでは、新車への代替えが決まり、契約がすでに成立したタイミングで下取り予定車が水没や雹害を受けた場合。このような場合には、被害を受ける前の状態での下取り査定額が新車の支払い代金の一部に組み込まれている。そのため水没や雹害を受けたあとに下取り予定車を再査定することになり、当然下取り査定額はダウンするので、新たな支払い負担が発生する。
そこで車両保険に加入していれば、下取り予定車を修理するということで保険金を受け取ることにする。注文書上は下取り予定車の価値が減ってしまうので、支払い負担は一時的に増えるのだが、後日保険金を受け取れば、それで支払い増をフォローするだけでなく、減額となった下取り査定額も含めれば、水没や雹害に遭う前より支払い負担が軽くなるということもあるとのことなのだ。まさに”災い転じて福と成す”とはこのことである。
前述したようにすべてのケースで得するというわけでもないし、そもそも車両保険に加入していることが大前提。当然保険を使うので、保険料が上がる心配もある(保険料に関しては、複数年契約などをしていれば保険料アップを回避できる可能性もある)ので、まったく”ノーリスク”というわけでもない。
ただ雹害などでは修理すれば事故車扱いとなるので、修理して愛車に乗り続ければ、深刻なリセールバリューのダウンは確実。A氏によれば、「水没や雹害に遭ってそのまま修理して乗り続けるひとのほうが少ないようです」と語っている。
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