ハチロクが消えたあと若者の情熱を一身に受けたスポーティカー
S13シルビアは、1988年5月にデビューした5代目シルビア。初代シルビアは1965年に登場していて、意外に歴史のある車種だったが、そんな歴代シルビアのなかでも一番インパクトのある一台だった。
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コンセプトは「若い男女のカーライフをお洒落に演出する、センスが良く、走りが楽しい2ドアスタイリッシュクーペ」。
このコンセプトどおり、従来のどちらかといえば野暮ったい日産のデザインと一線を画す、洗練されたちょっとイタリアンチックな流麗ともいえるスタイリングを身にまとい、「アートフォース(シルビア)」というキャッチコピーでCMを展開。
1988年のグッドデザイン大賞を受賞するほど、評価が高かく、デビューから34カ月連続で、スポーツスペシャリティカー市場において売上No.1となるほど爆発的な人気を誇った。
そのヒットの理由は、スタイリングだけでなく、「走り」のクルマとしての魅力が満載だったから。
それまで絶大な人気があった、トヨタのカローラ・レビン/スプリンター・トレノ(AE86)が1987年に生産中止、FFのAE92にモデルチェンジしたことで、1.6リッターから1.8リッタークラスでFRのスポーティカーが欲しい若者たちは、次のクルマに悩んでいた。
AE86だけでなく、5ナンバーサイズのクルマでは一気にFF化が進み、FR車が絶滅危惧種になりかけた時期だったので、新しいFRのスポーティーモデルとして登場したS13シルビアは、まさに救世主的存在。「待ってました」とばかり、みんなが一斉に飛びついたのだ。
S13シルビアは、ただの新車のFR車というだけでなく、リヤサスに新開発のマルチリンクサスペンション(フロントはストラット)を採用し、エンジンには当時としては強力な、1.8リッターツインカムターボ(K’sのCA18DET=175馬力)を用意。
NAの4A-Gエンジンでグロスで130馬力しかなく、リヤサスもリヤラテラルロッド付きの5リンクリジッドアクスルサスペンションだったAE86から比べれば、何段階も上のスペックで、当時の若者たちにどれだけ魅力的に映ったことか……。
オーテックから受注生産のオープンモデルも登場
素姓もよく、FRならではの操縦性の良さを感じられるハンドリングで、新車価格がNAのJ’s(ジェイズ)なら150万円台から。ターボのK’s(ケーズ)でも203万円(MC後・MT)という設定もうれしかった。
1988年に、オーテックジャパンからK’sベースのコンバーチブルが登場(受注生産)。1991年にマイナーチェンジを行い、エンジンが1.8リッターのCA18系から、2リッターのSR20系にアップデート。ターボでは30馬力アップの205馬力に動力性能を向上した。
1993年10月に、フルモデルチェンジを受けてS14になるが、スタイリングの魅力を一気に失い、むしろS13の評価と人気が高まることに。
今考えると、けっこう優秀なリヤのマルチリンクサスに対し、キャパもストロークも不足気味のフロントストラットの組み合わせで、ちょっとアンバランスでスイートスポットの狭いクルマだったかもしれないが、ボディがきれいで、パワフルなターボで、価格もお買い得で、FR。おまけに当時はデートカーなどと呼ばれ、女の子にも評判がよかったりして、これだけ揃えば、クルマ好きだって増えて当然!?
R32系スカイラインの1年前のデビューだったが、新しい日産を予感させるのに十分な内容を持ったクルマだった。
歴史的に見ても、1988年のこのS13シルビアと、1989年のR32スカイライン、そして1990年のP10プリメーラの3台は、日産の黄金期を象徴するクルマだったと断言できる。
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