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イタリア生まれのエネルジカ「EGO+」は猛烈に速くて普通にツーリングに使える電動バイクだった

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イタリア生まれのエネルジカ「EGO+」は猛烈に速くて普通にツーリングに使える電動バイクだった

MotoEレーサーの公道仕様

 レースに興味がない人は聞き覚えがないかもしれませんが、2014年に創設されたイタリアのエネルジカは、2019~2022年にMotoEに車両を供給していた、電動バイク専門メーカーです。

【画像】電動レーサーのストリート仕様!! エネルジカ「EGO+」を画像で見る(18枚)

 もっとも、親会社のCRPグループは(積層造形を主業務とする会社で、モータースポーツや宇宙産業、船舶、医療などの分野で活躍)、2010年から電動バイクの世界に進出し、世界選手権のMotoEが始まる以前から欧米のレースでは数々の栄冠を獲得していたので、同社と2輪の関わりはすでに十数年に及んでいます。

 そんなエネルジカが市販車の発売を開始したのは2015年からで、現在はMotoEレーサーのストリート仕様と言うべき「EGO+」(571万円~)、そのネイキッド仕様となる「EVA-RIBELLE」(539万円~)、ネオクラシックテイストの「ESSEESSE9」(495万円~)、アドベンチャーツアラーの「EXPERIA」(522万円~)がラインナップに並んでいます。

 なお、エネルジカが販売するすべての車両は、購入時にさまざまなオプションを選択することが可能で、埼玉県三郷市の「金城IVY RACING」から借用した試乗車の「EGO+」は、トリコローレカラーを筆頭とするいくつかのオプションを選択しているので、価格は700万円オーバーです。その価格に驚きを感じる人は多いと思いますが、事前に車両の詳細を調べて試乗に臨んだ私(筆者:中村友彦)は、価格以上の驚きを感じることになりました。

コレだったら、普通にツーリングに使える!!

 最初の驚きは、420kmの航続可能距離と、日本で最も普及している急速充電器のCHAdeMO(チャデモ)への適合です。と言っても420kmは、回生ブレーキが効率のいい仕事をする市街地走行が前提の距離で、電力消費量が多くなりがちな高速道路をハイペースで走ると半分程度に減るのですが、それでも200km前後は確実に走れるわけです。既存の電動バイクの心もとない航続可能距離を考えると、その数値は大きな安心材料になるでしょう。

 しかもチャデモで急速充電を行なえば、エネルジカのバッテリーはわずか30分でかなり回復するのです。もちろん、実際の回復度合いはバッテリーの状況や走り方によりけりですが、今回は出発時が80%で、高速道路を100kmほど(アグレッシブに)走った段階で30%に低下し、チャデモで30分の急速充電を行なうと73%に回復しました。

 この数値をどう感じるかは人それぞれですが、既存の電動バイクの試乗で、充電スポットの捜索に面倒な印象を抱き、走行可能な充電に要する待機時間(1時間以上は当然で、車両によっては3~6時間)に辟易した私は、「コレだったら普通にツーリングに使える!!」と感じたのです。

 そういった実用的な要素に加えて、171ps(126kw)の最高出力と215Nmの最大トルク、240km/hの最高速も(リミッターで制限)、特筆したくなる要素です。

 中でも、排気量が2458ccのトライアンフ「ロケット3」と大差がない最大トルクには、驚きを通り越して恐怖を感じる人が多いのではないでしょうか。

 もっとも現代のリッタースーパースポーツの基準で考えれば、最高出力と最高速は驚くほどではないのですが、現在の日本で市販されている電動バイクの中で、「EGO+」はダントツに速いのです。

良い意味で、トヨタを思わせる領域

 走り始めて十数分が経過した頃、私が脳内に思い浮かべたのは、1997年にトヨタが発売した初代プリウスでした。いや、超高額なMotoEレーサーの公道仕様のインプレで、200万円台で販売された4輪の大衆車を引き合いに出すのは、我ながらどうかと思いますが、世界初の量産ハイブリッド車でありながら、ごく普通のトヨタ車としてまとまっていた初代プリウスと同様に、「EGO+」も普通のバイクとしてライディングができたのです。

 サクッと書いてしまいましたが、それも驚くべきことでしょう。既存の電動バイクとは一線を画するパワフルにしてトルクフルなモーターを搭載しているのに、「EGO+」は勝手知ったるエンジン車と大差ない感覚で走れるのですから。

 逆に言うなら、エネルジカのモーター制御技術は相当に緻密にしてナチュラルで、良い意味でトヨタを思わせる領域に到達しているのではないか、と思います。

 もっとも、スロットルを大きく開けた際の加速は恐ろしく強烈で、シフトアップの必要がないため、感覚的にはリッタースーパースポーツを凌駕するほどです。とはいえ、4種が存在するモードの中で最もパワフルなSportを選択しても、不意にフロントまわりが浮いたりリアタイヤが空転したりする気配はありません。このあたりも、エネルジカのモーター制御の巧みさを感じる部分です。

 そんな「EGO+」で、少しだけ違和感を覚えたのは峠道でのハンドリングです。市街地や高速道路ではやや重いかな……くらいの印象だったのですが(車重は260kg。ただし電動バイクならではの低速前進/後退モードが存在するので、取り回しは意外にイージー)、いつもの試乗の感覚で大小のカーブが続く道を走り始めると、極端な重心の低さと回生ブレーキの利きが気になって、なかなか気持ちよくコーナーに入って行けなかったのです。

 まあでも、距離が進むにつれて違和感は徐々に小さくなっていったので、この件は慣れで解消できるのだと思います。

 ちなみに、数日後にすでに「EGO+」を体験している同業者と話をしてみたところ、エンジン車で過剰なエンブレを避けるように、あえてシフトダウンを行わない感覚で、スロットルを少しだけ開けて回生ブレーキの利きを抑えれば、コーナー進入は楽になるとのことでした。

日本勢の一歩も二歩も先を行く欧州勢

 またしても、欧州勢に先を越されたのか……。今回の試乗を通して、私はしみじみそう感じました。と言うのも近年の2輪の世界では欧州勢の躍進が目覚ましく、中でも電子制御という分野では、欧州勢は日本勢の一歩も二歩も先を行っているのです。

 ただしエンジンの代わりにモーターを使用する電動バイクに関しては、まだ決定打と言うべきモデルが存在しなかったので、日本車にも可能性があると思っていたのですが、「EGO+」を体験した現在は、そういう楽観的な見方ができなくなりました。

 もっともエネルジカは、既存の欧州勢と同列では語れない新興メーカーです。とはいえ、同社の存在は電子制御に積極的な姿勢を示してきた欧州勢にとって、大きな刺激になっているに違いありません。

 おそらく、2023年からMotoEに車両を供給しているドゥカティや、2017年から「C」や「CE」シリーズを展開してきたBMW Motorradは、そう遠くない将来、エネルジカと同様に速さと実用性を高次元で両立した、電動バイクを発表するのではないでしょうか。

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