70年代からは総排気量に由来する車名がメインになる
さて、前回はフェラーリの創業当時のモデルから、1970年代に入ったところあたりまでのモデルの車名の解説をしたわけだが、いよいよ現代(といっても1970年代の途中のモデルからになるわけだが)。
フェラーリの車名の「数字と英字」は時代と共に「意味が変わる」! これを知れば「ガチ勢」確定【黎明期~70年代編】
308 GTB
1975年に登場した「308 GTB」あたりからが、おそらくは誰もが知るフェラーリになるだろう。このシリーズもそのネーミングは難しくはない。3リッター(=30)のV8(=8)を搭載するから「308」となる。最終モデルの「308 GTB / GTS クワトロバルボーレ」とは何かくらいが疑問だが、これはイタリア語で4バルブを意味するもの。当時のフェラーリは、年々厳しさを増す排出ガス規制に対して、パワーを維持するためにさまざまな対応策を迫られていたのだ。
モンディアール
その2+2版ともいえる「モンディアール」の意味は「世界」。世界を市場に販売を伸ばしたかったようだが、残念ながらコケてしまったというのが現実だろう。
348 GTB
最終モデルの「モンディアール T」のTはトランスバースの意味で、これは後に「348 GTB / GTS / スパイダー」でも採用されたミッションの横置き、すなわちエンジンの縦置きを意味していた。348は3.4リッターの8気筒に由来する。
BBは1984年を最後に途絶えて「テスタロッサ」の車名が復活
512 BB
この頃の12気筒モデルのファーストモデルは、前で触れた「365 GTB4 BB」。それは後にシリンダー排気量から総排気量を意味する512(5リッター12気筒)を掲げた「512 BB」、「512 BBi」へと進化。BBはベルリネッタボクサーで、ベルリネッタはクーペ、ボクサーは水平対向エンジン(実際には180度V12)を意味し、iはインジェクションの略だ。
テスタロッサ
そしてフェラーリの12気筒モデルは1984年、「テスタロッサ」へとフルモデルチェンジされるのだ。テスタロッサは前回も説明した通り「赤い頭」の意味で、ヘッドカバーが赤かったことに由来する。
F512 M
ちなみにテスタロッサの後継は「512 TR」。TRはテスタロッサ(Testa Rossa)を意味し、このシリーズの最終型となる「F512 M」は、フェラーリ+5リッターのV型12気筒+モディフィカートの略を組み合わせたネーミングになる。
575 M マラネロ
その次世代にあたる12気筒モデルは1996年デビューの「550 マラネロ」。550は排気量5.5リッターからで、マラネロはもちろんフェラーリが本社を置く街の名。そのビッグマイナーチェンジ版の「575 M マラネロ」は、やはりM=モディフィカート版であることを意味している。
登録商標の問題で本国名と日本名が異なるモデルが登場
599
2006年発表の「599」は、やや複雑な事情のある車名だ、なぜなら599は日本独自のネーミングで、正式には「599 GTB フィオラノ」が正式な車名であったからだ。商標登録などの問題で、日本では599と短い車名を掲げることを余儀なくされたのだった。
参考までにフィオラノとは、フェラーリが所有するサーキットの名称である。599の数字は、搭載されるV型12気筒エンジンが、スペチアーレの「エンツォ・フェラーリ」のそれをベースとする5999cc仕様であることが由来とされる。
599 GTO
また、この599では、「GTO」やオープン仕様の「アペルタ」も限定生産されている。
F12 ベルリネッタ
2013年誕生の「F12 ベルリネッタ」まさにその名前が物語るとおり。Fとはフェラーリの頭文字で、12はエンジン気筒数。ただしフェラーリによれば、ベルリネッタはサブネームではなく、F12 ベルリネッタがあくまでもひとつの車名であるということだ。
812 スーパーファスト
2018年にデビューした12気筒ベルリネッタには、懐かしいスーパーファストのサブネームが復活している。「812」は800馬力の12気筒を意味している。「812 スーパーファスト」で最高出力の800馬力を最初に掲げているという新たな法則ができた。これはカスタマーにとっても誇らしいことだろう。
GTC4 ルッソ
フェラーリの12気筒モデルとして忘れてはならないのは、いわゆる4シーターモデルだが、その中でも印象に残るのは「GTC4 ルッソ」と「FF」だろうか。
前者のルッソは250 GT時代に使用された豪華版に掲げられたサブネーム、その意味はもちろん高級や豪華というもの。
FF
一方のFFはフェラーリ・フォーの意味で、これで車名は完結するので、フェラーリFFといった使い方は正式には誤りとなる。FFはFFのままでよいのだ。
ようやく最後! V8モデルの車名を解説
360 モデナ
V8モデルの中にも、地名をサブネームとしたものは多い。1999年デビューの「360 モデナ」はフェラーリのあるモデナ県に由来するものである。ちなみに「360」は3.6リッターエンジンから。
458 イタリア
また2009年には「458 イタリア」が誕生。4.5リッターの8気筒を意味する。
F8 トリブート
2019年に発表された「F8トリブート」は、それが308やF40などのフェラーリの8気筒モデルへのオマージュ=トリブートであることから名付けられている。
ポルトフィーノ
V8のコンバーチブルシリーズの「カリフォルニア」と「ポルトフィーノ」は、いずれも地名。とくに後者はイタリアの景勝地として有名だ。
ローマ
また2010年にリリースされた「ローマ」も同様にイタリアの首都である。
SF90 ストラダーレ
プラグインハイブリッドシステムを採用した初のフェラーリとして話題のSF90 ストラダーレは、スクーデリア・フェラーリ(=SF)の90周年(=90)を意味し、ストラダーレはイタリア語で「ストリート」。つまり、スクーデリア・フェラーリの90周年を記念した公道走行が可能な市販車という意味を持っている。
フェラーリのネーミング。それにはさまざまな意味や歴史的なストーリーが隠されているのだ。
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シンプルだが、味わいがある。