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ベントレーが「SUV市場」に進出した5つの理由 高級サルーンの金字塔だったのになぜ?

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ベントレーが「SUV市場」に進出した5つの理由 高級サルーンの金字塔だったのになぜ?

ベントレーの歴史と魅力

 英国のベントレーは1919年に創業し、初期から高級サルーン車の製造に力を注いできた。その品質と高級感は、ベントレーが持つブランドイメージを形成し、世界中の自動車愛好家から高い評価を得てきた。

【画像】えっ…! これが60年前の「蓮田SA」です(計13枚)

 しかし、2015年11月にはこれまでの路線を変え、スポーツタイプ多目的車(SUV)ベンテイガを発売。これはベントレーが新たなビジネスチャンスを見つけ、そのチャンスを生かすための戦略的な決定だ。

 同車の魅力は、ベントレーの伝統的な高級感と品質を保ちつつ、SUVという新たなカテゴリーに挑戦したことにある。ベントレーの豊かな歴史と伝統を引き継ぎつつ、より広範な顧客層にアピールするためだ。

 ではなぜ、今まで高級サルーン車しか作ってこなかったベントレーが、SUV市場へ参入することになったのだろうか。その背景をひもときたい。

高級SUV市場への参入背景

 ベントレーがSUV市場に参入した背景には、多くの要因が絡み合っている。それぞれ考察していこう。

 まず近年、SUVの人気が高まっており、日本をはじめ世界各国で人気である。日本自動車販売協会連合会によると、過去5年間でSUVの売り上げが右肩上がりであり、その人気を物語っている。

 またSUVは、郊外やオフロードでも使える汎用(はんよう)性があり、これがベントレーの顧客層にとって魅力的であった可能性がある。SUVは都市部だけでなく、田舎や山間部でも快適に走行できるため、多様なライフスタイルを持つ人々にとって魅力的な選択肢となっている。そしてベントレーの顧客層は、

「自由な生活を送ることを好む傾向」

があり、そのニーズに対応するためには、SUVという車種が最適であったのだ。

 さらに、一般的にセダンやクーペよりも高価格帯に設定されることが多く、これがベントレーの高級ブランド戦略に合致していた。ベントレーは、そのブランドイメージを維持しつつ、新たな市場に参入することで、ブランドの価値をさらに高めることに成功した。SUV市場は、高級車メーカーにとって新たな収益源および新規顧客の獲得のチャンスとなり得るため、ベントレーはこの市場に注目したと言える。

参入激しいSUV市場

 ベントレーがSUV市場に参入したもうひとつの理由としては、

・JLR(ジャガー・ランドローバー)レンジローバー
・ポルシェカイエン

などといった、他社の高級SUVが軒並み人気を博したことも影響している。

 JLRの2023年度の年次報告書によると、2022年4月から2023年3月にかけて、売上高が約228億ポンド(約4兆3216億円)となり、前年に対して24.5%増加。SUVをメインにラインアップするレンジローバーにおいても、登場する新車が軒並み人気を博している。レンジローバーやベントレー、ロールス・ロイスといったものはすべて、伝統的な超高級車ブランドという同じセグメントにあるため、競争が一層激化することを示している。

 そしてポルシェ・カイエンに至っては、2022年で9万5604台を売り上げ、ポルシェの全ラインアップの中でもトップの売り上げ台数を誇った。

 こうした動きは、SUVが単なるトレンドではなく、自動車市場における重要なセグメントとして定着していることがわかる。超高級車メーカー各社は、SUV市場への参入によって、ブランドイメージの更新、顧客基盤の拡大、そして売り上げの増加を図っており、ベントレーも同様に自社のSUVを市場に投入する必要があったと考えられる。

 そんなプランが功を奏したのか、こんな吉報が。ベントレーモーターズによると、2022年度の通期決算において、前年度比82%増の7億800万ユーロという好業績を上げたほか、売上高利益率もベントレー史上最高記録を達成。ベンテイガも、同年のベントレーの売り上げ全体の

「42%」

を占めるという売り上げトップを誇った。

環境規制への対応と今後の計画

 SUV人気の一方で、欧州ではハイブリッド車や電気自動車(EV)へのシフトが進んでいる。ベントレーもまた、ベンテイガのハイブリッドモデルを2019年に発表。環境規制への対応とブランドイメージの維持との両立を目指している。

 また環境規制に関して、ベントレーは2020年に「ビヨンド100」戦略を発表。純粋に電気のみで動く量産EVを2025年頃をめどにリリースを目指し、サステナビリティへの取り組みを強化するとしたものの、2026年後半に延期。加えて、当面はプラグインハイブリッド車に重点を置くことと、2030年までに全車種を電動化する目標を掲げている。

 今後のベントレーの意向を読み取ることは難しいが、少なくとも今までの豪華さや伝統的なスタンスをそのままに、より環境性能に特化したモデル開発にするものと考えられる。

 ベントレーがSUV市場に参入した理由は、

・新たなビジネスチャンスの発見
・新興国の成長
・SUVの汎用性
・高級ブランド戦略の維持
・環境規制への対応

などさまざまである。そして現在でも、ベンテイガの気高さは、高級SUV市場において他メーカーを凌駕するといえるほど高い。

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みんなのコメント

8件
  • kvg********
    「ベントレーがSUV市場に進出できた理由」だろう。
    フォルクスワーゲングループに入って、カイエンなんかとプラットフォームを共有できたから。
    単独での開発は無理だっただろう。単独だったら、ブランドは消滅していただろう。
  • LX700h
    高級車ブランドがSUV市場に参入することは、ブランドイメージに複雑な影響を与えます。市場の需要に応え、販売を伸ばす戦略としては有効ですが、一方でSUVの普及が高級感や独自性を損なう可能性もあると思います。購買層はデザインを重視し、流行や感情に基づいて選ぶため、ブランドの維持が重要です。最終的には、SUVをどう市場に導入し、ブランドイメージをどう維持・発展させるかが成功の鍵となります。
    現状、ベンテイガは、ベントレーの売上には大きく貢献してきましたが、ブランドイメージには貢献していないと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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