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アメリカンスポーツの進化は侮れない──新型シボレーコルベットE-Ray試乗記

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アメリカンスポーツの進化は侮れない──新型シボレーコルベットE-Ray試乗記

シボレー「コルベット」に追加された「E-Ray」に小川フミオが乗った。モデル史上初の電動化&全輪駆動を採用した究極のハイパフォーマンススポーツカーに迫る。

モーターの役割

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ゼネラルモーターズ・ジャパンは電動化&全輪駆動を採用したシボレー・コルベットE-ray(イーレイ)を 2024年6月に発表した。9月も終わりに近づいた頃、ついに東京で試乗が叶った。歴代最速の加速力をうたう最新モデル。「すごい!」の、一言だ。

新型コルベットE-Rayは、V8エンジンで後輪を駆動し、モーターで前輪を駆動。「今後のアメリカンスポーツカーの新しい方向性を示すとともに、究極のグランドツアラー」(シボレーブランドを傘下にもつゼネラルモーターズ)を謳う。

E-Rayを解題すると、Eはエレクトリックで、レイは魚類のエイ。コルベット好きは先刻ご承知のように、エイはコルベットのシンボルだ。C2(1963年)、C3(67年)それにC7(2014年)と歴代のコルベットで使われたスティングレイのサブネームを継承している。リヤ後端には、エイをかたどったエンブレムがつく。

基本的には、369kW(502ps)の最高出力と637Nmの最大トルクをもつ6156ccV8エンジンによる後輪駆動。加えて、119kW(162ps)と165Nmのモーターが前輪を駆動する。といっても、一般的なハイブリッドでなく、モーターは補助的に働く。

例えば、アクセルペダルをすばやく深くまで踏み込んだ時。前輪のモーターが反応し、トルクを加える。モーターの力を得て、E-Rayは静止から100km/hまでをわずか2.5秒で加速するのだ。

一般道でこの数値の真偽のほどは試せなかったものの、鋭い加速性は十分にわかった。ただし全輪駆動を堪能するのは、高速道路でも難しいだろう。あっというまに、おそろしいほどの速度に達してしまいそうだ。エンジンだけでも十分速い。

センターコンソールにあるドライブモード、で8モードに変更出来る。「ツアー」「ウェザー」「スポーツ」「レーストラック」「マイモード」「シャトル」、それにコルベットファンにはおなじみといえる専用ボタンで起動する「Zモード」と、E-Rayだけの「ステルス」だ。

ステルスは、内密行為のことで、米国ではレーダーに捕捉されにくい性能をもった軍用機や軍艦などに使われている。まぁ、エイも静かに獲物に近づくわけだけれど。スティングレイモードというより、ステルスのほうがわかりやすいのかもしれない。

これを選ぶと、最大6.4kmまではモーターのみで走れる。早朝にゴルフに出かけるときなど役立つモードのようだけれど、72km/hまで出せて、そのときは前輪駆動のはずだけれど、期待以上に速かった。

そして「eAWD」なるシステムが、車速や路面状況とともに、ステアリングホイールの舵角や角速度(操舵のスピード)をみていて、前輪を駆動するべきかを含め、前後輪のトルク配分を決めていく。

歴史を継承するコルベットは、特別なモデルをのぞいて、速いけれど、日常使いが出来るのも特徴だった(跳ね上げ式のコインパーキングだけは使いたくないが)。E-Rayも同様に、モーターがカバーする範囲を広く捉えている。

エンジンが始動した時も、軽い驚きがあった。静かなのだ。「でっかい排気量のV8だよね?」と、改めて確認したくなるほど、私がいるコクピットに入ってくる音は低くおさえられている。

加速時も同様。アクセルペダルを強く踏み込んでいないときは4気筒モードが作動するので、静かに走るクルマだ。これもE-Ray独自のキャラクターだ。高速道路を走行時に、アクセルペダルを全閉すると、回転計の針がぱたんと下がる。エンジンが停止して燃費を稼ぐのだ。

ホールド性とともに座り心地のよいバケットシートにからだをあずけて、四角に近い形状の小径ステアリングホイールを握って走る。ドアマウンテッドミラーを見ると、幅広のタイヤを収めるため大きく張りだしたリヤフェンダーが大きな部分を占めている。これも、ほかでは味わえない体験だ。

コルベットは斜め後方の視界を目視するのは、ほとんど不可能。そのかわりカメラをうまく使った室内ミラーがそなわる。映りがよく、かなり後ろを走る車両の登録番号も読める。かつ視界が広い。死角にいる車両もしっかり映し出してくれるので、車線変更などもまごつかない。

日本には右ハンドル仕様が入るので、使い勝手がよいのもコルベットならでは。あえてキャラクターラインを多く入れて、独自のスタイルを追求したボディデザインは、イタリア製のスポーツカーと一線を画している。ミッドシップ化されて、プロポーションに変化はあったものの、それでも、デザイン上のDNAはうまく継承されているように感じられた。

ちょっとおおげさ。でも、情熱がたっぷり感じられる。そのボディにそなわった尾の長いエイのアイコンを見ていると、昔から好きだったGM車のデザインが蘇ってきて、それも楽しい。

最初は直列6気筒搭載のコルベットを手がけたハーリー・アール(1893~1969年)にはじまり、その後を襲いコルベットをデビューさせ、トローリング好きゆえエイやサメを車名に使った魅力的なスポーツカーを手がけたビル・ミッチェル(1912~1988年)、そしてフェラーリ「365GTB/4」の大ファンを自称しつつ独自の解釈でC4コルベット(1984年)を作り上げたチャック・ジョーダン(1927~2010年)……。

彼らデザインディレクターたちが手がけてきたGMのスポーツカーの歴史が、E-Rayにも引き継がれている。そう思わせてくれるところも、ほかにはない魅力だ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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