今年10月7日、オーテックジャパンは新型コンパクトクロスオーバー「ノートAUTECHクロスオーバー」を発表した。ノートシリーズとして待望のクロスオーバーSUVとなる。また、プレミアムスポーティブランドである、AUTECH発とあれば、その仕上がりも楽しみなところ。
今回、事前の試乗会へ参加し、ステアリングを握ることができた。「ノートAUTECHクロスオーバー」の詳細をご紹介しよう。
文/吉川賢一、写真/中里慎一郎
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■クロスオーバーでも5ナンバー枠!!
ノートAUTECHクロスオーバーはノートをベースにAUTECHチューンが施されたメーカーコンプリートカー。そのクロスオーバータイプだ
日産ノートがE13型へとモデルチェンジをしたのは昨年12月のこと。その3カ月後の2021年3月にはノートAUTECHを、そして8月にはノートオーラを発売開始。さらに今秋にはノートオーラNISMOが発売開始となり、そこへさらに今回、この「ノートAUTECHクロスオーバー」が登場。「ノート」による怒涛の攻勢は頼もしいかぎりだ。
今回発表されたノートAUTECHクロスオーバーは、ノートAUTECHをベースにカスタムされたモデルであり、インテリアは共通とし、エクステリアで差をつけた。車高を25mm上げて走破性を高め(そのうちタイヤ外径アップ分は10mm)、高めのアイポイントからの気持ちいい見下ろし運転感覚を与えた。
また大径タイヤと専用16インチホイール、樹脂フェンダーモール、ルーフモールド、そして前後にクロスオーバー専用エンブレムを搭載。フェンダーモールを含めて全幅1700mmジャストに収め、5ナンバーサイズを死守した。
ノートAUTECHと共通であるインテリアだが、ベースのノートと比較して、専用シートカバーや、ドアの内張りやセンターコンソール、インパネ、専用本革ステアリングなどには青い刺繍が入り、インパネにはブルーの木目調「紫檀(シタン)」柄の塗装をするなど、コーディネートセンスが抜群。オーラとはまた違った雰囲気が楽しめる。
新型ノートに搭載された第2世代e-POWERと、強力なe-POWER 4WDシステム。それらに合わせられたAUTECHならではの上質な内装。ファクトリーカスタム車ならではのまとまり感を楽しみつつ、オシャレかつアクティブに乗ってほしい、というのがAUTECHの狙いだ。
しかも、ノートAUTECHとの価格差は、なんと3万3400円程度。ノートAUTECHと、リフトアップしたノートAUTECHクロスオーバー、用途や好みで選べるというのは、購入希望者にとっては悩ましくもあるが、ありがたいことだ。
4045×1700×1545(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2580mm。ノートAUTECHと比べて、全長は35mm短く、全幅は5mm広く、全高は25mm上がっている
リアデザインはベースのノートと同じだが、フェンダーモールとリフトアップした姿勢で、クロスオーバー感が出ている
ブルーの刺繍が入ったノートAUTECH専用シート。表面は柔らかくモチモチとした触感で、座り心地もいいとのこと
もともと見やすいフロントだが、姿勢が上がったことで見下ろす形になり、開放感が上がっているという
インパネはブルーの木目調に光沢が出た「紫檀(シタン)」柄の塗装を施され、統一感があり、落ち着きがありつつワンポイントとしてうまく機能している
■軽快な2WD、安定の4WD、e-POWERの「強み」が光る!!
さっそく、テストコース内でを試乗させていただいた。まずは2WD車。走り始めた瞬間から、第2世代e-POWER特有の「力強い滑らかさ」を味わえる。エンジン音がしないので、バッテリーEVに乗っているような感覚だ。
たった25mmではあるがアイポイントが上がっている分、浮遊しているような感覚もある。低速から高速まで、滑らかで静かなe-POWERは、クロスオーバーSUV化されてもまったく変わらず、高い走行性能であることが、ステアリングやシートを通じて伝わってくる。
道路のつなぎ目やちょっとした段差を低速(50km/h程度)で越えるようなシーンでは、タイヤのバタつきを若干感じるが、それとて、高速走行(100km/h程度)となれば気にならなくなる。
車室防音性が高くバッテリーEVのようなドライビングフィールを楽しめるのが現行ノートe-POWERの強み。2WDの軽快な身のこなしは好感が持てる
続いて4WD車を試乗。4WDは、高速直進性のレベルがさらに1段階上がった感覚となる。外乱に対する安定性が高く、多少のギャップでも進路が乱れにくいので、安心感が高まる。オンロードでもその差はよくわかる。AUTECH担当者に聞くと、このe-POWER 4WDが本領発揮するのはやはり「雪上」とのこと。絶妙なよさがあるのでぜひとも試していただきたい、とのことだった。
外乱に対する安定性が高く、進路が乱れにくい4WD。日本特有の道路事情に合った5ナンバーボディと合わせ、冬の雪国での活躍に期待だ!
2WDも4WDも、大Rのコーナーや、ワインディングを模したスラロームでも、大きな姿勢変化をさせなければ、25mm車高アップしているノートAUTECHクロスオーバーと、ベースのノートAUTECHと、性能差はまずわからない。
テストコースには、やや強めにステアリングを切るシーンが設けられており(0.5Gほどの横加速度)、そこでは、さすがにロール姿勢変化は大きく感じるが、危険や恐怖を感じる前に、フロントのタイヤグリップが逃げていくので、深いロールになり過ぎずに安心感はある。
操安乗り心地の設計と実験を担当した、AUTECHの商品開発実験部シニアエキスパートドライバー、高沢仁氏によると、「ロールが深く入った際の安定性を高めるため、バネや減衰特性の作り込みと同時に、フロントダンパーにリバウンドスプリングを追加した」という。
全幅1700mmを死守するため、タイヤ幅を広げることはできなかったが、操安と乗り心地のバランスはいいところに落とし込めた、とのことだ。
ノートAUTECHに対して25mm車高をアップしたノートAUTECHクロスオーバー。AUTECHの高沢仁氏は、この大きな車高アップでも操安性はうまくまとめ上げたと自信を見せる
■筆者はフィットクロスターとの対比をこう見る
このノートAUTECHクロスオーバーのライバルとして、真っ先に浮かぶのがホンダのフィットクロスターだ。フィットクロスターは、ガソリンモデルが税込199万円~、e:HEVモデルは税込228万円からと、ノートAUTECHクロスオーバー(税込253万円)よりも25万円ほど安い。しかも、ACCやLKASといった先進運転支援システムのHONDA SENSINGは標準搭載だ。
これに対して、ノートAUTECHクロスオーバーは、プロパイロットを付けるとなると、ニッサンコネクトナビやアラウンドビューモニター、ETC2.0などがセットとなる40万円以上のパッケージオプションを選ぶ必要がある。価格差は歴然で、同様の装備にするには、フィットクロスターよりも60万円近く価格がアップしてしまう。
ライバルとして挙がったフィットクロスターの全幅は1725mmで3ナンバーサイズ。タイヤは185幅タイヤだ。対してノートAUTECHクロスオーバーは全幅1700mmで195幅タイヤを履く
こうして装備と価格だけを比較すると、ノートAUTECHクロスオーバーはかなり分が悪くなってしまうが、コスパだけでクルマの優劣が決まるわけではない。爽快な力強い走りは、ホンダのe:HEVよりも、日産の第2世代e-POWERのほうが全般的に優れていると言えるし、デザインは個人の嗜好にもよるが、よりフレッシュに見えるのはノートAUTECHクロスオーバーのほうだろう。
AUTECHブルー(通称、湘南ブルー)で統一したブランド戦略や、時には、日産車を超える足回りの仕上げなども魅せてくれるAUTECHブランドは昨今、評価が上がってきているように思う。
今作では、あとちょっとフロントやサイドにシルバーの加飾が欲しかったところだが、ベーシックなデザインは、のちのちユーザーがカスタムを楽しめる、という考え方もできる。コンパクトクロスオーバーSUVの有望なベンチマークが、また一台増えたと言えるだろう。
ベースのノートとの価格差は約35万円。ノートAUTECHクロスオーバーとノートAUTECHとの価格差は3万3000円だ
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