世界初の“水素燃料電池スタックを搭載したレーシングシリーズ”として、来季2025年の幕開けを宣言している『Extreme H(エクストリームH)』が、ロンドンでの発表会に続いて最初のパブリックテストを実施。創設4年目にして“前身”となることが決まったワンメイク電動オフロード選手権、エクストリームEの2024年第3戦&第4戦として、スコットランドで開催された『ハイドロX Prix』のトラックにて都合2回のセッションが実施された。
新たな“ハイドロジェン・オフローダー”の開発担当ドライバーを務めるヘッダ・ホサスの手により、7月13~14日にスコットランド南部ダンフリース・アンド・ガロウェイに運び込まれた『パイオニア25』は、シリーズの洋上パドックを務める元貨客船セントヘレナ号での船上ラウンチイベントに引き続き、チャンピオンシップの公式エナジードリンクパートナーに就任したレッドブルの特別カラーに彩られて姿を現した。
エーオン・ネクスト・ヴェローチェのハンセン&テイラー組が完全制覇/エクストリームE第3-4戦
イギリスを本拠とするエーオン・ネクスト・ヴェローチェ・レーシングのケビン・ハンセン/モリー・テイラー組が初日セッション完全制覇からの連勝を決め、週末パーフェクトを飾ったレースウイークを前に、初めて選手権開催コースで公開テストに挑んだ開発車両は、ワンメイクバッテリーEVの『オデッセイ21』に引き続きスパーク・レーシング・テクノロジーによって設計および製造された車体に、公式燃料電池プロバイダーであるシンビオ社製の水素燃料電池を搭載する。
従来のリチウムイオンバッテリーに代わり、出力75kWの水素燃料電池スタックを主なエネルギー源とし、複合エネルギー吸収衝撃構造を備えたチューブラースペースフレームにFOX製ダンパーを備えた前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションを持ち、従来モデルに対しジオメトリーの改善を施すと同時にセンターシートレイアウトを採用。
さらに前後各200kWのモーターは450~850Vの電圧でシステム最高出力400kW(543PS)を誇り、325kW、850V、36kWhのバッテリーを用いて重量2200kg、幅2.4mのレースカーを0-100km/h加速わずか4.5秒で走らせることが可能となる。
■センター配置コクピットにより視界も改善
「こうしてパイオニア25を公式チャンピオンシップコースで初めてテストすることは、エクストリームHの開発におけるもうひとつの大きなマイルストーンになる」と語るのは、シリーズのテクニカルディレクターを務めるマーク・グレイン。
イベントが開催される旧グレンマックロック露天掘り炭鉱跡地のトラックにて、現役チームとドライバー全員の目の前で初めてコースに登場したパイオニア25は、注目の燃料電池スタックの放つパワーはもとより、新しいセンターレイアウトのドライバーズシート位置と、より低く中央へと改良されたバッテリー搭載位置も併せてコーナーや不均一な路面でハンドリングや走破性が著しく改善されていることを示し、テストの成功により走行時間を大幅に延長することとなった。
「おかげでパイオニア25をを予定よりも長く運転できた」と語るのは、ロマン・デュマとともに開発ドライバーを務めてきた北欧出身のホサス。
「プログラムを延長したためシートタイムも長くなったし、チームは新規のテスト項目を持ち込んでくれた。ときには新しい課題や問題も発生したけれど、それがテストの目的よね」
正確なラップタイムは明かされなかったものの、レースで使用された本コースやバッテリーテスト用の短距離周回路を走行したパイオニア25は、初めて直接比較の機会を得たオデッセイ21に対しても優位性のあるパフォーマンスを見せたという。
「最後には泥濘路を含むハードなラップを連続して走り、クルマのハンドリングも非常に良好だった。先代のエクストリームE用モデルから確実に改善されている。とくに低速域ではパワーのおかげでもっともベネフィットを得られるし、より良く感じた」と続けたホサス。
「テクニカルな低速セクションではスムーズで速いと感じたし、私もプッシュしていたけれど、今では大きな自信が持てている。あとは視界もはるかに良くなった。センター配置で両サイドの視界が広がり、レース中に広い視認範囲を確保するためには最適な進化よ」
引き続き2024年のエクストリームE“シーズン4”は、第5戦&第6戦の舞台として9月14~15日におなじみイタリア・サルディニア島を訪れる予定となり、シリーズでもっとも過酷と言われるコースは、スコットランドに比べて非常に速いコーナーとビッグジャンプを有するまったく異なる特性を持つ。この週末でも、新たな水素燃料電池搭載車は開発プログラムを遂行する計画となっている。
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