マイルドハイブリッドを搭載した5代目
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
日本では2018年にモデルチェンジとなった、5代目スバル・フォレスターが英国にも上陸した。ガソリンエンジン版のハイブリッドとしては、初めてのスバルだ。
2019年の初めに一度プロトタイプを試乗しているが、今回は右ハンドル車。マイルドハイブリッドがどの程度の恩恵をもたらすのか、実世界で確認してみたい。欧州ではファミリー層向けの4輪駆動SUVといえば、ディーゼルがデフォルトだった。その代替案になる実力は備えているだろうか。
自動車の電動化を進める動きは、政治課題としてかなり高いところにある。ほぼ揺るがない、既定路線だ。
英国ではWLTP値での二酸化炭素排出量に応じた自動車税制へとシフトするため、来年度からかなり大きく課税率が変わってくる。社用車もハイブリッドへ乗り換える動きは加速するだろう。
このタイミングで英国導入となる、マイルドハイブリッドを搭載したスバル・フォレスター。少し遅かったように思う。ハイブリッドとしても控え目な内容だし、すでにハイブリッドSUVのライバルが英国でもいくつかリリースされている。
加えてeボクサーは、経済面でさほど大きな恩恵を与えてくれるシステムでもないようだ。充電用プラグをつなぐ手間はないとはいえ、トヨタやレクサスのハイブリッドモデルへ与える影響は小さい。
ハイブリッド化による恩恵は限定的
フォレスター eボクサーが電気の力だけで走れる距離は極めて限定的。二酸化炭素の排出量は、評価の甘いNEDC値で154g/kmもあるため、来年の4月から適用される税金に対しての軽減率も小さい。スバルはまだ公表していないが、厳しいWLTP値なら二酸化炭素の排出量は増えるはず。
これを補うのが、スバルならではのオフロード性能。最低地上高は220mmもあり、しっかりとしたドライブシャフトを持つ4輪駆動。
牽引重量は1800kgまで対応し、サスペンションにはセルフレベリング機能も付く。これらのメカニズムは燃費の面では不利なものの、一部のクロスオーバーには近づけない領域だ。
フォレスターは従来から個性的なモデルだったが、モデルチェンジで一回り大きくなった。全長は伸ばされ、車内空間はライバルに負けない広さを確保する。
一方でライバルと比較すると車高は低く、着座位置も低い。SUVらしく車内によじ登るというより、ドアを開けて身体を横に移動して、普通に腰掛けるように乗れる。
インテリアの質感や装備は、スバルとして知覚品質を向上させようという努力が伺える。インテリアのパネル類は厚みを増し、上品なタッチのスイッチ類に、シートやドアパネルにはレザーも用いられている。
一方で素材やテクスチャの統一感では一歩及ばない印象。本当の高級感を感じ取ることは難しい。
標準装備は充実。舗装路で水を差すCVT
英国仕様の標準装備は充実。アダプティブLEDヘッドライトを備え、タッチモニター式のインフォテインメント・システムにはスマートフォンとのミラーリング機能付き。アダプティブ・クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキなどを含む、スバル自慢のアイサイトも標準で付いてくる。
サンルーフにナビゲーション、レザー内装、パワーゲールゲートが必要なら、英国では3000ポンド(42万円)を上乗せして、プレミアム・トリムグレードを選択することになる。
加速感や路面を問わない操縦性の良さ、燃費など、オンロード性能に関してはフォレスターとしての期待通り。メカニズムの洗練度はわずかに良くなっている。
ハイブリッドを小型でシンプルなものに留めたという選択は、コストを抑えると同時に、フォレスターの実利主義的な面を保ったとも捉えられる。組み合わされるトランスミッションがCVTで、少し水を指しているけれど。
低速度域から緩やかにアクセルを踏んでいくと、速度を乗せるには深めにペダルを踏む必要があることがわかる。同時に、CVTのクルマとして近年では珍しいほど、エンジンが空回りする。
速度が80km/hを超えてくると、ハイブリッドの支援はほとんど効果を感じられなくなる。ガソリンエンジンとCVTのパフォーマンスやレスポンスも、やや期待はずれ。高速道路の追い越しなどでは、必要なパワーを得るまでに数秒のタメを感じてしまう。
郊外の道に出ると、鋭い加速時のCVTのゴムバンド的と呼ばれる鈍さを回避するために、最善を尽くていることがわかる。しかし、穏やかな操作に対して実際にクルマが応えるまでの「間」は明確に残っている。
ディーゼルを超える経済性は得にくい
スバルによるハイブリッド技術が、運転体験に大きな貢献をしていない点も残念。仮に電圧48Vによるスターター・ジェネレーター方式なら納得できる。しかし、実際はCVT側に統合された、よりパワフルなモーターを搭載しているのだ。
混雑した都市部での走行でもエンジンは長時間停止していられず、電気モーターで走行できるのは、ほんの少しアクセルペダルに触れている時程度。ゼロ・エミッションで市街地を走れるSUVとして期待すると、フォレスターには裏切られることになる。
現実環境での燃費は決して悪いものではないが、ストロングポイントとは呼びにくい。様々な走行パターンを交えて試乗した今回、トリップコンピューターの燃費は12.7km/Lから14.8km/L程度だった。ディーゼルエンジンを搭載する同クラスのSUVの経済性を超えることは難しい。
乗り心地や操縦性も充分に評価できるが、目立って良いわけでもない。ドライバーが得られる満足度も、かつてのスバルの輝きには至っていない。決して不愉快になることはないにしろ。
サスペンションは英国の道ではほどほどの柔軟性を保ち、中低速域での衝撃の吸収性も良好。試乗コースを特に高速で走らせようとすると、やや姿勢制御に節度を欠き、快適性へ影響を与えることはあった。
ステアリングのレシオは中程度。直感的なハンドリングを備え、このサイズのクルマとして考えれば正確性や機敏性は良い方だといえるだろう。
4輪駆動が暮らしを支えてくれる人へ
スバルは長年、堅牢で優れた走破性能を備えるクルマを生み出してきた。様々な環境に暮らす人々を助けるために。
eボクサーが燃費やEVモードの性能で限定的な理由は、悪路でも舗装路と同様に走れる、従来的な4輪駆動に期待される性能を確保するためだといえる。実際、CVTとマイルドハイブリッドは、悪路や急勾配の道でうまく機能する。牽引時のスピードコントロールにも適している。
日常的に悪路走行やトレーラーの牽引が必要なら、フォレスターは選択肢に入れるべきだといえる。山間地域の助産師や獣医である必要はないにしろ、日常を助けてくれるクルマとなるだろう。しかしそれは今の時代、大多数のSUVユーザーの姿ではない。
一方で、今どきの典型的なSUVユーザーが、フォルクスワーゲン・ティグアンのディーゼルを諦めて、フォレスターを選ぶ理由は見つからない。恐らく二酸化炭素の排出量もフォレスターより少ないはず。
スバルのマイルドハイブリッドは賢いシステムかもしれないが、フォレスターは従来どおり、ニッチな存在に留まりそうだ。革新的な技術を採用した後継モデル登場までの間、暫定的なシステムを搭載したモデル、という印象もなくはない。
もちろん、スバル・ブランドとして本物らしい、満足できる内容ではある。スペック上の環境性能で選ぶには充分でなくても、フォレスターの実力を必要とするドライバーには、強く惹かれる存在だと思う。
スバル・フォレスター 2.0i eボクサー・プレミアム・リニアトロニックのスペック
価格:3万6995ドル(517万円)
全長:4625mm
全幅:1815mm
全高:1715mm
最高速度:188km/h
0-96km/h加速:11.8秒
燃費:12.2km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:1687kg
パワートレイン:水平対向4気筒1995cc+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps+15ps
最大トルク:20.0kg-m+6.6kg-m
ギアボックス:CVT
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