ル・マン24時間レースでの初優勝を記念
text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
派手な緑とオレンジの2色が、白い点線で区切られたボディ。ジョニー・ハーバートなどがドライブし、1991年のル・マン24時間レースで初優勝したレースマシン、マツダ787Bを模したレナウン・カラーだ。この勝利は日本の自動車メーカー史上でも初めて。マツダが最高の方法で祝福してもおかしくない。
この特別なロードスターは、24時間レースにちなんで、1時間に1台、24台だけが制作された。派手なボディカラーに、フロントとリアのスポイラー、サイドスカートなどの専用ボディキットを装備する。リアタイヤの前にはダミーのエアスクープが空き、ボディにはジョニー・ハーバートのサインがあしらわれている。
インテリアは標準のロードスターと大差ない。クロス張りのシートにダッシュボード、モモ社製ステアリングなど、一緒に試乗している1.6Lのベースモデルとほぼ同じ。だが走り出してみるとボディカラーを許せる内容が与えられている。
サスペンション・スプリングは、より引き締められたトキコ社製のものに変更。アルミホイールは軽量なOZ社製5スポーク15インチに交換されている。
ロードスターのパワーアップに関して、英国マツダの選択肢は限られていた。そこでディーラーオプションのインダクションキットを1200セット以上提供していた、BBR社が選ばれた。低圧ターボが取り付けられ、ブースト圧はわずか5~6psiながら、自然吸気ツインカムに36psを上乗せしている。
ターボを搭載したロードスター
最高出力152psと最大トルク21.2kg-mを生み出し、0-100km/h加速6.8秒を達成。標準モデルの場合は9.1秒だから、かなりの効果だといえる。最高速度は209km/hに届いた。
このエクストラ・パワーを一般道で味わってみる。ベースモデルと比較すると、スロットルレスポンスはわずかに鈍化している。1.6Lエンジンはやはり、アクセルを深く踏み込み、高回転域まで回さないと活気が得られない。
低圧ターボだから、期待するほどブースト圧とともに高まるパワー感はないが、3000rpmを超えると明らかにモリモリと力が湧いてくる。6500rpmへ迫るごとに、飛ぶように加速する。シフトアップでアクセルを戻すと、ウェイストゲートが開きブローオフのホイッスルが響く。いかにもターボ車だ。
このル・マン・エディションのナンバーは24台中の22番で、走行距離は信じがたい2250km。シャシーは標準の1.6Lモデルよりシャープだった。スプリングだけでなく、サスペンション自体にも手が加えられているのではないかと思う。
コーナリングはタイトで、ロードホールディング性も向上しているから、コーナリングも速い。反面、ソフトで懐の深い標準モデルより限界領域での安定性は高くないようだ。しっかりした操作が求められる。工場出荷の状態に近いおかげで、走り込んだクルマよりシフトフィールのしっかり感がなかった。
パッケージングは魅力的だが、0-100km/h加速を数秒縮めるために中回転域でのイキイキとしたフィーリングは少し犠牲になっている。ボディカラーも好みは分かれるだろう。
車重増に合わせて1.8Lでパワーアップ
1994年になる頃には自動車を取り巻く安全性の条件は厳しくなり、マツダ・ロードスターは車重増に迫られる。必要な安全基準を満たすためには、35kg分の装備を追加する必要があった。そこでマツダがモデル中期に与えた決定が、パワーアップ。
再びマツダは、ファミリアGTへ搭載されていたツインカムの1839ccユニットに目をつけた。排気量が大きい分、14psが追加され、NA2型となったベースモデルの最高出力は130psにまで上昇。1.6Lエンジンモデルは、95psにパワーダウンされ、エントリーグレードとして残った。
パワーアップだけでなく、1.8Lモデルにはより強固なボディシェルも与えられた。シートベルトの取り付け部分にはブレースバーを、フロントとリアにパフォーマンスロッドを追加し、ねじれ剛性を高めている。
オプションでトルセン式のLSDも採用され、ブレーキは前後ともに20mm大径のディスクを装備。ホイール幅は5.5Jから6.0Jへと広げられた。これらの改良に加えて、日本市場にはRSリミテッドと呼ばれる特別グレードが用意された。これは今も最高のロードスターの1つとして高い評価を集めている。
RSリミテッドが製造されたのはわずかに500台。すべてのボディは緑がかった濃い青の、モンテゴ・ブルーマイカが塗られている。英国にはグレインイーグルス特別仕様に設定された色だ。
ロードスター随一の豊かな味わい
1.8Lエンジンには、より鋭いレスポンスのために軽量なフライホイールが選ばれている。トルセン式LSDが標準装備され、ファイナル比は4.3:1に設定。フロントのアンチロールバーばやや太く、リアはやや細いものに変更されている。
足元はBBS社製のクロススポーク・アルミホイールが引き締めていたが、最も注目のアイテムだったのが、レカロ社のカーボンケブラー製バケットシート。背もたれは固定されているが軽量で、いま取り付ければ1000ポンド(14万円)近い費用が必要となる。
単に高価なだけでなく、標準のファブリックシートや限定モデルのレザーシート比べても、と同じくらい快適なところが凄い。身体のホールド性も高く、ロードスター随一の豊かな味わいを持つRSリミテッドの操縦性を存分に引き出せる。他の2台を尻目に、RSリミテッドを操る喜びに心が奪われた。
1.8Lユニットは、1.6Lユニットほどレスポンスが鋭くないが、軽量はフライホイールのおかげでエネルギッシュ。より熟成された雰囲気もあり、コーナーの出口では、中回転域からパワーを活かした走りができる。
ビルシュタイン社製のサスペンションは、操縦性と快適性とを絶妙にバランスさせている。試乗したサーキットのきついコーナーや、うねりがある路面でも、クルマはバランスを一切崩さなかった。
マツダ・ロードスターという世界の広がり
試乗車のRSリミテッドが履いていたタイヤは少々くたびれていたが、運転に陶酔する機敏さを体験させてくれた。思わず試走していたサーキットで、ファイナルラップの指示を無視しそうになったほど。
今回の3台は、長年に渡って市場の注目を維持するために、無数のバリエーションが誕生したものの1つ。手直しを加え続け、個性を磨き上げていくことで、世界中で愛されるスポーツカーにまで成長させてきた立役者のひとつだ。
30周年を祝って集った3台。1.6Lの初代は小型犬のように愛らしい。奥行きの深い、手の届く範囲にあるシャシー性能に、擬人化してしまうようなフロントマスク。最も純粋なロードスターだ。
一方で、目を引くル・マン・エディションや孤高のRSリミテッドなど、数多くの派生バージョンも魅力的。奥深いマツダ・ロードスターの世界の広がりに、身を投じないのがもったいない。
マツダ・ロードスター(MX-5)1.6(1989年~1997年)のスペック
価格:新車時 1万7000ポンド(236万円)/現在 3000ポンド(41万円)以上
生産台数:43万1506台
全長:3950mm
全幅:1675mm
全高:1225mm
最高速度:183km/h
0-96km/h加速:9.1秒
燃費:10.2km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:955kg
パワートレイン:直列4気筒1598cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:115ps/6500rpm
最大トルク:13.8kg-m/5500rpm
ギアボックス:5速マニュアル/4速オートマティック
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