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あまりに良くでき過ぎていているとツマラナイ?

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あまりに良くでき過ぎていているとツマラナイ?

専門家がこぞって激賞する、現代に蘇ったコンパクトなリアミドシップのアルピーヌA110。良くできたスポーツカーだが好物ではない、と感じていた筆者が改めて乗ってみたくなったのは、そのカラーコーディネーションがきっかけだった。

作り手の熱量が“復活”の原動力

伝説のLTを継ぐ、クールな高性能

“郷愁”(ノスタルジー)がなぜ、自動車デザインの重要なテーマになっているのだろうか。おそらく古今東西に数多のブランドが成立し、そのブランドというものが少なからず自らのヘリテージ性によって他者との差別化を計ってきたからだと思う。

例えばポルシェ 911やジープラングラーのように一貫した途切れのない歴史を持つモデルは、一度も先祖のデザイン言語を一新したことがないため、改めて郷愁を活用する必要がない。この2台が超人気モデルであることを思い出せば、途切れなく歴史を続けるということには計り知れない強みがあるというべきだ。

一方、過去にモデルもしくはブランドそのものの断絶があった場合、その復活にはノスタルジーの力が必要である。ポッとでの新人ではなく、由緒正しき歴史のあるモデルであることを、そのデザインでまずは標榜しなければ商品としての説得力が失われるからである。もちろん80年代末のバブル期に日本の日産自動車が発売して人気を博したパイクカーシリーズのように、正当な歴史なきレトロモダンデザインもまたマーケットには熱狂的に受け入れられた例はあるものの、所詮、一発屋でしかなく、長続きはしなかった。BMWミニやフィアット 500のようにロングセラーとなるには、やはりデザインの歴史的反復が必要ということだろう。もっとも、いかに有名な歴史に端を発していたとしても、VWニュービートルのようにあっけなく2世代のみで終焉することもあり、成功するか否かはひとえにメーカー側の熱量の大小にかかっていると思う。

現代に蘇ったアルピーヌ A110は、そういう意味では作り手の熱量が非常に大きく感じられる1台である。ラリーカーとして名を馳せた初代の生産が終わったのが77年で、それからちょうど40年後に復活した。2座のスポーツカーであることと、シルエットやディテールをオマージュしたこと以外は全く新しいモデルで、走りの個性を定めるエンジンレイアウトもRRからリアミドへと一新されている。ピュアなマニアからはそれだけで一蹴されかねなかったけれども、反発はそれほどでもなかったようだ。なぜなら新型A110は現代のスポーツカーとして超一流であったからに他ならない。メーカーの熱量の発露であろう。

きっかけは「好みのカラーコーディネーション」

何度か東京~京都を往復し、すでにその評価も固まったモデルではあったが、改めて乗ってみたくなったワケは、昨年「アトリエ・アルピーヌ」というカラープログラムが発表され、それによって仕立てられた広報車両が素晴らしく自分好みのカラーコーディネーションだったからだ。内外装の色はかくも重要というワケである。

アトリエ・アルピーヌは残念ながらすでにオーダーストップで、来年に予定されているマイナーチェンジ以降の後期モデルでの再開を期待するほかないが、簡単にいうとA110の歴史的なカラーを29色発表し、それぞれ110台ずつ生産するというものだった。そのうち、広報車として選ばれたのが「チューリップ・ノワール」と呼ばれるパープルカラーにゴールドのホイールというご機嫌な仕様(写真)である。ベースはリネージ。

実を言うと筆者はこのクラスのミドシップモデルで言うと、(専門家がこぞって激賞する)アルピーヌ A110派ではなく、また(専門家がこぞって推奨する)ポルシェ ケイマンでもなく、なんなら(専門家がこぞって感嘆する)ロータス エリーゼ でもなくて、(専門家がそこまで褒めない)アルファロメオ 4Cが好物である。本題ではないので深くは触れないけれど、デキの悪い子ほど可愛いとだけ言っておく。

逆にこの中で最もスポーツカーとしてデキの良い子がアルピーヌA110だった。ケイマンよりピュアなスポーツカーで、エリーゼほどスパルタンではない。日常使いとスポーツとのバランスが高い次元で融合する稀有な存在だ(やはり激賞してしまう)。一方で、ずっと引っかかっていたのは、あまりにでき過ぎていてツマラナイのではないか、という気持ちがあったからだ。クルマの性能は真円に近づけば近づくほど面白みを失うものである。

最新のよくできたスポーツカーとは

それでも好きなカラーのクルマに乗っていると気分がいい。横浜から快調に走り出し、東名高速を順調にクルーズする。ミドシップスポーツカーとして一流であることは必ずしもグランドツーリングカーとして優秀であることを意味しない、というのは筆者がこれまでの長距離テスト経験から得た自説の 1つだったが、最近では“裏切られる”ことも多く、アルピーヌもまたそうだった。比較的コンパクトであるにもかかわらず、グランドツアラーとしても十分に使える能力の持ち主。直進安定性は高い、というよりも車線に沿ってドライバーが走らせやすいクルマとでも言おうか。「このクルマは道をよく知っているなぁ」とはGT性能に優れたクルマへの賛辞だが、アルピーヌA110にはシャシーの高いポテンシャルのほか、ウィンドウの切り欠きデザインなど心理的に真っ直ぐ走らせるための工夫もあったりする。

コンパクトなミドシップカーにしてはドライバーを挑発し過ぎないという点もGTカーとして優れている点だろう。エリーゼなどは座った尻から挑発されるし、4Cもまるで落ち着きがない。ケイマンは逆に全く冷淡で、ドライバーから燃え上がるほかない。「よーし、やってやろう!」という気にさせる沸点を低い順に言うと、エリーゼ→4C→A110→ケイマンで、A110あたりのバランス感覚が多くの人にとって最も好ましいレベルであることは確かだろう。

高速道路では俊敏な追い越し加速や、高速コーナーでの安定感に舌を巻く。楽しいと感じる。もっと乗っていたいと思わせる。その積み重ねで、いつもとさほど変わらぬ所要時間であったのに“もう着いてしまった”と思えるあたりもまた、優秀なGTである証拠だ。

京都の街中でも硬過ぎないフラットライドに好印象を持った。流石に交差点を曲がるたびに楽しいと思う、は言い過ぎで、それはロータスへの褒め言葉としてとっておこう。街中では楽しいと言うより扱いやすい。この辺りのデイリーカーとしての優秀さが逆に、面白くないなと以前に思った根拠だったのかもしれない。街中を流している限りにおいて、心が沸くことはないからだ。

それでもホームワインディングの嵐山高雄パークウェイに繰り出すと、水を得た魚どころか鮪である。ここでも道を知っているかのごとき振る舞いに感嘆する。あまりに素直に走れてしまう点は曲者好きの筆者からすると物足りないが、安全に楽しくひとっ走りという使い方においては満点のクルマであるという他ない。

なるほど最新のよくできたスポーツカーは、ピュアにドライビングを楽しむことができるクルマであって、味(=クセ)のあるクルマのことを指すのではないのかもしれない。

文・西川淳 写真・橋本玲 編集・iconic

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みんなのコメント

42件
  • なんか品の無いカラーとホイールだな。
    A110ってもっと爽やかなイメージなんだけど。
  • あまりに良くでき過ぎていているとツマラナイから、イナガキの記事も含め。GQの記事はあえてクダラナイんですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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