■闘うランチアの象徴だった「デルタHFインテグラーレ」
ランチア「デルタHFインテグラーレ」といえば、WRC(世界ラリー選手権)での活躍が思い起こされる。
トヨタが1000馬力、価格も1億円級のモンスターマシンを市販化へ
1987年、参加できるマシンがそれまでのグループB規定からグループAへと変更になったWRCに、ランチアは「デルタHF4WD」で参戦。ドライバーのユハ・カンクネンがドライバーズタイトルを獲得し、マニファクチャラーチャンピオンシップもランチアのものとなった。
その後WRCには、マツダが「ファミリア4WD」、アウディは「クーペクワトロ」で参戦していたが、トヨタが「セリカGT-Four」、三菱は「ギャランVR-4」、そしてその後継モデルである「ランサー・エボリューション」、スバルは「レガシィ」とその後に「インプレッサWRX」で参戦するようになると、ランチア・デルタも含めたこの4社がチャンピオンを争うようになった。
そこで求められるのが、ベースとなるモデルのレベルアップとなる。グループAというのは、市販モデルからの改造範囲が狭く、ベースモデルの出来が、勝利するための第一条件となってくるからだ。
そこでランチアは、デルタを進化させていった。
当初のHF4WDから、ドアパネルと溶接したブリスターフェンダーを採用した「HFインテグラーレ」へ。さらにそれまでの8バルブから16バルブへとエンジンを変更した「HFインテグラーレ16v」。ブリスターフェンダーがリアドアパネルと一体化された「HFインテグラーレ16vエボルツィオーネ」。そしてモデル末期となる1993年に登場したのが、今回紹介するランチア「デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネII」である。
ところが、このランチア・デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネIIは、じつはWRCには参戦していない。というのもランチアは、1993年限りでWRCから撤退してしまったからだ。その最終年度に、ランチアのドライバーを務めていたのが、カルロス・サインツ。現在F1ドライバーとして活躍している、カルロス・サインツJrの父親だった。
■デルタの限定モデルは、使用感ありでも人気!
余談はさておき、ランチア・デルタ・HFインテグラーレ・エボルツィオーネIIの紹介を続けよう。
●1995 ランチア「デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネII ブルーラゴス」
搭載されているエンジンは、直列4気筒16バルブの2リッター・ターボで、最高出力は燃料噴射システムの変更などによって、215psとなっている。ホイールサイズは、それまでの15インチから16インチへと拡大された。
外観上の特徴は、冷却面を考慮したダクトの大さと、角度が調整できるルーフスポイラーの装備となる。
全長4m足らずというコンパクトなボディに強力なエンジンを搭載し、WRCで勝利するためのクルマの最終モデル、それがランチア・デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネIIなのだ。
そんなランチア・デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネIIが、Bonhamsオークションに登場した。1995年式で、走行距離は12万マイル弱(約19万km)。内装は運転席に若干のヘタリはみられるが、その他の部分は非常に程度がよく、機能的にも現状問題なしとなっている。
しかしそれ以上に貴重なのは、このクルマが限定モデルである、ブルーラゴスということだ。メタリックブルーのボディカラーと、イエローのピンストライプは、世界で225台しか販売されなかったもの。それを示すプレートが、シフトノブ手前のセンターコンソールにセットされている。
このオークションに出されるまでの2オーナーが実用車として使っていたことから、走行距離こそ多いが、きちんと整備されてきたことを示す書類も残されている。
3万5000-4万5000ポンドのエスティメートに対して、落札価格は4万5000ポンド(約620万円)というものだった。たしかにコンクールコンディションのクルマと比べれば、使用感は否めない。しかしハイパワーエンジン+フルタイム4WDでのスポーティな走りを楽しみたい人にとっては、整備をしっかりしてきたこういったクルマのほうがありがたいはずだ。
落札した人はおそらく、クルマで走ること、クルマを操ることが好きな、真のエンスージアストなのだろう。
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みんなのコメント
イギリスで、「走行12万マイル、オークションで最高45,000ポンドついた」っていう記事を、
あたかも日本で、「走行19万キロの超過走行車が、オークションで600万円!」って誤解させるのは、
ただのフェイクニュース。
両者の意味合いは、天と地ほど違う。