■原則として価格が高いクルマほどHV仕様が有利
ハイブリッド車には、トヨタのプリウスやアクアのようなノーマルエンジン(純ガソリン仕様)を用意しない車種もあるが、両方を選べる場合も多い。日産ノート、トヨタC-HR、ホンダヴェゼルなどは、いずれもノーマルエンジンとハイブリッドの両方を採用する。
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この選択(ハイブリッド仕様を買うか、ノーマルエンジン仕様を買うか)は、基本的には用途に応じて行う。ハイブリッド仕様グレードの価格は、ノーマルエンジンに比べて少なくとも25万円は高い。車種によっては50万円前後も上乗せされる。この価格差を、燃料代の差額で取り戻せるか否かで、購入の判断が分かれる。走る距離が長いユーザーは、価格差を燃料代の差額で取り戻しやすいが、そうでない場合はノーマルエンジンが推奨される。
この損得勘定はエコカー減税も含めて計算する。
価格が500万円前後に達する車種では、エコカー減税率の違いにより、購入時に納める自動車取得税と同重量税に最大で約17万円の差が生じるからだ。しかも大排気量車では、燃料代にも2倍の差が付くことがある。したがって価格の高い大排気量車は、全般的にハイブリッドが有利だ。
逆に価格の安い小さな車種は、エコカー減税で差がつきにくい。ノーマルエンジン車も燃費を重視するから、燃料消費量も2倍まで開くことはない。さらにハイブリッドでは、駆動用モーター+駆動用電池+制御機能が不可欠だから、ノーマルエンジンとの価格差を25万円以下には縮められない。そうなると税額や燃料代の差はつきにくく、価格に占めるハイブリッドのコスト比率は高まるから、ノーマルエンジンが有利だ。
■年間どれくらい乗るかで判断する
ハイブリッドとノーマルエンジンを選ぶ時の大雑把な目安は、1年間の走行距離が1万5000km(1か月当たりなら1200km)を超えるかどうかだろう。1年間に1万5000km以上を走ると、ハイブリッドを選ぶ経済的なメリットが強まる。
このほか車種の性格やコンセプトとの整合性もある。ユーザーの考え方でも異なるが、例えば「スポーツカーなら、ハイブリッドよりも動力性能が高く運転感覚の楽しいノーマルエンジン」という選択も成り立つだろう。
逆にハイブリッドシステムに特徴のある車種は、走行距離が少なくても、ハイブリッドを選ぶユーザーが多い。魅力が環境性能や経済性にとどまらず、運転感覚やメカニズムの先進性にも置かれるからだ。
ここからは、「あえてノーマルエンジンを選びたい5車種」を取り上げてみたい。
文:渡辺陽一郎
■ホンダフィット
ホンダフィット
エンジンはノーマルタイプが1.3Lと1.5Lで、これに1.5Lのハイブリッドが加わる。この内で最良の選択は1.3Lのノーマルエンジンだ。車両重量が約1トンと軽いから、1.3Lエンジンでもパワー不足を感じない。JC08モード燃費は24.6km/Lと優れ、34km/Lのハイブリッドと較べて大差はない。
その一方でハイブリッドの価格は、装備の違いを補正してもノーマルエンジンに比べて30万円高い。エコカー減税の違いを含めても、購入時の負担差額を燃料代の差額で取り戻すには、13~14万kmの走行を要する。
ホンダフィットのハイブリッドは、ノーマルエンジンに比べて動力性能が高いが、7速DCTには今でも少しギクシャクした違和感が残る。こういった点を踏まえると、最も推奨されるグレードは、1.3Lのノーマルエンジンを搭載した13G・Lホンダセンシング(165万3480円)になる。
■トヨタカローラアクシオ
トヨタ・カローラアクシオ
コンパクトなセダンとあって、フィットと同様、売れ筋となる1.5LのノーマルエンジンでもJC08モード燃費は23.4km/lと優れている。ハイブリッドは34.4km/lだが、価格も装備の違いを補正して約35万円高い。燃料代の差額で車両価格差を取り戻すには、約16万kmを走る。静粛性はハイブリッドが優れるが、1年間に2万km前後を走らない限り、経済性のメリットは際立たない。
またトヨタカローラアクシオはユーザーの平均年齢が高く、1年間の走行距離が5000kmに満たない使われ方をすることも多い。そうなるとハイブリッドを選ぶ価値が生じるのは、主に法人ユーザーになる。
それでもカローラアクシオのハイブリッドが堅調に売れるのは、「一度はハイブリッドに乗りたい」と考えるユーザーが購入しているからだ。初代プリウスが発売されて20年以上を経過したが、ハイブリッド車が本格的な普及を開始したのは、3代目の先代プリウスが発売された2009年頃からだ。今はクルマを買い替える周期が7~9年に伸びたから、「今がハイブリッドの選び時」と考えるユーザーも少なくない。
この典型がカローラアクシオハイブリッドといえるが、合理的に考えると、ベストグレードは1.5Lのノーマルエンジンを搭載する1.5G(186万1920円)になる。
■日産エクストレイル
日産・エクストレイル
日産エクストレイルでは、ハイブリッドの商品力が低い。JC08モード燃費を売れ筋の4WDで見ると、ノーマルエンジンの20Xが15.6km/l、ハイブリッドの同グレードが20km/lだ。ハイブリッドの燃費向上率は28%で、実際にテスト走行した時の燃費も期待はずれだった。その結果、エクストレイルのハイブリッドは、売れ行きが伸び悩んだ。
そこで2017年のマイナーチェンジでは、各種の装備を充実させながら、ハイブリッドはノーマルエンジンに比べて値上げ幅を抑えた。以前のハイブリッドは、ノーマルエンジンに比べて実質的に約44万円高かったが、今は約34万円に縮まった。
しかしそれでもなお、34万円の価格差を燃料代の差額で取り戻すには、10万km以上の走行を要する。
またエクストレイルでは、荷室に装着された防水ラゲッジボード(床面)が魅力なのに、ハイブリッドには装着されない。開発者に理由を尋ねると、「ハイブリッドでは荷室の床下に駆動用電池が搭載されるから、濡れたモノは積んで欲しくない。そこで防水にしなかった」と言う。
これには驚いた。そこで「駆動用電池の防水対策はそんなに弱いのか? 防水加工のないエクストレイルハイブリッドの荷室に大量の水をこぼしたら、漏電するのか!?」と改めて尋ねると「そんなことは絶対にない。防水対策は入念に行ったが、駆動用電池が搭載されることを示す意味と、基本的な使い方として濡れたモノを置くべきではないからだ」と説明された。
納得はできるが、防水の荷室がないと「タフ・ギア」のエクストレイルに乗る楽しさが削がれるような気分になる。
以上のような理由で、エクストレイルのベストグレードは、ノーマルエンジンを搭載した4WDの20X(275万5080円/2列シート)としたい。
■ホンダジェイド
ホンダ・ジェイド
フィット/カローラアクシオ/エクストレイルの3車種は、「ハイブリッドの搭載に伴う価格上昇を、燃料代の節約で取り戻せるか」という損得勘定で、ノーマルエンジンを選んだ。高価なハイブリッドを搭載する割には燃費向上率が小さく、価格上昇分を取り戻せないからだ。
ところがホンダジェイドは違う。燃費とか価格以前の話として、ジェイドの性格には、1.5Lのハイブリッドよりも同じ排気量のターボが似合うからだ。
ジェイドは3列シートのミニバンとして開発され、売れ行きを低迷させたが、本質はボディがワイドなスポーティ指向の5ドアハッチバックだ。3列仕様はその荷室に、補助席を装着したに過ぎない。
そこで2018年5月17日にマイナーチェンジを実施して、主力のRSを従来の3列シートから2列に変更した。サスペンションの設定も見直している。
走行性能を幅広く改善したので、ますます1.5Lターボエンジンとの相性が良くなった。ベストグレードは、1.5Lターボを搭載するRSホンダセンシング(255万8520円)になる。
■レクサスLC
レクサスLC
今はクーペの売れ行きが世界的に低下して、車種の数も減った。GMのシボレーカマロ、日本から撤退したフォードのマスタングなどは、外観の形状が初代モデルを連想させる。もはや若いユーザーはねらえず、外観が懐古趣味になった。
その意味でレクサスLCは貴重だ。国産クーペは日産GT-R、ホンダNSXを代表に魅力が分かりやすいスポーツ指向だが、レクサスLCは高性能と豪華さを併せ持つ。
パワーユニットはV型8気筒の5Lと、V型6気筒3.5Lのハイブリッドだ。趣味性が重要なスペシャルティカーだから、運転感覚の好みに応じて選べば良いが、ハイブリッドは同タイプをトヨタクラウンにも搭載する。ハイブリッドは高性能で低燃費(レクサスLC500hのJC08モード燃費は、2Lセダンと同等の15.8km/l)だが、レクサスLSの搭載も含めて一般的なパワーユニットになった。
その点でV型8気筒の5Lは、スペシャルティな扱いを受けている。レクサスRC・F/GS・Fと同型で、高回転域の吹き上がりは、大排気量エンジンながらも抜群に機敏だ。エンジン回転数が高まるほど、引き上げられるように回転上昇が鋭くなっていく。機能的な動力性能と安定性はGT-Rが勝るが、スポーツカーの情緒は、V8エンジンのレクサスLCが洗練されている。
そしてV型8気筒エンジンは、環境対応が難しく、今では新規開発をしていない。新しいレクサスLSが搭載するのは、LCと同じハイブリッドと、新開発されたV型6気筒3.5Lツインターボだ。
つまりLCのV8エンジンを新車で買える期間は限られる。だからLCのベストグレードは、LC500・Lパッケージ(1300万円)になるわけだ。
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