並行して開発された4代目レンジローバー
真新しいランドローバー・レンジローバー・スポーツの窓を開き、見送る同僚と目的地について言葉をかわす。そのまま閉めずに公道へ進み、最初の50mを確認する。発進時の心地良さに感動してしまった。第一印象のテストは満点だ。
【画像】新型レンジローバーとレンジローバー・スポーツ 競合する上級SUVと比較 全160枚
軽くないボディの質量を巧みに包み込み、操作に対する反応は正確で予測しやすい。2分ほどで高速道路へ合流。窓を閉めて加速し、クルージング状態に移る。
新しいレンジローバー・スポーツは、恐らくこのクラスで最も静かな車内を実現している。ひと回り大きい兄貴分、レンジローバーに近い洗練性や隔離性が、この3代目にも備わっている。
驚くべき進化に思えるが、ある程度は想定できていた。4代目レンジローバーと3代目レンジローバー・スポーツは並行して開発が進められた。共有する部分は少なくなく、発表時期も数か月しか違わない。
2台の基礎構造は、ランドローバーが新開発したモジュラー・ロンジチューディナル・アーキテクチャーと呼ばれる、縦置きエンジン用のプラットフォーム。主にアルミニウムで構成され、ねじり剛性は従来から35%も高められている。
レンジローバー・スポーツのサイズは、先に登場したレンジローバーより短く低い。といっても、全長は4946mm、全幅は1990mm、全高は1820mmと大差ないが。レンジローバーは順に5052mm、1990mm、1870mmある。
ホイールベースは2997mmで同値。ワイドでロングなSUVだ。
BMW由来の4.4L V8エンジンを搭載するP530
車重の差は寸法より大きい。試乗したレンジローバー・スポーツ P530は、BMW由来の4.4L V型8気筒エンジンを搭載し、最高出力は530psを発揮する。こちらの車重は2430kgだが、レンジローバーの方は同じエンジンで2510kgある。
燃料タンクの容量が80Lなのに対し、レンジローバーが90Lと大きいことも少し影響している。車重は燃料をタンクの90%ぶん補充して計測されるためだ。上下2分割となるテールゲートも重そうに思えるが、占める割合は僅からしい。
どちらも、サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアが5リンクのマルチリンク式を採用。ブレーキ制御のトルクベクタリング機能を備え、リミテッドスリップ・デフがリアに組まれる。
電圧48Vで稼働するアクティブ・アンチロールバーと、後輪操舵システムも備わる。この辺りも共通している。
メカニズム的な1番の相違点は、恐らくサスペンションだろう。レンジローバーはシングルチャンバーのエアスプリングで支えるのに対し、レンジローバー・スポーツはデュアルチャンバーで支えられている。より幅の広い動的能力を与えるために。
といっても、目立った違いではない。むしろルックスも含めて、かなり似ているといった方が正しいだろう。先代ほどは、明確な立ち位置の違いが感じられない。スタイリングの印象も同様で、窓を開いて走らせた時のフィーリングも似ていた。
内装素材や製造品質に非の打ち所はない
インテリアにも、この感覚は通じている。エアコンの送風口が伸びる水平貴重のシャープなダッシュボードは、上質なレザーで仕立てられている。ゆったりとしたサイズのシートには、跳ね上げ式のアームレストが付いている。
メーターパネルは大きなモニター式。中央には、ピヴィ・プロと呼ばれるインフォテインメント用のタッチモニターと、扱いやすいエアコン用のダイヤルが並ぶ。手前側では、ランドローバー自慢のテレインレスポンス・コントローラーが輝く。
レンジローバーと比べると、シートの座面は20mm低い。ステアリングホイールはひと回り小さく、2本ではなく3本のスポークで肉厚なリムを支えている。
内装素材や製造品質に非の打ち所はない。ランドローバーがレンジローバー・スポーツも一層ラグジュアリーSUV側に寄せたいと考えていることが、よく表れている。
筆者は少し前に、高級車へ与えられる授賞式でベントレーの上層部の方と同席したことがある。彼女は、メルセデス・ベンツSクラスが選考対象には当てはまりにくいと考えていた。市場やターゲット層が異なると。
その考えを理解できなくはないし、レンジローバーに対しても同じ言葉を発するだろう。確かに、すべての素材がくまなく高級というわけではない。だが、デザインの美しさでは劣っていないと思う。一流のインテリアだ。
ベントレー・ベンテイガには届いていないものの、価格もだいぶ違う。BMW X5やポルシェ・カイエンのトップグレードには負けていない。ちなみに後者は、レンジローバー・スポーツの最大のライバルになるといえる。
この続きは後編にて。
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