現在のクロスオーバー隆盛を先取りしていたのがかつての5ドアHBモデル。以前は多くのモデルがあったが、販売的にはさほど振るわなかった。が、それはなぜだったのか? 改めて振り返ってみたい。
文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、ベストカー編集部
プリメーラUKにコロナSF……かつての5ドアHBモデルはなぜ日本でウケなかったのか?
■現在はシビックもクラウンスポーツも5ドア車
現行型シビックのボディバリエーションは日本仕様では5ドアHBのみとなっている
新世代のクラウンがファストバックスタイルの「クロスオーバー」、そして間もなくデビューする5ドアハッチバックタイプの「スポーツ」とボディ形状をそれまでのセダンが本流のスタイルからバリエーションを増やしているのはご存じのとおり。
また、現行型11代目シビックは2021年に登場したが、北米ではセダンも設定されているものの、現行型はe:HEVも1.5Lターボも5ドアHBのみとなっていて、タイプRも当然、この5ドアHBがベースとなっている。
にわかに5ドアHBが脚光を浴びている現在なのだが、実は日本ではかつて1980年代後半、国産各社から5ドアHB車がラインナップされていた。しかし、どのモデルも販売的には振るわず、「日本では5ドアモデルは売れない」とのジンクスが囁かれることに。
時代は巡り、再び5ドアHBがクローズアップされるなか、かつての5ドアモデルたちを振り返ってみたい。
■R30スカイラインや歴代カペラ、コロナに設定
R30スカイライン5ドアハッチバック
まずは1981年に登場した6代目R30スカイラインから。この頃のスカイラインはセダン、2ドアクーペ(HT)以外にもステーションワゴンのエステート、そして5ドアHB車を設定していた。
ちなみに歴代で5ドアHBが設定されたのはこのR30が初めてで、テンパータイヤの採用もこのR30の5ドアHBだった。
スカイラインクロスオーバー。走りのいいクロスオーバーSUVとして登場した
この5ドアHBは次のR31型では設定されず、後年の2009年にスカイラインクロスオーバーの登場まで待つことになる。
1982年に登場した4代目カペラには5ドアHBモデルが設定されていた
続いてはマツダからは1980年代に4代目カペラ(1982年)と5代目カペラCG(1987年)と連続して5ドアHBモデルが設定されたが、やはりカペラでも当時の主流は4ドアセダンにワゴン、それに2ドアクーペ。1994年に登場した6代目カペラは4ドアセダンのみとなり、あっさりラインナップから消えることに。
3代目コロナには5ドアセダンとしてリフトバックが設定されていた
そしてトヨタではコロナSF。その源流は1964年に登場した3代目コロナに設定された5ドアセダンモデルのリフトバック。多用途に仕える5ドアハッチバックが設定されたことがこの時代には革新的だった。
FF化された8代目コロナは当初、5ドアHB車のみの設定となっており、セダンはFRの先代7代目が併売されていた
その後、1983年にFMCを受けて登場した8代目コロナが突如、5ドアHB専用モデルとしてデビュー(のちに4ドアセダンも同年10月に追加)。この型から駆動方式をFRからFFに切り替えたことから、セダンはFRの7代目モデルが継続販売されていた。
9代目コロナに設定された5ドアHB車には「SF」のサブネームが与えられた
そして1987年に登場した9代目コロナに5ドアHBモデルは新たに「SF」(センセーショナル・フィーリング)のサブネームを伴って設定された。
9代目コロナSF。リアスポイラーがないとプレーンなスタイリングになる
その後、コロナとしては最終モデルとなる1992年登場の10代目コロナにもSFは継続設定されたが、その後のコロナプレミオ、初代&2代目プレミオはセダンのみの設定だったのでコロナ5ドアの系譜はここで終焉に。
10代目コロナにも5ドアHBのSFは継続設定されていた
■コロナSF同様にスプリンターにもサブネームを持つシエロを設定
6代目スプリンターには「シエロ」のサブネームで5ドアHB車を設定
同時代のトヨタ車では1983年登場の5代目スプリンターに4代目スプリンター3ドアリフトバックの後継として5ドアハッチバックを設定。続く1987年の6代目スプリンターには5ドアモデルにサブネームの「シエロ」が与えられた。
8代目コロナの5ドアHB同様、5代目スプリンターの5ドアHBは販売的に苦戦したため、コロナSFと同様にサブネームのシエロ(スペイン語で『天空』の意)がつけられたという経緯がある。なお、このスプリンターシエロは欧州ではカローラ5ドア、豪州でカローラセカ、北米でジオプリズムHBとして販売された。
スプリンターシエロのリアスタイル。リアスポイラー装着でスポーティな雰囲気だ
シエロで秀逸だったのが販売キャッチで、前期型は「シエロ、その名は遥かなる天空を意味する」で、後期型は「センスが香る人のニューセダン」。そこはかとないオシャレさを感じさせたのだが、以後は5ドアモデルは設定されずじまい。残念だった……。
■三菱やホンダからも5ドアHBが!
6代目ギャランの5ドアHB車として登場した姉妹車の4代目エテルナ
同じ時代の三菱からは6代目ギャランの姉妹車として設定されていた1988年登場の4代目エテルナが5ドアHBとして登場。のちに4ドアセダンのエテルナSAVAも追加されるが、実は6代目ギャランVR-4と同じく2Lターボの4G63を積むホッとグレード、ZR-4も設定されていた。
ミニエテルナ的なスタイリングだった3代目ランサー。セダンのように見えるが、実は5ドアHB車なのだ
さらに同年登場した3代目ランサーも日本国内では5ドアHB専用モデルだった(海外仕様は4ドアセダンに)。ミラージュサイボーグ(こちらは3ドアHBと4ドアセダン)と同じく1.6Lインタークーラー付きターボ(前期型145ps/後期型160ps)を搭載したGSRなど光るグレードも存在した。
ところが、ランサーはその後初代ランエボのベースとなる4代目ランサーでは4ドアセダンのみとなり、5代目ランサー、6代目ランサーセディアでは5ドアHBモデルが設定されず。
1988年に誕生した初代コンチェルト。写真の5ドアHB以外に4ドアセダンもラインナップされていた
ホンダからは1988年に誕生した初代コンチェルトが4ドアセダン以外に5ドアHBを設定。いずれも6ライトウィンドウスタイルで、当時のホンダ車らしく前後サスペンションにはダブルウィッシュボーン式を奢られていた(欧州仕様はフロントがストラット式だった)。
その後、コンチェルトは2代続いたドマーニにその座を譲るも4ドアセダンのみで、5ドアHB車は設定されなかった。やはりホンダでも5ドアモデルは不遇をかこつことになった。
■日産も5ドアHB戦線に復帰へ!
初代プリメーラ5ドアハッチバックのマイチェン後モデル。ウインカーレンズの色が前期型のクリアからアンバーに変更されている
R30スカイライン後はしばらく5ドアHBが設定されなかった日産だが、1990年に登場した初代P10プリメーラでは英国生産の5ドアHBモデルが翌1991年から日本導入を開始した。
地味な存在ながら実はマイナーチェンジを受けたのは5ドアHBが先。ウインカーレンズの色がクリアからアンバーに変更されるなど1994年2月にマイチェンを実施。4ドアセダンのほうは1994年9月だった。さらに1995年1月には5ドアHBは2度目のマイチェンを受け、同年6月には当時の円高差益還元によって10万円も値下げされていたりする。
2代目プリメーラ5ドアHBはUKのサブネームが付いた
プリメーラは1995年に2代目モデルにフルモデルチェンジされたが、2代目では1997年2月から5ドアモデルを設定。しかも今度はプリメーラUK2.0GTと英国生産であることをアピールするようなサブネームが付いていた。
欧州仕様の3代目プリメーラには日本仕様にない5ドアHB車があった
プリメーラは2001年FMCを受け、3代目モデルに。だが、日本仕様は4ドアセダンとステーションワゴンのみとなり、今回も欧州では設定されていた5ドアHBは導入されることはなかった。
■バカ売れした2代目プリウスから5ドアモデルの意味合いが変わった?
それまで不遇だった5ドアHB車の存在感を大きく変えたのは2代目プリウスだった?
ここまで見てきて、国産車で1980年代から1990年代にかけて日本ではなぜ5ドアHB車が販売的に振るわなかったのかを考えてみたのだが、やはりスタイリングが4ドアセダンに比べて野暮ったい感じが敬遠された気がする。
そう、単刀直入に言うと「あまりカッコよくなかった」というのが真実だったような……。ただ、ラゲッジなどは5ドアHBのほうが容量は大きく、欧州市場で5ドアHBがウケていたのはそのあたりを欧州のユーザーはわかっていたからなのかもしれない。
2009年に登場した2代目インサイト
その後、日本では2003年に登場し、大ヒットした2代目プリウスでは燃費の空力的に有利なボディ形状として5ドアHBを採用。以後、3代目~現行型5代目まで基本的なプリウスのボディスタイルは5ドアHBを継続。2009年にホンダが出した2代目インサイトは2代目&3代目プリウスに似た5ドアHBスタイルだった。
これまでは不遇だったが、これからは5ドアHBの時代になるのだろうか?
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不細工なミニバン大好き国民なんやで