優れたバランスと敏捷性 大きな見返り
過去のベントレーと比較すれば、小柄になった初代コンチネンタルGTだが、客観的には大きな2ドアクーペであることに変わりはない。ところが、ステアリングホイールを握っていると、そのサイズを感じさせない。
【画像】伝統と最新技術、遊び心が融合 ベントレー・コンチネンタルGT 最新バトゥールも 全111枚
シャシーの根底には、優れたバランスと敏捷性が宿る。ドライバーへ操る自身を抱かせ、充足感を与える。それでいて非常に快適。まさにラグジュアリー・グランドツアラーだ。
穏やかに運転している限り、走りに振ったコンチネンタルGT スーパースポーツであっても、柔軟で従順。少し意欲的に扱えば、それに見合う以上の見返りがある。特別感を伴いながら。
クーペとコンバーチブルのスタイルが選べた、初代コンチネンタルGTで提供されたバリエーションは、スピードとスーパースポーツのみ。だが2010年のパリ・モーターショーで発表された2代目では、成功を受け大幅に選択肢が広げられた。
パワートレインには、アップデートされた6.0L W12型ツインターボに加えて、アウディと共同開発の4.0L V型8気筒ツインターボも登場。最高出力500psを発揮し、最高速度は309km/hが主張された。コンチネンタルGT Sでは、521psへ強化されていた。
今回ステアリングホイールを握らせていただいたのも、その「S」。発表イベントに使用された車両そのもので、ベントレーの技術者によって見事な状態が維持されている。
伝統と最新技術、遊び心が融合
当時のAUTOCARの試乗レポートでは、V8エンジンがコンチネンタルGTの素晴らしい印象を霞ませないことへ触れている。「時代は過ぎても、その感覚は今でも特別であり続けている」。と。
W12エンジンと聴き比べれば、確かにサウンドの厚みでは劣るだろう。それでも、現在の多くのモデルより、遥かに心を震わせる響きを放つ。
インテリアは初代以上に豪華で、古さを感じさせない。指摘するなら、ダッシュボード上の液晶モニターが小さいことと、CDプレイヤーが付いていることくらい。
今回の例は左ハンドル車ながら、狭い英国郊外の道を不安なく導ける。初代と殆ど変わりない、全長4806mm、全幅1944mmあるサイズのことを、意識しなくなるほど。
だとしても、ベントレーを運転しているという事実を忘れることはない。別格の味わいがある。
そしてこれが、3代目コンチネンタルGTを導いた。試乗させていただいたのは、V8エンジン版の最上級、マリナー仕様。ダッシュボードには艶深いウッドパネルがあしらわれ、アナログのメーターが並ぶが、明らかにモダンなベントレーだ。
ボタンを押すとセンターのパネルが回転し、大きなタッチモニターが姿を表す。伝統と最新技術、遊び心が融合した、このクルマの個性を端的に表している。
一般道を走らせれば、高級グランドツアラーらしい快適性や乗りやすさはそのままに、スポーツカーへ迫る動的能力や操縦性を宿す片鱗が見える。まさに、ベントレーへ期待するものといえる。
ブランドを再定義 新たな可能性も創出
2018年の試乗記を振り返ると、「コンチネンタルGTを現代の象徴的なモデルと表現できるのか?」という疑問で始まっている。果たして、その答えはイエスだろう。
3代目で大きな特長といえるのが、カスタマイズやコーチビルドを担当する部門として復活した、マリナーの存在。その名を冠する試乗車のように、厳選された素材が惜しみなく用いられた内装も、彼らの仕事の1つになる。
現在販売されているベントレーの約4割に、マリナー部門が関わるオプションが装備されているという。欧州では、平均で1台当たり3万ポンド(約543万円)が上乗せされているとか。収益にも大きく貢献している。
ベントレーの間口を広げた、コンチネンタルGTが果たした役割は大きい。マリナーは、バトゥールなど完全なコーチビルド・モデルも提供するが、超高級なパーソナライゼーションの需要も拡大させたといえる。
2ドアクーペのグランドツアラーがブランドを再定義し、新たな可能性も創出した。この成功を土台に生み出されたベンテイガによって、新たな市場への進出も叶えた。
このラグジュアリーSUVは、次のベントレーの主役を担い始めている。販売は好調で、いずれコンチネンタルGTを追い越すかもしれない。
そしてベントレーは、遠くない未来にバッテリーEVを発表する。新しい市場をもう一度開拓し、ブランドの可能性を更に拡張するはず。
大胆な1歩であり、歴史ある同社にとっては賭けのような1歩かもしれない。だが、コンチネンタルGTのように、望ましい結果が導かれるのではないだろうか。
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