みなさんは、ドイツでセダンといえば、どのメーカーのモデルが多く走っていると思いますか?早速答えを発表しますと、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディの3社のセダンモデルでほとんどが占められています。おおよそ、みなさんの予想通りだったのではないでしょうか。
その他にちらほら見かけるのが、VW、オペル、シュコダのセダンといったところです。そんな「ドイツにおけるセダンはドイツ車が圧倒的シェアを誇る」状況の中、珍しいセダンを見つけました。今回の主役、ルノー・フルエンスです。
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フルエンスは国際戦略モデル!主にトルコで生産
ルノー・フルエンス、と聞いてすぐにピンとくる方は、ルノー・日産についてとても詳しい方ですね。フルエンスは2009年に、メガーヌ2セダンの後継として発表されました。国際戦略モデルとして、生産はトルコにあるオヤック・ルノーで行われましたが、中東・オセアニア・中国向けモデルは韓国のルノーサムスンが生産・輸出していました。あまり聞きなれない車名ですが、それもそのはず、日本には正規輸入されていません。
実は、2004年に同じ名前のコンセプトカー「フルエンス・コンセプト」が発表されていたのですが、市販されたフルエンスとはつながりがない、2+2のクーぺモデルでした。デザイナーがパトリック・ルケマンだったこともあり、「フルエンス・コンセプト」の各所にはその後のルノーにつながるデザインが見られたのですが、残念ながら市販されたフルエンスにはあまり生かされておらず、受け継いだのは名前だけだったようです。
シンプルで少し地味な印象のエクステリア
この個体は、フルエンスが発表されたばかりの、2009年から2012年頃のモデルだと思われます。近年のプジョーを思わせる横長の目つきに、横長に空いた吸気口が少しファニーな印象。サイドビュー、リアビューについては特に目を引くような個性は感じられず、エクステリアは全体的に少し地味な印象を受けるかもしれません。
エンジンについても特筆すべき点はなく、実用本位のルノーらしいラインナップと言えるでしょう。ガソリンエンジンは1.6リッター・110馬力と2リッター・140馬力の2種類で、加えてディーゼル・エンジンをラインナップ。のちに180馬力を発生するガソリン2リッターターボ・モデルも追加されました。
筆者がフルエンスを見て思い浮かべたのは、歴代のルノーのセダンが持つ「ちょっと冴えない雰囲気」です。しかし、デザイン的に凡庸でも、乗り味にキラリと光るものがあった21ターボや、フランス大統領専用車だった25、ゴルディーニの手によって伝説的な活躍を見せた8などに比べると、フルエンスには名車たちが備えていた「ルノー独特の世界観」が少し薄いかもしれませんね。
日本にはルノーのセダンが長らく輸入されていませんし、フラッグシップセダン「タリスマン」や2016年に発表された「メガーヌ4・セダン」についても、ルノー・ジャポンから輸入についての発表はされていません。フルエンスについても、現行メガーヌ4・セダンの発表を受けトルコでの生産を終了していますし、ルノーサムスンでの生産は依然として継続されているものの、日本に正規輸入される可能性はほとんどないと言ってよいでしょう。
ルノーのセダンは、ドイツでも「タリスマン」しか選べない!
ルノーのドイツ向け公式ウェブサイトを確認しても、純粋なセダンモデルはタリスマンのみで、他はハッチバック、ステーションワゴン、SUV、バンといったラインナップとなっています。それぞれの国で、売れるモデル、売れないモデル、同じグループ内で競合してしまうモデルなど、様々な事情があるかとは思いますが、個人的にはルノーのセダンがもっと復権してほしいと密かに願っています。
手を添えるだけでどこまでも真っ直ぐに進む直進性。出力は少なくとも、トルク重視で確実に仕事をする黒子に徹したエンジン。しなやかな足回りと、背中に吸い付くようなシート。それらによって、長距離を走破しても疲れ知らず。古くからのルノー車の美点といえばこんなところでしょうか。フルエンスを運転した経験はありませんが、そうした美点が残っているのか、ぜひ一度乗って試してみたいですね!
[ライター・カメラ/守屋健]
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