BMCの5ブランドから兄弟モデルを提供
女王エリザベス2世の夫、フィリップ王配は、かつて英国製サルーンの容姿が欧州の競合モデルへ劣ると発言した。それを受け、今はなきブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)は、既存プラットフォームを活かした新モデルを開発した。
【画像】オースチンにMGも 5銘柄で兄弟車 BMCファリーナ・シリーズ 同時期の英製サルーンたち 全120枚
ベースとなったのは、オースチンA55ケンブリッジで、スタイリングを手掛けたのはイタリアの名門、ピニンファリーナ社。BMC傘下にあった、オースチンとモーリス、ウーズレー、MG、ライレーの5ブランドから、それぞれ兄弟モデルが提供された。
ドライブトレインを含め、当初のコンポーネントは基本的にオースチン由来。モーリスやウーズレーは、ラック&ピニオン式のステアリングを既に採用していたが、旧式なカム&ペグ式へ逆行することになった。エンジンは、1.5L 4気筒のBシリーズが載った。
レバーアーム式の油圧ダンパーや、グリスアップの頻度が高いアクスルのキングピンなども、時代遅れの技術だった。しかしBMCのクルマは、グレートブリテン島以外の、過酷な環境で乗られることも多かった。堅牢性は高く、理にかなった選択ではあった。
内装やエンジンで差別化 銘柄で差の出た販売
1958年、最初に発売されたのはウーズレー15/60。その後、オースチンA55ケンブリッジ MkIIとMGマグネット MkIII、モーリス・オックスフォード V、ライレー4/68という順で、市場へ投入されている。
価格が1番お手頃だったのは、ケンブリッジ MkII。ウーズレーの15/60には、インテリアにウッドとレザーが多用され、高級仕様という扱いだった。
モーリスのオックスフォード Vは、A55ケンブリッジ MkIIの1つ上で、マグネット MkIIIと4/68は、ツインキャブレター・エンジンが与えられた高性能仕様。内装のトリムも上質で、高めの価格が設定され、差別化が図られていた。
販売数は、オースチンA55ケンブリッジ MkIIで約15万台。マイナーチェンジ後のオースチンA60ケンブリッジでは、27万6500台だった。オックスフォード Vと、同じくマイナーチェンジ後のVIは、それぞれ8万7432台と20万8823台が売れている。
15/60と後期型の16/60は、2万4759台と6万3082台。マグネット MkIIIとMkIVは1万6676台に1万4320台で、4/68と4/72は、1万940台に1万4151台。ブランドによって、売れ行きには大きな開きがあった。
英国のインテリアにイタリアンなボディ
1961年にアップデートされ、滑らかなボルグワーナー社製ATが登場。同じタイミングで、1622ccエンジンも追加されている。またホイールベースが延長され、前後のトレッドも拡大。サスペンション・スプリングは引き締められ、アンチロールバーも得ている。
その後、BMCは前輪駆動モデルへ注力。モーリス・ミニ・マイナーが人気を博す。とはいえ、フロントエンジン・リアドライブで高めのボディを背負ったサルーンの需要は一定数あり、生産は1971年まで続けられた。
オーストラリアでは、1962年に6気筒エンジンを積んだ、オースチン・フリーウェイとモーリス・フリーウェイ、ウーズレー24/80が登場。1965年まで生産されている。アルゼンチンでも、現地の冷蔵庫メーカー、サイアム社によってライセンス生産された。
それぞれのブランドに合わせてインテリアは仕立てられ、ふんだんなウッドやクロス、レザーなどで、当時のBMCの魅力が醸し出されている。イタリアンなスタイリングとのマリアージュも好ましい。
重心の位置は高いものの、乗り心地に優れ運転は楽しい。アップデート後のモデルはトレッドが広がり、強化されたサスペンションのおかげで、安定性も増している。
オーナーの意見を聞いてみる
「BMCのファリーナ・シリーズは、14歳の頃から自分の一部でした」。と話すのは、今回のウーズレー15/60のオーナー、ジェラルド・フォスター氏だ。
「当時ニュージーランドに住んでおり、父はアーモンド・グリーンのライレー4/72を所有していました。1980年に自分が初めて買ったクルマも、4/72なんです。今は兄が世話をしてくれていますが」
「姉たちもライレーの他に、オースチン・ケンブリッジ MkIIやモーリス・オックスフォードに乗っていたんですよ。このクルマは、自分では初めてのウーズレー。12年前に散歩していて発見し、オーナーと仲良くなり、2年前に譲ってもらっています」
「長い間ガレージ保管されていて、走行距離は10万7000kmと、年式を考えれば驚くほど短いんです。すべてがオリジナルで、初期の仕様が可能な限り保たれています」
「運転しやすく快適ですね。大きなサンバイザーは、新車時からのもののようです。最近は忙しくて余り乗れていませんが、リタイア後はたっぷり時間を割きたいですね」
英国で掘り出し物を発見
MGマグネット MkIII(英国仕様)
登録:1960年式 走行:6万9200km 価格:1万750ポンド(約209万円)
生産数の少なかった、MGマグネット MkIII。初期型で、1960年1月にロンドンのディーラーで販売されている。慣性リール式のシートベルトと、ステンレス製マフラーを除いて、ラジオモービル社製のステレオまで基本的にオリジナル。
インテリアは、アイランド・グリーン。タイヤとスターターモーター、バッテリーは交換済み。過去の履歴を遡ると、走行距離の改ざんもないようだ。
ウーズレー16/60(英国仕様)
登録:1969年式 走行:14万4800km 価格:8495ポンド(約166万円)
3速ATが載った後期型のウーズレー16/60。レッド・レザーとウォールナット・パネルの内装は、かなり状態が良い様子。販売店は、ガレージでの保管期間が長いためか、シャシーの状態も良好だと説明し、整備履歴のファイルが付属する。
オルタネーターと、リアのシートベルトが追加されている。お値段も含めて、かなり魅力的な1台に思える。
この続きは、BMCファリーナ・シリーズ UK版中古車ガイド(2)にて。
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みんなのコメント
だから、この「ファリナ・スタイル」にはアメリカで車を売りたいBMC首脳の悲願が強烈に表れています。高くそびえるテールフィンも、凝った塗り分けのデュオトーンも、全てはアメリカでウケたいがため。実際、この4気筒版のBシリーズに先駆けて、6気筒を搭載するCシリーズがデビューしていました。
しかしデトロイトの作り出す流行は、そんなBMCをあっさりと置いて行きます。Cシリーズがデビューした1950年代末をピークにテールフィンの流行は去り、このBシリーズはデビューした時点ですでに時代遅れの車になっていたのです。