■オープンカー乗りはいつ屋根を開ける? 頻度は?
オープンカーは、ルーフ付きのクルマとは違う独特の開放感と優越感が味わえる贅沢なクルマだといわれており、クルマ好きなら一度は乗ってみたいと思うでしょう。
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しかしこのオープンカーのルーフは、実際はどれくらいの頻度で開け閉めしているのでしょうか。
実際のオーナーに、オープンカーを所有するうえでのメリットやデメリットなどについて聞いてみました。
アルファロメオ「スパイダー」にお乗りのFさん(50代・男性)は、人とは違う個性を求めた結果だと教えてくれました。
「安全性や快適性を考えていった結果、最近はみんな似たようなクルマばかりになった気がします。
古い考えかも知れませんが、クルマは自分の個性や嗜好を反映させるものだと思っており、ほかの人と一緒はイヤだったことから、誰もが憧れるけど現実に乗らないオープンカーをあえて所有したくなったのです」
たいていのオープンカーは2シーターだったり、トランクも狭かったりと実用性が乏しい傾向にあります。その1台ですべてを済ませることは可能なのでしょうか。
「そこは完全に割り切りです。2シーターなので私のほかにもう1人しか乗れませんし、トランクも大きくないのであまり荷物は積めません。
家族がいれば別ですが、大勢で出かける機会は年に数回程度ということもあり、荷物だってそんなに積む機会も多くないし、乗るたびに独特の開放感が得られるだけでも十分魅力的です。
運転中は前を見ているので周囲の景色はあまり味わえませんが、ルーフを開けて走ると季節ごとの風やその土地ならでは匂いがダイレクトに伝わってくるのもオープンカーの醍醐味でしょう」
Fさんは、カッコいいイタリア製のオープンカーに負けないスマートな振る舞いを意識して、スピードを出したり無理な車線変更といった無謀な運転はしにくくなる自制効果も大きいとコメントしています。
オープンカーに乗っている女性は、男性とはまた違う意見を持っているようです。
フォルクスワーゲン「ザ・ビートル・カブリオレ」に乗っているMさん(30代・女性)は、実用性よりもそのスタイルに惚れ込んで購入したそうです。
「見た瞬間に一目惚れしてしまい、性能よりもルックスで選びました。排気量は小さいですが、スポーティに走るより海沿いなどをゆっくり走りたかったので不満はないです」
見た目第一主義を貫いた結果、ザ・ビートル・カブリオレを選んだということですが、確かにオシャレな街とオープンカーの組み合わせはファッション上級者のようなセンスの良さを感じます。
「オープンカーの良いところは、やはり開放感です。夜はあまりルーフを開けませんが、昼間はできる限り開けるようにしています。
高速道路やトンネルではルーフを閉めないと風で髪の毛が乱れたり排気ガスまみれになってしまいますが、晴れた日の一般道なら冬でも意外に快適です。何より、どこに停めてもサマになるというか、要するに“映える”ところが気に入っています」
意外にも最近のオープンカー乗りはルーフを極力開ける傾向にあるようです。その最大の理由は、オープンカーへの抵抗が少なくなったこともありますが、やはりSNS映えも大きいといいます。
マツダ「ロードスター(NC)」にお乗りのSさん(30代・男性)。ロードスターはサイズも手頃で扱いやすく、1人で乗っていても笑顔になれるそうです。
「せっかくのオープンカーですから、なるべくルーフを開けるようにしています。ソフトトップの場合、閉めていると後方視界があまり良くないというのもありますが。最近は長引く自粛生活で遠出もしにくいので、代わりにルーフを開けて近場で我慢しています。
オープンカーは、普通の屋根付きクルマにはないスペシャル感が味わえるのがいいところです。荷物が積めなくて不便だったりしますが、そこは考えて積めるようなものを買いに行くようにしています。それを超越した所有する喜びがあります」
オープンエアの非日常的な開放感を味わえるのがオープンカーの最大の魅力だといえます。その一方で、オープンカーならではの注意点もあるとSさんはいいます。
「雨が強い日や雪などは、耐候性を考えて乗らないようにしています。また、1度だけソフトトップを切り裂かれる車上荒らしに遭ったことがあります。盗まれるようなものを置いてなかったので被害は最小限でしたけれど、それ以来コインパーキングよりも建物のパーキングに駐車するようにしています」
■オープンカーには名車が数多く存在
過去を振り返れば、オープンカーには名車が多いといわれています。
ホンダ創立50周年を記念した「S2000」はいまでも中古車として人気ですし、ミッドシップのオープンカーだったトヨタ「MR-S」やコンパクトハッチにオープンの楽しさを加えた日産「マーチカブリオレ」、FRスポーツクーペに電動格納式ハードトップを備えた日産「シルビアヴァリエッタ」、日本のハイソカーを代表する「ソアラ」の最終モデルなど、現在でも魅力的なモデルが多いです。
さらに、運転席上部のルーフ部分のみ取り外してできるタルガトップやTバールーフモデルなども加えると、じつは多くのオープンカーモデルが存在していました。
現在では、国産オープンカーは減少の一途をたどっていますが、そのなかでもパッと思いつくのはやはりマツダ「ロードスター」です。
世界的な人気を誇るオープンスポーツカーの代表格のロードスターは、現行モデルは2015年に登場した4代目(ND型)。
2016年にはクーペスタイルとオープンエアが楽しめるリトラクタブルハードトップの「ロードスターRF」も加わり、高い認知度とブランド力を誇っています。
さらに、ホンダ「S660」とダイハツ「コペン」の軽スポーツカーが存在。S660は2022年3月をもって生産終了することになりましたが、両車は趣味性の高いクルマでありながら軽自動車なので維持費も安いところも魅力でしょう。
またレクサスは、ラグジュアリークーペの「LC」にコンバーチブルを設定しました。優雅で美しいシルエットというLCの特徴を活かしつつ、5リッターV型8気筒エンジンのパワフルな走りをオープンで楽しむことができます。
オープンカーは単純にルーフをカットするだけでなく、内部に補強が必要なことからベース車両に大幅な加工を施す必要があり、どうしても高価になります。
ベース車両との価格差は60万円から70万円程度ですが、現在の安全基準やエアコンなどの快適装備が少なかった1950年代・1960年代はオープンカーも多かったといわれています。
当時はいま以上にクルマがステータスの象徴であり、さらに付加価値が付いた贅沢なモデルとしてオープンカーが存在していました。
また、欧米諸国の人にとって「陽射しは最高の贅沢」という考えが根強くあり、クルマでも日差しを味わいながら走れるオープンカーは贅沢なモデルという考え方が定着しており、日本に輸入される車種にもオープンモデルが用意されるケースも多いです。
ちなみに、オープンカーにはさまざまな呼び方があり、フランスやドイツではカブリオレ、アメリカではコンバーチブル、イタリアではスパイダーなどと呼ばれています。
※ ※ ※
オープンカー最大の魅力は、「オープンカーという趣味性の強いクルマを所有している喜び」ということでしょう。
夏は暑く冬は寒く、荷物が載せられないので買い物へ行くのも躊躇することはありますが、それ以上に「オープンだから」で笑って許せる楽しさがそこにはあります。
クルマの電動化が進み、排気ガスがきれいになっていけば、もっとオープンカーの楽しさが味わえるはずです。
オープンタイプの手頃なピュアEVが登場したら意外に人気が高まるかも知れません。
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