次世代型ミライのコンセプト
text&photo: Yasuhiro Ohto(大音安弘)東京モーターショー2019のメガウェブ会場で開催される「フューチャー・エキスポ」の目玉の1とつとなるのが、トヨタの「MIRAI concept(ミライ・コンセプト)」だ。
その名が示すように、2014年12月に発売した世界初の量産車となるセダンタイプの燃料電池車(FCV)の第2世代となるモデルのコンセプトだが、すでに開発は最終段階まで進んでおり、2020年末の発売が予告されている。
スポーツセダンへと転身
現行型ミライ同様に、4ドアセダンである点は同様だが、そのスタイルは、かなりスタイリッシュでスポーティなものとなる。
未来的かつFCVであることを強くアピールした現行型と異なり、新型コンセプトでは、走りの良さを予感させるダイナミックさとエモーショナルな美しさを併せ持つスタイリングを追求したという。
つまり未来を予感させるエコカーというこれまでの概念を打ち破り、クルマ好きを魅了するエコ・スポーツセダンとなっているのだ。もちろんスタイリングは、単なるコンセプト向けということはなく、ほぼ市販仕様に近いものだという点は驚きだ。
FCVとして初のTNGA
プラットフォームは、キャリーオーバーではなく一新され、ミライとして初のTNGA開発となる。トヨタ・クラウンやレクサスLSなどの大型FR車向けの「GA-Lプラットフォーム」をベースに開発されているというが、エンジン車とFCVの構造が大きく異なるため、ほぼ専用設計に近いという。
ボディサイズは、全長4975mm×全幅1885mm×全高1470mm。ホイールベースは2920mmとされ、現行型と比べ、全長を+85mm、ホイールベースを+140mm拡大。さらに全高を-65mmと低くしたことで、伸びやかなプロポーションと走りを予感させるダイナミックなスタイリングを両立させている。
足元には、20インチの大径タイヤが奢られている。美しくも力強さを印象付けるブルーの外装色は、新規開発された「フォースブルーマルチプルレイヤーズ」で、複層行程により鮮やかさと深み感が強調されているもので、トヨタでもエコカーの象徴として取り入れるブルーだが、単なるエコカーではなく、スポーツセダンであることも強調。まさにミライ・コンセプトを象徴するブルーとなっている。
インテリアもスポーティ
ドライバー包み込むようなダッシュボードには、デジタルメーターに加え、12.3インチワイドのインフォテインメント・モニターを装備。ミライの特徴的なアイテムのひとつ、発電で発生した水を強制排出する「H2Oボタン」も継承される。
シフトレバーは、プリウス同様のコンパクトなセレクターレバー式のものを採用。センターコンソールには、ドリンクホルダーや非接触充電システムなどが装備される。
フロントシートは、ホールド性にも優れるスポーティなデザインのものを採用。現行型が4名乗車であるのに対して、5名乗車仕様となる点もポイント。4ドアクーペ・スタイルだが、後席も十分快適な居住スペースが確保されている。
パワーユニットのFCシステムも一新
FCバス「SORA」などにも流用されるミライのFCシステムだが、こちらも全てを一新することで、FCVとしての性能を大幅向上させるとともに、水素搭載量の拡大などにより、航続距離を従来比の約130%とすることを目標に開発を進めているという。
詳しいスペックは、今後の発表ということだが、モーター性能なども進化しており、これまでにないエコ・スポーツモデルとしても注目されそうだ。
次世代も世界に羽ばたく
第2世代のミライの姿を示す「ミライ・コンセプト」は、2020年後半の発売を予定。現行型同様に、北米や欧州にも同タイミングでの投入を目指している。
FCVだから、購入してもらうのではなく、環境性能が高いスポーツスペシャルティとして、世界中のクルマ好きへと強くアピールされる新世代ミライ。スポーティかつスペシャリティなキャラクターを強調し、敢えて燃料電池の存在を薄めていることこそ最大の特徴だが、クルマとしてFCVが魅力的な選択であると世に知らしめることで、トヨタが本気でFCVの普及拡大を目指していくという強い意志の表れでもあるのだ。
FCVのワクワクを巧み表現した「ミライ・コンセプト」は、東京モーターショーの会場でも、多くの来場者から熱い視線が注がれるに違いない。
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