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ロンドンからメキシコへ辿り着ける? 1970年ワールドカップ・ラリー挑戦マシン 後編

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ロンドンからメキシコへ辿り着ける? 1970年ワールドカップ・ラリー挑戦マシン 後編

ミニ1275 GT(1971年)

オーナー:ジョン・カドワラダー氏

【画像】ロンドン・シドニー・マラソンラリー イベント参加マシン 復刻版エスコートMk1とMk2も 全71枚

1970年のロンドン・メキシコ・マラソンラリーへ挑んだ唯一のミニが、1275 GT。四角いフロントマスクに変更されたモデルだ。ワークス体制だったものの、当時のブリティッシュ・モーター・コーポレーションは、完走を期待していなかったという。

それでも、欧州のステージをリードすることで、1275 GTの速さを証明できると考えたようだ。実際、その後に廃版となるクーパーSより遅かったため、販売上重要だったのだろう。

そんなミニ1275 GTだが、ユーゴスラビアでエンジンのピストンを飛ばしてしまう。欧州でも、速さを充分にはアピールできなかった。

今回イベントに参加したクルマは、細部まで正確に再現されたレプリカ。オリジナルの所有者は、この手のミーティングに参加しない人らしい。

「ワールドカップ・ラリーでの、ブリティッシュ・レイランドによる幅広い挑戦を披露したいと考えて参加しました。トライアンフとマキシ、そしてミニは1台だけでね」。とオーナーのジョン・カドワラダー氏が話す。

ラリーへの情熱を持つ彼は、見習い技術者として働いた経験を持っている。1968年のロンドン・シドニー・マラソンラリーにも参戦したチームで。

現在のマラソンラリーへの関心は、そこが原点だという。「最初のクルマもミニでした。ワールドカップ・ラリーに挑んだレプリカを仕上げることは、自分にとって自然な流れでした」

シトロエンDS21(1970年)

オーナー:アンドレ・ミドル氏

シトロエンは、ロンドン・メキシコ・マラソンラリーで7台のDS21をサポートをしている。技術面に加えて、資金面でも。DS21は、それ以前からラリーでは一定の成果を残していた。1966年のラリー・モンテカルロでの勝利は、その代表といえるだろう。

ロンドン・メキシコでは、ボブ・ネイレット氏とジャック・テラモルシ氏というペアがドライブするDS21の12号車が、ボリビアへ入った時点で6位を走行していた。だが、その後にエンジンが故障しリタイアしている。

マラソンラリーへ出場したDS21は、信頼性を証明する目的で基本的にはノーマル状態が保たれていた。そのためか、壊れた出場車をフランスへ戻す必要はないと考えたらしい。南米大陸に残されたDS21の行方は、不明になっていた。

2005年、現オーナーのアンドレ・ミドル氏が愛車のシトロエンでボリビアをドライブしていると、地元の男性が声をかけてきたという。彼の話では、自宅の庭に古いフランス車が停まっているとのこと。実際に見に行くと、12号車そのものだった。

その彼は、現地でシトロエンの輸入業者をしていた人物の息子。父親が、ラリーで壊れたDS21を買い取ったらしい。

ミドルが買い取るまでに、何年もの交渉が必要だった。2017年に話がまとまり、現地でクルマをレストアし、友人を招いてメキシコシティまで走らせたそうだ。ロンドン・メキシコ・マラソンラリーを完走させるため。

「メキシコシティから英国へクルマを戻すことは、少なくとも自分にとって、マラソンラリーの最後のステップを意味しました。今は買い手を募集中です」

フォード・エスコート・メキシコ(1973年)

オーナー:ジェレミー・タイソン氏

ロンドン・メキシコ・マラソンラリーでの勝利は、フォード・エスコート Mk1をラリーマシンとしての伝説に押し上げた。販売にも直結し、最も人気の高い記念仕様、エスコート・メキシコの誕生へも繋がった。

近年のモータースポーツを想起させる特別仕様車とは異なり、エスコート・メキシコはボディにステッカーを貼り、ホイールが交換されただけのクルマではない。ボンネットの内側には、勝利へ導いた1599ccのケント・エンジンが納まっている。

唯一、市販車ではエスコート・メキシコのみに搭載されたユニットだ。専用サスペンションも組まれている。少々のステッカーも。その結果、手頃な価格の高性能モデルとして仕上がった。

現オーナーのジェレミー・タイソン氏は、このブルーのエスコート・メキシコを31年間も所有している。資金がないなか、オークションで1010ポンドで競り落としたらしい。

「クルマは腐っていました。オークションではクルマは自走せず、人が押していましたね」。と振り返るタイソンだが、ラリーを愛する気持ちで丁寧にレストアを進めた。オリジナルのホワイトのストライプは、好みではなかったという。

「昔からフォード・ファンで、趣味として購入しました。でも、結果的に楽しさが止まることはなく、生涯の友人のような存在です」

トライアンフ2.5 PI(1970年)

オーナー:デビッド・ピアソン氏

ロンドン・メキシコ・マラソンラリーは、ワークスチームだけでなく、多くのプライベーターも参戦した。プジョーで挑んだアルゼンチンのチームや、トライデントという、今はなきスポーツカーで走った人もいる。

トライアンフ2.5 PI(1970年)とデビッド・ピアソン氏

そこには、ボビー・ブキャナン・マイケルソンという裕福な英国人もいた。トライアンフ2.5 PIのワークスマシンを用意してもらい、コ・ドライバーにはブリティッシュ・レイランドのワークスドライバー、ロイ・フィドラーを指名したらしい。

だが、マイケルソンのクルマは欧州を最後まで横断できなかった。リア・サスペンションのスプリングがイタリアでは破損。燃料インジェクションも不調で、結果的にリタイアしている。

現オーナーのデビッド・ピアソンは13年前にその2.5 PIを購入し、レストアで当時の姿を蘇らせた。走行距離は、わずか1万6000kmを過ぎた程度だという。

「1970年のわたしは小学生で、ノートに2.5 PIのいたずら書きをしていました。まさか、本物を発見できるとは」。と振り返るピアソンだが、クルマは何年も外に放置された状態だった。

実際の状態は見た目ほど悪くなく、ルーフパネルの交換程度でボディは済んだという。そんな彼は現在、知人の2.5 PIのレストアを手伝っている。

それは、ワークスカーとしてテストに用いられ、多くのドライバーによって運転された過去を持つ1台。ロンドン・メキシコでは、プログラムブックの表紙にも登場したというから、レストアしないわけにはいかない。

MGB(1968年)

オーナー:ジョン・ワトソン氏、グラハム・ディックス氏、マイク・バークレイ氏

様々なクルマがエントリーしてきたマラソンラリーだが、ジャン・デントン氏がドライブしたMGBも好成績を残した。ロンドン・メキシコではないが、ロンドン・シドニー・マラソンラリーを完走した唯一の2シーター・モデルだ。

そのラリーでは、MGカークラブのオーストラリア支部も支援。ラジエーター交換を途中で実施したという。

しかし完走したMGBの行方は、その後わかっていなかった。2015年、ガレージのコレクションを処分しているという、とある英国人からMGカークラブがEメールを受け取るまでは。

一見するとノーマルで、状態の良くないパープルに塗られたMGBは、調査でデントンがドライブしたクルマだと判明。カークラブのメンバーはレストアを決意するものの、当時の写真だけでは情報が足りなかった。

そこで当時コ・ドライバーを努めた、トム・ボイス氏へ協力を仰いた。「トムは英国南部、ギルフォードの介護施設で暮らしていました。沢山の情報を提供してくれましたが、残念ながら完成前に亡くなりました」。と、ジョン・ワトソン氏が振り返る。

トムは、ガソリンが良質とはいえない地域でMGBを走らせ続けるため、多くの努力を投じていた。結果として標準のガソリンタンクの他に、トランク内にも予備タンクを載せ、さらに携行缶を2本積んだ姿が蘇った。

BBCのラジオ4を聞くための、長いラジオアンテナも特徴。これは、ドライバーを務めたデントンの希望だったそうだ。

カークラブのボランティア・メンバーによって復元されたMGBは、2018年に開かれたロンドン・メキシコ・マラソンラリーの50周年イベントへ参加。現在もカークラブによって大切に維持され、2022年の今回も登場するに至った。

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