この記事をまとめると
■2023年の全日本ラリー選手の第2戦「新城ラリー」が開催
スバルとトヨタがニューマシンを投入! 2023年の全日本ラリー「JN1クラス」が激戦の予感
■トヨタGAZOOレーシングがニューマシン、GRヤリスRally2を投入した
■国内規定のニューマシン「GRヤリスGR4 DAT」も参戦
「GRヤリスRally2」がレースデビュー!
2023年の全日本ラリー選手権は早くも第2戦を迎え、3月3日~5日、愛知県新城市を舞台に「新城ラリー」が開催。既報のとおり、2022年のJN1クラスチャンピオン、ヘイッキ・コバライネンがシュコダ・ファビアR5を武器に計11箇所中10箇所のSSでベストタイムをマーク、圧倒的なパフォーマンスでシーズン初優勝を獲得したが、今大会でもっとも注目を集めていたのが、トヨタGAZOOレーシングが投入したニューマシン、GRヤリスRally2だと言えるだろう。
同モデルは文字どおり、GRヤリスをベースに国際規定に合わせて開発されているRally2仕様車で、トヨタGAZOOレーシングWRTが開発を実施。開発の一環としてトヨタGAZOOレーシングの国内チームが全日本ラリー選手権にGRヤリスRally2を投入することになり、この新城ラリーでGRヤリスRally2が実戦にデビューした。
FIAのホモロゲーションを取得する前のマシンが競技に参戦することは極めて珍しいが、もともとトヨタは2008年のニュルブルクリンク24時間レースにコンセプトカーの「LF-A」、2016年の同大会に「C-HR」を投入。近年はスーパー耐久に水素エンジンを搭載したカローラスポーツ「カローラH2コンセプト」やカーボンニュートラル燃料に対応したGR86「GR86 CNFコンセプト」を投入するなど、発売前のテストカーで競技に参戦してきた下地を持つ。
加えて2023年のJN1クラスは国際規定のRally2およびR5、国内規定のJP4、そして、国際公認の取得を前提とするモデルも参戦可能となったことから、GRヤリスRally2が全日本ラリー選手権に登場することになったのである。
ドライビングを担当するのは、GRヤリスの国内規定モデルを武器に2021年のチャンピオンに輝いている勝田範彦。今大会はFIA燃料を使用したことでJN1クラスではなく、オープンクラスのJN1-OPクラスへの参戦となったが、勝田は序盤からGRヤリスRally2を武器に順調な走りを見せていた。
「事前に少しだけテストをしましたが、まだ左ハンドルに慣れていないし、同じGRヤリスとはいえ、昨年まで乗っていた国内規定モデルと同じ走らせ方をするとタイムが出ないので、違うアプローチにトライしています。セッティングに関しても少しの変化で挙動が変わるのでシビアなマシンですね」と語りながらも勝田は総合2番手タイムを連発したほか、総合順位でも2番手でレグ1を終えていた。
残念ながら勝田はウエットに変貌したレグ2のSS10で水たまりに足もとをすくわれ、痛恨のコースアウトによりリタイヤを喫したが、マシンに慣れないなか、デビュー戦で好タイムを連発しただけに、勝田にとって今後に期待が持てる一戦だったのではないだろうか?
2021年にスバルWRXからGRヤリスに乗り換えた勝田は、しばらくドライビングに苦労していたが、ラウンドを重ねるごとにGRヤリスの軽さを活かしたドライビングに対応してみせただけに、勝田のドライビングおよびGRヤリスRally2の熟成が進めばトップ争いを左右するに違いない。
国内規定のニューマシン「GRヤリスGR4 DAT」も
一方、トヨタGAZOOレーシングは、国際規定のGRヤリスRally2のほか、国内規定のニューマシン「GRヤリスGR4 DAT」をJN1クラスに投入。同モデルは文字どおり、スポーツATのDATを搭載した2ペダルのGRヤリスで、眞貝知志がドライビングを担当していた。
レギュレーションに合わせて国際公認のロールゲージを装着したほか、競技専用の安全燃料タンクを搭載。それに合わせて足まわりの最適化などが行われていたが、基本的にこの2ペダルのDATモデルもJN2クラスに参戦するMTのGRヤリスと似たようなスペックを持つ。つまり、JN1クラスに参戦しているとはいえ、GRヤリスGR4 DATのライバルはJN2クラスに参戦するMTのGRヤリスと言っていい。
「サーキットで一度テストを行いましたが、林道を走るのは新城ラリーが初めてです。初日は予想どおり、改善すべきところが出てきました」と眞貝が語るように、GRヤリスDATはレグ1で苦戦を強いられたが、「DATの部分でいまできることは対処しましたし、足まわりのセットアップも試せたので、少しずつ良くなってきました」と語るように、レグ2で眞貝+GRヤリスDATは尻上がりにペースアップ。最終的に眞貝は総合6位でフィニッシュしたほか、SS11ではGRヤリスのMTモデルを抑えて、総合4番手タイムをマークするなど好タイムを記録していた。
眞貝のドライビングしたGRヤリスDATはギヤボックス自体はもちろん、競技専用の燃料タンクの搭載でMTモデルより車両重量が重くなっているが、それでもMTモデルと遜色ないタイムをマークしたことは賞賛に値する。
近年はFIA-GT4などレーシングカーと言えども2ペダルの競技車両が増えていることから、eスポーツ出身のドライバーも少なくはないが、このDATモデルがラリー競技でも定着すれば、ラリーシーンにおいてもeスポーツ出身のドライバーが活躍できるようになる可能性が高い。
またDATモデルが高価なドグミッションを組み込んだMTモデルを凌ぐことができるようになれば、リーズナブルにハイレベルのマシンでラリー競技に出場可能になる。つまり、眞貝がステアリングを握るGRヤリスDATは、ラリー競技において多様な可能性をもつだけに、勝田がドライビングするGRヤリスRally2とともに注目したい。
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