2021年3月28日に行われたF1開幕戦バーレーンGP決勝は、圧倒的に有利と見られていたレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが2位に敗れる結果となった。なぜ、フェルスタッペンは勝てなかったのか。見事に9位に入賞した角田裕毅の走りも含め、ホンダ勢の戦いを振り返ってみよう。なお、バーレーンGPでのフェルスタッペンの2位表彰台は「ホンダ通算200回目の表彰台」となった。
フェルスタッペンひとりでメルセデス2台と戦う難しさ
予選でポールポジションを獲得したフェルスタッペンにとっては残念な結果となったが、一方で手応えを感じることのできたレースとなった。
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レースはフォーメーションラップ中にセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)のマシンがストップしたことで、もう1周フォーメーションラップを追加されてスタート。さらにオープニングラップでクラッシュが発生してセーフティカーが出動する波乱の幕開けとなった。
フェルスタッペンはそんな中で順調に首位を守ったが、原因不明のリアのグリップ不足もあって、なかなかメルセデスを引き離せず、2番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)にアンダーカットを許し、トップの座を奪われてしまう。
メルセデスの2台が異なる戦略でフェルスタッペンに揺さぶりをかける中、フェルスタッペンは3スティント目で逆転を狙う戦略を選択。残り17周までスティントを伸ばして、2度目のストップでハードタイヤに交換すると、トップのハミルトンを猛追する。
そして残り4周でついにハミルトンに追いつき、ターン4でオーバーテイクすることに成功。しかし、コーナー出口で膨らんでしまいコース外走行となったため、その直後に順位を譲り、もう一度チャンスをうかがうが、もうパスする力は残っていなかった。
フェルスタッペンのチームメイトのセルジオ・ペレスは、フォーメーションラップ中にマシンの電源がシャットダウンし、ピットレーンからスタートする展開に。何事もなければ11番手だったスタート位置は最後尾に下がったものの、そこから追い上げを開始してオーバーテイクを繰り返し、順位を回復。39周目に3度目となる最後のピットストップでタイヤをハードからミディアムに交換すると、ランス・ストロール(アストンマーティン)、ダニエル・リカルド(マクラーレン)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)と次々にオーバーテイクし、5位入賞を果たした。追い上げによる勝負強さを見せた一方で、「チームで戦う」という意味においてあまり機能しなかった。
F1デビュー戦を迎えた角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は、スタートでポジションを下げたものの、オーバーテイクを披露しながら徐々に順位を回復。15周目にミディアムタイヤからハードに、33周目に2度目のタイヤ交換で再びハードタイヤを装着すると、最終ラップまで攻め続けて見事に9位でフィニッシュしている。
予選5番手と好調な走りを見せていたアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーは、セーフティカー明けのリスタートでリカルドと接触。これによりマシンにダメージを受けたガスリーは、ウイングを交換するもののペースが上がらず、残り4周時点でリタイアとなった。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターのコメント
フェルスタッペンについて「ポールポジションからスタートしたものの、残念ながら勝利を逃し2位表彰台獲得に終わりました。勝利を逃したという悔しい思いの一方で、ポールポジション獲得に加え、レースでも終始トップ争いを繰り広げるパフォーマンスを見せられたことをポジティブに捉えています。レースでは、戦略の違いによりハミルトン選手を追いかける展開になり、最後は1秒差以内まで追い詰めたものの、惜しくも届かず2位となりました」
ペレスについて「フォーメーションラップ中の電源シャットダウンによりマシンがコース上でストップ。幸運にも電源が復活し、ピットレーンからスタートすることができました。最後尾からの追い上げにもかかわらず、素晴らしい走りで5位まで順位を上げてフィニッシュしています。今日発生した問題については、車体・パワーユニット合わせてこの後解析を行い、再発防止に向けて対応をしていきます」
角田裕毅について「デビュー戦でいくつものオーバーテイクを見せて、9位入賞を果たしました。うまくタイヤをマネージし、いいレースをしてくれたと思います。ガスリー選手については序盤の接触が影響し、残念ながら終始後方でのレースになりましたが、アルファタウリの2台は週末を通して速さを見せていました。ホームグランプリとなる次戦もいい走りを見せてくれることを期待しています」
「今回のレースでのデータを入念に解析し、パワーユニットの最適化をすると同時に、問題点や懸案に対しての対応を進め、次戦に臨みたいと思います」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
「大きな前進を実感できたのは事実ですが、勝利を手に入れられなかったのは残念です。レース中はドライブしながらいくつかの問題に対処しなければならなかったので、しっかりと調査していきますが、レースウイークを通じて、ポジティブな点は多くありました。メルセデスはアンダーカットしてきましたが、僕らも自分たちの戦略を貫き、それがうまくいったと思います。問題は、今のF1マシンはオーバーテイクしにくいことで、一度コース上で前に立ってしまえば、かなり有利になります。ルイスに接近してすぐにパスしましたが、ターン4でわずかに膨らんでしまったので、ポジションを返しました。しかし、そこからプレッシャーをかけていけるほどタイヤの状態はよくありませんでした。僕らは、ポジティブな面を見ていく必要があります。メルセデスに勝負を挑むことができたことは素晴らしく、こうした展開でシーズンをスタートできて、ポイント獲得を果たせたこともいいことです。ここでホンダの200回目の表彰台を決められてよかったです」
セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
「レースができなくなる可能性もあったことを考えれば、結果には満足していますし、ペースがよく、ポテンシャルも見えたので、ポジティブな面が多くありました。フォーメーションラップでは、突然マシンがシャットダウンしてしまいました。マシンを降りる寸前でしたが、そのままとどまったところで再び動き出してくれたのは、奇跡的だと思います。これによってピットレーンスタートになってしまったのは痛かったのですが、追い上げて完走できたことはうれしいですし、このマシンで全開走行をする経験が積めたのでよかったです。結果が残せたことが重要であり、もちろんマックスが勝利できなかったことは残念ですが、その日はきっとくるはずですし、僕らならやれると思います。分析が必要なデータがたくさんあるので、すべてを理解して、次のイモラにはさらに強くなって戻ってきたいと思います」
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
「初めてのグランプリでポイントを獲得できてうれしいです。今日のレースでマシンパフォーマンスの素晴らしさを示せたと思います。1周目で慎重になりすぎてポジションをいくつか下げてしまったのは残念で、レース中は必死で挽回を目指しました。このバーレーンでは多くを学ぶことができてよかったですし、これをもとにイモラへ向かいたいと思います。レース中は力強いオーバーテイクをすることができました。僕にとっては、フェルナンド(アロンソ)をパスしたのが熱く感じた瞬間で、幼いころから見てきたスーパースターだったので、とてもエキサイトしました。今日のパフォーマンスを誇りに思いますし、次もどのくらいやれるのか楽しみです」
ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
「今週末は最初からずっと強さを発揮できていたので、とてもがっかりしています。5番手スタートという好条件でしたが、1周目のダニエル(リカルド)との接触で僕のレースはほぼ終わってしまいました。フロントウイングを失い、フロアにもダメージを負ったので、1周目からかなり後方になってしまい、勝負権を失ってしまいました。レースウイークを通じていいペースがあったので、本当に残念です。成果を得ることはできませんでしたが、今週末は多くのポジティブな面があったので、イモラでもそれを発揮できればと思います」
タイヤを供給するピレリは、バーレーンGPについて「決勝レース当日の気温は低く21度、路面温度は約25度で、突風もありました。トップ5に2人のスリーストッパーが含まれるなど、さまざまな戦略が見られましたが、異なる2ストップ戦略を実行したハミルトンとフェルスタッペンによる優勝争いは見応えのある緊迫した戦略的タイヤバトルになりました」と振り返っている。
次戦第2戦エミリア・ロマーニャGPはイタリア・イモラサーキットで4月16日に開幕、4月18日に決勝レースが行われる。
2021年F1第1戦バーレーンGP決勝 結果
1位 44 L.ハミルトン(メルセデス) 56周
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) +0.745s
3位 77 V.ボッタス(メルセデス) +37.383s
4位 4 L.ノリス(マクラーレン・メルセデス) +46.466s
5位 11 S.ペレス(レッドブル・ホンダ)+52.047s
6位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +59.090s
7位 3 D.リカルド(マクラーレン・メルセデス) +66.004s
8位 55 C.サインツ(フェラーリ)+67.100s
9位 22 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ) +85.692s
10位 18 L.ストロール(アストンマーティン・メルセデス) +86.713s
リタイア 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)
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みんなのコメント
これに尽きると思うけどね。