モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツweb。両者がコラボしてお届けするweb版『Racing on』がスタートしました。
web版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。第4回のテーマは、ル・マン総合優勝を狙い開発されたホンダNSX GT1です。
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F1デビュー戦で9位獲得の角田裕毅の“先輩”は、あの総監督!?
かつてはずっとNAエンジンを搭載し、全日本GT選手権およびスーパーGTを戦っていたホンダNSX(2000年代中盤を除く)。
現在では、スーパーGT GT500のレギュレーションもあり、NSXはターボエンジンを積んでおり、その姿はもう違和感のないものになっているが、1990年代にもまだ現在に至るGTマシンの黎明期と言える時代にNSXはターボを搭載し、世界の頂点に挑戦したことがあった。そのマシンがNSX GT1だ。
NSXは1990年に市販車が登場して以降、目立ったレース活動をしないままだったが、1994年にホンダはポルシェ系プライベーターとして名を馳せていたクレマーレーシング、車両製作を担当したイギリスのTCPとタッグを組み、ル・マン24時間レースのGT2クラスに3台のNSXをエントリーさせた。
これが今日まで続くレーシングNSXのワークスとしての最初の1歩である。結果は3台ともにドライブシャフトに問題を抱えながらもなんとか完走。
次なる目標を総合優勝に定め、1995年に向けて当時ル・マンで総合優勝を狙えるクラスのひとつであったGT1クラスのマシンをNSXで製作する。
このNSX GT1の最大の特徴はエンジンだ。本来横置きだったエンジンを縦置きに変更し、ツインターボ化することで、最大出力600psオーバーというスペックを叩き出したエンジンだった。
縦置きのツインターボとしたのは、横置きだとコクピット側に熱を持つからという理由もあったという。ちなみにGT1仕様は2台つくられ、もう1台のGT1はNA仕様だった。
肝心の結果だが、本命だったはずのターボ仕様はたった7周目、“ル・マン24分”でリタイア。NA仕様もクラッシュの修復に時間を費やして、完走扱いとはならなかった。
トランスミッションの油温上昇によるシール部からのオイル漏れを解消できなかったことなど、最後までトラブルに悩まされながらの戦いとなった。
この惨敗の後、ル・マンの最高峰クラスにNSXが挑むことはなかった。だが、この経験が確実にその後の“レーシングNSX”開発の礎となったのだ。
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