去る2020年6月に国内仕様の詳細が発表されたレクサスLCコンバーチブル。2019年1月のデトロイトショーで限りなく市販上体に近いコンセプトモデルが発表されていた。
それに加えて何より世の中的にはそんなのどころじゃないというコロナ禍のタイミングもあってか、あまりクルマ好きの間で話題にはあがらないものの、日本車史上、ダントツでラグジュアリーなモデルの登場ということになる。
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まぁ厳密に言えば、先日の即位の礼でお披露目されたセンチュリーのオープンカーのような特殊架装ものもあるが、量産車においては歴史を振り返ってもこれ以上のものはない。
その日本車史上最もエレガントでラグジュアリーなLCコンバーチブルの魅力、価値観などについて考察していく。
文:渡辺敏史/写真:LEXUS、BMW、PORCHE、MASERATTI、ASTON MARTIN
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LCコンバーチブルに日本のライバルは見当たらない
LC500コンバーチブル:1500万円
レクサスのフラッグシップクーペのLCをベースにオープンにしたLC500コンバーチブルは日本車史上最もエレガント&ラグジュアリー
開発の方々はまるで別物という意識が強いかもしれないが、LCコンバーチブルはレクサスの歴史においては2代目SC、日本的には40系ソアラからの正統後継という見方もできる。
V8エンジンを搭載するFRで2+2のパッケージと、メカニカル面での共通項も多い。そういうスペシャリティクーペの系譜にあるという繋がり感は、プレミアムモデルにとっては大切なものだ。
LCコンバーチブルのライバルは日本メーカーには見当たらず、欧州のプレミアムブランドの銘柄が中心となる。
V8エンジン搭載のオープンということではSC430はLC500コンバーチブルの礎的存在だ。ただしエレガントさでは比較にならないレベルにまで進化
開発時にはその官能性に大いに刺激を受けたというマセラティ・グラントゥーリズモは、オープンモデルのグランカブリオを含めて2019年に生産終了している。
現行車種でいえばこれも開発時にベンチマークにしたというBMWの6シリーズ改め8シリーズのカブリオレ、そしてポルシェの911カブリオレというところになるだろうか。
いずれにも共通しているのは2+2のパッケージを採用していることだ。
実際は後席に座らない、或いは座れないとしても、荷物を放り込める利便性や余技・余裕としての椅子の存在が重要ということになる。
いってみれば粋のために洋服の裏地にこだわるような世界観だが、実際、このクラスの2シーターオープンはきな臭いスーパースポーツも多く、LCは後席のおかげでそれらとは一線を画していることを示してもいるわけだ。
LC500コンバーチブルは2+2の4シーターであることにこだわった。そのためハイブリッドもラインナップしていない。ゴージャスなインテリアにため息
メタルトップではなくあえて幌屋根を採用
LC500コンバーチブルはクーペのエクステリアを忠実に再現するために幌屋根を採用。これは軽量化にも大きく貢献
2代目SCはメタルトップのオープンシステムが売りとなっていたが、LCはオーソドックスな幌屋根を採用している。
理由は重量増を抑えるとともにAピラー角度や屋根格納部形状など、スタイリングへの影響が最小限に留められるだめだ。
幌屋根自体は4レイヤー構造で、耐候性や遮音性は欧州勢のライバルと遜色はない。開閉はボタン1つで全行程を15~16秒で終了、50km/h内であれば走行時の開閉も可能と、このスペックも8シリーズと同等だ。
電動のソフトトップはボタン操作ひとつで15~16秒で開閉を完了する。突然雨が降り出した時でも対処することができる
911はウインドディフレクターも電動化されているが、LCと8シリーズは開口面の大きさもあって、手動式となっている。
LCの外装はクーペより1色多い11色、幌屋根はブラックとタンの2色、内装は3色から選択できる。
とはいえ、911はより多くの選択肢があり、8シリーズにはユーザーの希望にこと細かに応じるオプションが用意されており……と、同クラスのライバルの動向をみるにちょっと寂しいのも事実。
内装も対外的な表現のひとつとなるオープンカーならなおのことだろう。
クーペにないLC500コンバーチブルの専用色がテレーンカーキマイカメタリック。茶系のオーカーというインテリアカラーとフィット
60台限定の特別仕様車はすでに完売
とはいえ、シートのステッチやベルトキャッチの加飾など、造作は見られることをきちんと意識して作られている。
象徴的なドアインナーのドレープトリムは、さすがにアルカンターラの耐水性、そしてホコリや日差しによる色飛びが懸念されるため、別素材に改められた。
ちなみにLCはコンバーチブルの発表当初、限定60台の特別仕様が用意されていた。ボディカラーは構造発色のストラクチュラルブルー、そして紺の幌に白/紺の内装と全てが専用の設えとなるそれは、クーペの既納ユーザー枠も一般枠もすでに完売となっている。
デビュー時に60台限定の特別仕様車として設定されたStructural Blue(ストラクチャラルブルー)はすでに完売している
特別仕様車の専用インテリアカラーとしてライムストーンが設定されている。ホワイトとブルーのコントラストの特別感がハンパない
5L、V8のみでハイブリッドの設定はなし
年次改良を重ねるLCは、今年、軽量化や操縦性の向上を狙って足回り部品を中心に細かな見直しが加えられた。コンバーチブルはその車台を基に更に要所にブレース&ガセットを加えて補強している。
搭載するパワートレインは2UR-GSE、つまり自然吸気の5L、V8で、クーペには用意される3.5L、V6ハイブリッドは設定されていない。
LC500コンバーチブルのトランクスペースは広くはないが、リアシートとトランクを複合で使用すれば、2人の旅行に行く荷物なら問題ないレベル
個人的には他にない個性という点で、ハイブリッドがあってもよかったのではとも思ったが、聞けば従来のバッテリースペースを幌の格納用に使っているため、2シーター化が必須になるという。確かにそれはLCのコンセプトに相反するところだ。
そして開発陣としては、ともあれ今や希少な自然吸気の大排気量マルチシリンダーを特等席で味わってもらいたいという想いもあったという。そのためにレゾネーターにも工夫が施されている。
最大のライバルがBMW8シリーズカブリオレ
LCコンバーチブルの走りはクーペに対して100kgの重量増加分が乗り心地の側にプラスに働いている。ズシッと地面に根を張った安心感がありながら、操舵に対してのカチッとした応答感はクーペと遜色ない。
不快な振動や捻れ感、ドラミングノイズなどオープン化の弊害は皆無で、クーペと同様、バネ下の残響もバネ上の不用な動きも抑えられ、ゆったり走ってもすっきりと感じられる乗り味を実現している。
ポルシェ911カレラカブリオレは動力性能にもこだわった2+2オープンで、GTというよりもスポーツカーに近い
もちろんハンドリングについては重量増加分の影響は現れてはいるものの、峠道を気持ちよく走るレベルでいえば大きな影響はない。
このドライブフィールをみるに、LCコンバーチブルの純然たるライバルはやはり8シリーズカブリオレになるだろう。
911カブリオレはスポーツ性がひとつ頭抜けるが、ADASを筆頭に両車と同等の装備に合わせていくと価格帯もそれなりに駆け上がる。
キャラクター的にLC500コンバーチブルに最も近いのはBMW8シリーズカブリオレ。GT的な走りもがっぷりよつの好勝負
マセラティやアストンマーティンの価値観と同列
LCを開発するにあたり大きな影響を受けたというマセラティグランツーリズモはクーペ、カブリオレとも2019年で生産終了となった
そんな相関関係の中で、LCコンバーチブルを選ぶ最大の理由は、開発陣の狙いどおり、自然吸気V8のサウンドやフィーリング、パワーの伸び感といった数値化されないところの魅力だろう。
スポーツカーとは一線を画するGT的な優雅さを売りにしながらも、最も心惹かれる魅力を放つのはやはりエンジンにある。
それこそマセラティやアストンマーティンのような価値観と同列にいる、LCコンバーチブルはそういう日本車だと思う。
エレガントさで言えば世界の並みいるライバルをも凌駕するアストンマーチン。LC500コンバーチブルはその価値観と同列にいる日本初のクルマだ
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