■進むプリウス離れ? 強すぎる同門ライバルたち
ハイブリッドカーの先駆けとして、国内外で高い人気を獲得し続けているトヨタ「プリウス」ですが、直近の販売台数が伸び悩んでいます。かつては他を寄せ付けない販売台数を誇ったプリウスは、なぜ苦戦を強いられるのでしょうか。
大ヒットから10年 トヨタは3代目「プリウス」の大量の使用済バッテリーをどう処理するのか?
2020年1月から6月の軽自動車をのぞく新車販売台数で、プリウスは3万6630台となりました。ランキングでは9位と決して悪い数字ではありませんが、前年比では52.1%となり、かつて首位を独占していた頃と比べればその数字の落ち込みは明らかです。
現行プリウスは、2015年に登場しています。発売当初は、「歌舞伎顔」と呼ばれるフロントマスクのデザインの不評などから販売が伸び悩みますが、2018年9月のマイナーチェンジで外観の意匠を変更。
これが功を奏して、2018年こそ首位を逃しますが、2019年には再び年間の販売台数でトップに返り咲きました。
しかし、2020年に入ってからの単月では7位から9位とトップ10入りが精一杯で、6月にいたっては11位と、トップ10さえ逃す結果となっています。
かつては絶対的首位として君臨し続けたプリウスが、なぜここまで苦戦を強いられているのでしょうか。
その背景には、2020年1月から6月の新車販売台数ランキングでプリウスより上位に位置するライバルたちの存在が挙げられます。
首都圏のトヨタ販売店スタッフは以下のように話します。
「かつては、どんな客層にも『とりあえずプリウス』といった流れがありましたが、最近はそうではなくなっています。
例えば、若い単身者やご夫婦ならデザインが人気なうえ扱いやすい『ライズ』、とにかく燃費重視なら『ヤリス』、家族連れで使い勝手重視なら『シエンタ』というところでしょうか。
なかでも、セダンタイプやハッチバックを検討しているお客さまは、プリウスよりも新型で価格を抑えたカローラを選ぶ人がかなり増えています。
プリウスは人気車種ではありますが、ある程度経済的な余裕があって安全性能を重視する、年齢層の高いお客さまに偏っている印象です」
※ ※ ※
プリウスの販売が伸び悩む理由には、立ちはだかるライバルの存在があるようです。
まず、2020年上半期(1月から6月)に販売台数1位を記録したライズは、ダイハツと共同開発したコンパクトSUVで、SUVらしさの強い見た目ながらも全長3995mm×全幅1695mmの5ナンバー車であり、取り回しの良さが人気です。
コンパクトクラスのためプリウスよりは小柄ですが、ラゲッジの使い勝手は高く、単身者や若い夫婦など前席をメインに使用するユーザーに人気です。
また、4位を記録したヤリスは、それまではプリウスがトップであったカタログ燃費1位の座を奪っており、燃費重視のユーザーから絶大な人気を誇ります。
その差は、プリウスがWLTCモードで25.4km/Lから32.1km/Lに対し、ヤリスのハイブリッドモデルは30.2km/Lから36km/Lと、最大で10km/L以上の差があります。
そのほか、コンパクトミニバンのシエンタは、2列シート/3列シートをラインナップしており、ユーザーの選択肢が広いうえ、ミニバンならではの積載量が人気です。
そして、最大のライバルともいえるのが、2019年9月にフルモデルチェンジを遂げた「カローラシリーズ」でしょう。
プリウスと比べ、最高出力と最大トルクは共通し、ボディサイズはやや小柄ながらも同等、燃費ではハイブリッドモデルがWLTCモードで24.4km/Lから29km/Lとやや劣るものの高い水準を誇ります。
予防安全装備でも、ガソリンモデルのエントリーグレード「G-X」を除く全車で「レーダークルーズコントロール」をはじめとする「Toyota Safety Sense」が全車標準装備されており、充実しています。
また、カローラはプリウスに迫る性能を要しながらも、ユーザーのクルマ選びに欠かせない価格には、見過ごせない差があります。
プリウスは、ハイブリッドモデルのみのラインナップで車両価格は260万8000円から355万7000円なのに対しカローラ(ハイブリッドモデル)は240万3500円から294万8000円と、20万円から60万円ほど価格を抑えています。
前出の販売店スタッフによれば、「はじめはプリウスで考えていても性能やサイズが似ていて価格が安いカローラへ」というユーザーは多いとのことです。
■一部改良は、王者復活のカギとなるか
王者プリウスの販売が落ち込んでいるのは、デザイン・燃費・使い勝手・価格など、それぞれ持ち味が異なる同門ライバルの登場し、ユーザーの選択肢が広がっているという背景があるようです。
過去、フロントマスクの不評がありながらも復活劇を遂げた経歴をもつプリウスは、ライバルたちに一矢報いることはできるのでしょうか。
2020年7月1日、トヨタはプリウスの安全装備や給電機能について、一部改良を施したと発表しました。
具体的には、「Toyota Safety Sense」において、「プリクラッシュセーフティ」の検知範囲拡大や、「レーダークルーズコントロール」の機能向上、さらに道路標識の見落としを減らすための「ロードサインアシスト(RSA)」や先行車の発進を知らせる「先行車発進告知機能」を追加。
また、「インテリジェントクリアランスソナー(パーキングサポートブレーキ)」を全車に標準装備したほか、運転に不安を持つドライバー向けに、急アクセル時加速抑制機能である「プラスサポート(急アクセル時加速抑制)」をトヨタで初めて採用しています。
プラスサポートとは、右折時や一時停止後などの急加速を必要とする状況を除き、アクセルの踏み間違いと考えられる急加速時には、障害物がなくても加速を抑制し、踏み間違い事故の低減を図る機能です。
ほかにも、災害時などに役立つ「外部給電機能」を全車標準装備したほか、PHVモデルには、「ソーラー充電システム」を全グレードでオプション設定。
太陽光で発電した電力を駆動用バッテリーに充電し、外部に給電することが可能なため、非常時の電力源として期待されています。
さらに、今回の改良にあわせ、さらなる安全・安心機能を充実させた特別仕様車「S“Safety PlusII”」を新設定して発売しています。
プリウスの持ち味である安全性や先進性に磨きをかけた内容となりましたが、王者復活のきっかけとなりうるのでしょうか。
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みんなのコメント
売れてるイメージを作ってるが、大市場のアメリカで年販10万台ちょっとで大して売れてない。
燃費なんて10円単位。
年数千キロも乗らないユーザーが多数なのに、車体が何万も高額になったら取り返せる人などそれほどいない。
そんだけの話。