家選びに通じるファミリー行事。日欧の高級キャンピングカーの違いは?
キャンピングカーショーを観に行って感心すること。それは、ファミリーや多人数で来場しているお客さんの多さだ。多人数で楽しむクルマだから当然なのだけど、クルマ好きが集まる自動車ショーや、チューニングカーショーとはまったく違う空気感があって、ちょっと面食らってしまう。
「三菱デリカ D:5 」1/43スケールモデルがインターアライドから2019年2月に登場
会場では、ユーザーとメーカーとの距離が本当に近い。お父さんとお母さんがスタッフに話を聞く側で、子供たちが車内をキャッキャと見てまわるそのシーンは、ほとんど住宅展示場。キャブコンバージョン(トラックなどキャブつきのシャーシに架装したクルマ)の輸入車となれば、軽く1000万円オーバーの価格だから、家や別荘でも選んでいるようで、つい見入ってしまう。
すなわち、現在の静かなキャンピングカーブームは、家や別荘に近い感覚を抱いている、彼らのようなユーザー存在が大きいのだと思う。そう考えると、キャンピングカーそのものの見方も変わってくる。キャンピングカーを、カスタムカーの流れからではなく、家や別荘の延長と考えれば、大切なのはクルマの性能よりも家の性能ということになるのだ。
1000万円クラスは高級キャンピングカーの普及モデル!?
となれば、気になるのはサイズと装備。多人数で楽しむのだから、サイズ的には小さくても中型トラック程度で、キャブコンバージョンくらいの設計の自由度は必要だろう。そのキャブコンバージョン・モデル、ヨーロッパ代表のドイツ車では、全長7m前後、全幅2.3m前後が日本でのボリュームゾーン。就寝人数を3~6名あたりに設定しながら室内を設計している。印象的なのは、欧州家具のショールームでも見ているようなインテリアと、家具類の仕上げの美しさ。国産モデルほど収納やスペースへの工夫はないが、その分部屋の中にいる充実度が大きい。価格は1000万円を切るあたりから1000万円半ばくらいまでだ。
これに対応する内容の国産モデルは、全長5m前後、全幅2m前後と、ひと回り小さいボディが主流。2mの長さの差は大きいが、スペースや収納の工夫で最大5名の就寝人数を確保するモデルもある。スペースを稼ぎ出す都合上、インテリアレイアウトはいくぶん味気ないものになるが、秘密基地感覚が、かえって好みのユーザーも多いかもしれない。価格的には、高いものでも1000万円を超えるモデルは稀有。これは、サイズやインテリアそのものの造り込みの違いもあるが、ベース車両の性能の違いも大きいのである。「デスレフ」や「ハイマー」といった、憧れのドイツ老舗キャンピングカーメーカーは、ベース車にフィアットやメルセデス・ベンツなどの大型バンを選んでいる。それらは交通の流れが速いアウトバーン走行も日常的にこなす、走りに強い設計。日本のキャンピングカーには、高速走行性能はマストではないが、そこはお国柄であり、ヨーロッパ車は、運転の気持ちよさも重要に考えているワケだ。ただし、ヨーロッパの環境に合わせて設計しているので、たとえば、キャンパーのドアは右側に備わる、国産車ほどエアコンの性能を重視していない。ドアはやむをえないとして、そのあたりを補う追加装備を考えると、日本で便利に使うには実質的な値段はもう少しアップするだろう。
日欧、それぞれのキャンプ観が“高級”さをデザイン
さて、前段は高級キャンピングカーの普及モデルのお話。この上のクラスは車両サイズが大きくなり、室内が家のように広々してくる。広さが高級さの象徴というわけだ。ベース車両的には、日本ではマイクロバスをベースにしたバスコンバージョン・モデルに相当するが、先のデスレフやハイマーでは、主にフィアットの大型バンを使用。キャブ部分含めた外装全体をデザインして、それぞれ独自のエクステリアに仕上げている。サイズは全長5m~7m超で、車幅はキャブコン・モデルと同じく2.3m前後。価格は1200万円前後から1500万円といったところだ。
内装の基本的なデザインコンセプトは変わらないが、ベース車両が大きくなれば、ベッドやキャビン、収納などがひと回り大きくなる。トイレやシャワールームも独立した作りになって、見た目はほとんど外洋クルーザーの豪華船室だ。就寝人数は4~5人と、サイズのわりに少ないが、それもまた高級さの証なのである。
一方の国産モデルも、このクラスになると広さ重視のデザイン傾向が強い。ベース車両は、トヨタのコースターや日産のシビリアンなどで、全長は6m前後、全幅は2m超と、こちらもドイツ勢よりも少し小さい。ただし、さすがは国産だけあって、内装デザインや搭載する装備が実に多彩。いかにもキャンピングカー然とした機能的なものから、シティホテルのスイートルーム的なゴージャスなものまで見られ、価格も1000万円以下から1500万円オーバーまでと幅広い。
ヨーロッパと日本の高級キャンピングカーを比較してみて、面白く感じたのは、キャンピングカーのデザインを通して、それぞれの地域のユーザーが望むキャンプ生活が見えてくることだ。大雑把にいえば、日常から離れたいヨーロッパ勢と、日常の便利さを持って行きたい日本勢。どちらが優れているわけではないが、もし一大決心するのだったら、その違いまで楽しむつもりで選びたいもの。
追記になるが、ここであげているクルマのサイズや価格は、あくまでそのクラスの平均的的な数字で、その範囲を外れるモデルも当然存在する。説明の便宜上使用している数字であることをお断りしておきたい。
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