1955年にデビューしたトヨタ・クラウンがフルモデルチェンジを受けて15代目へと移行した。15代目といえば、徳川家なら慶喜にあたる。慶喜と同じく、15代目クラウンも大変な時代にバトンを受けた。新型クラウンの喫緊の課題は、平均年齢が66歳を超えたというユーザーの若返りだ。そのために、新型クラウンは3本の矢を用意した。第1の矢がデザインの刷新。第2の矢がドイツ御三家に真っ向勝負する走りのよさの実現。第3の矢がつながる機能、コネクテッドだ。
デザインは、以前に閉鎖したコースでプロトタイプを見たときよりも、今回の一般道での試乗会で見るクラウンのほうがより大きく変わったように思えた。クローズド・コースで見るのと、一般道で見るのとでは、クルマの印象は大違いだ。
“おもてなし”の究極はこの1台に尽きる──トヨタ新型センチュリー体験記
一般道で見ると、街を走るほかのクルマと見比べることになるし、背景の街並みに対して溶け込んでいるのか、あるいは浮いているのかも感じる。新型クラウンはいい意味で浮いているように見えたし、ほかのクルマとは明らかに違う種類の存在感を示していた。
その理由を考えていくと、キリッとしたフロントマスクとともに、6ライトウィンドウを採用したことが大きいという結論にいたる。6ライトウィンドウとは?
4ドアセダンを真横から見ると、当然ながら前席と後席に窓がある。後席の窓の後ろ、ちょうど後輪の上にあたる部分は、従来のクラウンだと太い柱(いわゆるCピラー)になっていた。
Cピラーは後席に座るやんごとない御仁を人目から隠したり保護したりする役割があるから、クルマの性格としてはフォーマルになる。いっぽう新型クラウンは、Cピラーではなく窓にした。これで片側に3つの窓、左右あわせて6つの窓で6ライト(ライトは採光という意味だ)ウィンドウということになる。
6ライトウィンドウにすることによって、いままでの重厚でエバっていたクラウンが、エレガントなクラウンに変わったのだ。理想の上司ナンバー1に、内村光良さんが選ばれる時代。クラウンのデザインも、そんな時流に合っている。第1の矢は的にビシッと刺さった、と考える。
第2の矢、走りについてはデザインと違って、クローズド・コースでプロトタイプをドライブしたときの印象そのままだった。快適な乗り心地と、正確なハンドリング(操縦性)が高いレベルで両立している。
たとえば高速道路の進入ランプ。グルッと回り込む、180度に近いカーブをがんばってまわる。そこに、ちょっとした路面の不整が現れる。がんばってカーブを曲がっている時に凸凹が登場するのはイヤなものだ。クルマの姿勢が乱れる。
けれどもクラウンの4本の足は、太極拳の達人のようにゆったりと伸びたり縮んだりして、凸凹をからめとるようにクリアする。コーナリングスピードは落ちないし、姿勢も乱れず、ドライバーに伝わるショックも角のとれたまろやかなものだ。この足まわり、相当レベルが高いとお見受けした。
用意するパワートレーンは3種。最高出力245psの2.0リッター直列4気筒ターボエンジンは、パンチ力のあるタイプ。アクセルペダルを踏み込むとバチンと反応して、レスポンスよく加速する。
最高出力359psの3.5リッターV型6気筒エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせた、ということはレクサスLSとも共通の「マルチステージハイブリッドシステム」は、華のあるパワートレーンだ。丁寧に整えられたV6のエンジン音、3.5リッターという排気量の余裕、そこに加勢するモーターの力がからみあって、車体はエレガントかつ力強く加速する。金額を問わなければ、これを選ぶ。
最高出力226psの2.5リッター直列4気筒エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせた、ということはカムリの仕組みをエンジン縦置きのFR用にアレンジしたパワートレーンは、やんちゃな弟とジェントルな兄にはさまれて、やや印象が薄い。パワーは充分だし、静かで滑らかではあるのでこれを選んでも間違いないだろう。
とはいえ、出来のよい足まわりを存分に味わうのであれば、直4ターボやマルチステージハイブリッドぐらい楽しめるパワートレーンのほうがお似合いだろう。
第3の矢、コネクテッドについては時間の限られた試乗会でのテストドライブだったので、何かを書けるほど試すことはできなかった。宿題とさせてください。
総じて、新型クラウンは見てうれしい、乗って楽しいスポーツサルーンに仕上がっていた。そしてその出来のよさは、このままクラウン・クロスオーバーを仕立てたらいいのではないか、という妄想につながった。かつてのクラウンにはワゴンがあったのだから、クロスオーバーがあってもおかしくない。
クロスオーバーにすれば、平均年齢66歳の現在のオーナーの方に遠慮せずにブッ飛んだデザインにできる。トヨタC-HRやレクサスUXなど、最近のトヨタは背の高いモデルのデザインに見るべきものがあるから、クラウン・クロスオーバーも間違いなくカッコよくなるはず。そこに、この快適性と走りのよさが加われば鬼に金棒、トヨタが狙う40代、50代の新規顧客も集まるに違いない。
15代将軍の徳川慶喜は大政奉還で政権を朝廷へ返したけれど、15代目クラウンにはまだまだ未来と可能性がある。
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