ごく短期間、ターボ付きのバイクは存在した
「ターボ(ターボチャージャー)」は「過給機」の一種です。バイクやクルマのガソリンエンジン(内燃機関)は、空気とガソリンを混ぜた混合ガスを“吸い込み”、爆発してパワーを発生します。対する過給機付きのエンジンは、混合ガスを“押し込む”ことで、より大きなパワーを発揮します。ちなみに前者をNA(自然吸気)エンジン、後者を過給エンジンと分けて表現することもあります。
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ターボの構造を簡単に解説すると、排気ガスの力で風車を回し、その風車と同軸に備わった空気ポンプが吸気を圧縮してエンジンに押し込みます(過給する)。
元々は空気の薄い高空を飛ぶ飛行機のために開発された技術ですが、クルマの場合は同排気量の自然吸気エンジンより大きなパワーを出せるのがメリットです。
熟年ライダーなら記憶があるかもしれませんが、1970年代に盛り上がった“スーパーカーブーム”では、多くの高性能スポーツカーがこぞってターボを採用していました。
国産乗用車では、1979年に日産のグロリア/セドリックが初めてターボを装備。当時はオイルショックでガソリン価格が高騰していたため、ハイパワーよりもターボのもうひとつのメリットである省燃費をウリにしていました。その後、続々とターボ車が増加して現在に至る……という形です。
しかしバイクにおいては、現在はメーカー製の市販量産車で「ターボ」を装備したバイクは存在しません……が、過去には日本の4メーカーでターボ装備のバイクを販売していました。ただし、いずれも輸出専用車だったので、国内モデルとしては販売されませんでした。
世界初の市販量産ターボ車は、1981年にホンダが発売した「CX500 TURBO」でした。翌1982年にはヤマハが「XJ650 turbo」、スズキが「XN85」を発売しました。
じつは1981年に開催された東京モーターショーには、カワサキのプロトタイプ車も合わせて、国内4メーカーのターボバイクが揃って展示されたのです。その後カワサキは、1984年に市販モデルの「750 TURBO」を発売しました。
国内の4輪乗用車でターボ車が登場して間もなく、ターボバイクも発売されて最高出力はいずれもベースとなったエンジンの1.5倍ほども発揮していました。にもかかわらず、ターボバイクはどのメーカーもほぼ一代限りで生産終了し、その後は市販されていないのです。
なんでターボバイクは流行らなかった?
クルマ(4輪乗用車)はターボが盛り上がったのに、なぜターボバイクはほぼ一代限りで姿を消してしまったのでしょうか?
原因は色々と考えられますが、まず当時の日本ではターボバイクの認可が下りず、逆輸入車しか購入できませんでした。しかも当時の免許制度では大型自動二輪免許(正しくは自動二輪免許の「限定解除」)は運転試験場の“一発試験”でしか取得できず、現実的に排気量400ccを超える大型バイクに乗るのが困難だったこともあります。
また、ターボ特有のスロットルを開けた瞬間のタイムラグ(ターボラグと呼ぶ)が、バイクという乗り物の特性に合わなかった部分も大きいでしょう。ちなみに、現在の4輪ターボ車は技術の進化によって、ほとんどターボラグを感じないレベルになっていますが……。
ほかには、ターボチャージャーや補器類などによる重量増も、軽さを美徳とするバイクには不向きだったとも言えます。
このように、諸々の事情でバイクのターボは普及しませんでした。
時代は流れ、現代の1000ccクラスのスーパースポーツモデルは、ターボ無しで200馬力以上を発揮するようになりました。また小中排気量車も十分なパワーを発揮し、良好な燃費も実現しているため、いまではバイクにおいてはターボの有効性が少ない……とも考えられます。
そして発売当時もかなりレアな存在だったターボバイクは、現在はコアなファンに珍重される存在となっています。
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