雰囲気はイングリッシュパブの如し
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)photo:Koichi Shinohara(篠原晃一)待ち合わせ場所に白いXJサルーンが颯爽と現れる。
速度はゆったりとしたものだったが、現代のサルーンとは比べ物にならない全高の低さと、シャープなスタイリングによって「颯爽と」という表現が良く似合うのだ。
1984年式のジャガーXJ12ヴァンデン・プラH.E.。V12エンジンを搭載したXJサルーンの高級版であり、末尾のH.E.のアルファベットは、80年代になって燃焼効率が高められたV12エンジンに付与されたHigh Efficiency(高効率)の頭文字である。
このジャガーXJ12ヴァンデン・プラに20年乗っているというオーナーの宮廣好一さんは、このクルマの前にもジャガーXJ6に乗っていたほどの生粋のジャガー党。
古い英国車を愛するオーナーは、ファッションは身の回りのモノも含めて英国好きであることが多いが、宮廣さんもその例に漏れない。
チューダーホワイトと言われる陶器のような白いボディに上品なメッキパーツが散りばめられたエクステリアも見事だが、メッキで縁取られた窓から覗く使い込まれたマルベリー(深い赤)の革内装が、まるでイングリッシュパブのような雰囲気を醸し出している。
重量感のあるドアを開け、赤いランプで照らされた室内に潜り込む。
室内はトヨタ86より狭い?
絞り込まれたような外見からもわかる通り、XJサルーンの室内空間は最低限の広さしかない。
外寸で際立っているのは全高の低さと全幅の狭さで、これはトヨタ86より全高が2cm高いだけ、逆に全幅は2cm狭いのだから、室内が狭く感じられるのは当然である。
だがこの上下左右にほどよくタイトで、しかし前後方向にゆったりとしたドライビングスペースが、ジャガーのスポーティな乗り味と実によくマッチしている。
細身のステアリングホイール、メッキとエボナイト(ゴム由来のプラスティック)を組み合わせた瀟洒なシフトレバー、そして室内全体に広がるウォルナットパネルとレザーが織りなす独特の様式美。
今回試乗させていただいた個体は年式こそ1984年だが、それでも目に映るもの、触れるものの質感は全て、80~90年代のネオヒストリックではなく60年代の英国ヒストリックカーのものだ。
少し動きが硬めのシフトレバーを引き込むとガツンと駆動が伝わり、ヒタヒタと走り出す。サスペンションは少しフワフワとして柔らかく、乗り心地はすこぶるいい。
一方V12エンジンは、右足をスロットルに乗せておくだけで、いつの間にか加速していく感じ。これぞ英国の高級サルーンと言った趣がある。
旧き佳き英国がそこにある
例えヒストリックカーであっても、ヒタヒタと乗り心地良く走り、エアコンもちゃんと効いてくれれば、現代のアシとしても通用する。宮廣さんがずっとこれ1台で全ての用事をこなしているというのも納得がいく。
「たまに調子を崩すこともありますが、エンジンやミッションはとても丈夫なので、安心して乗れます。燃費はリッター3kmとかなので、ガソリン代は大変ですけど」と宮廣さん。
20世紀のジャガーは信頼性に難ありと言われることも多いが、そこには個体差やオーナーの扱い方、メンテナンス・ガレージの腕も関係してくるのかもしれない。
ジャガー・デザイン中興の祖であるイアン・カラムが手掛け、初代XJのデザインから完全脱却を図った現行XJのスタイリングはすばらしい。
とはいえ初代XJサルーンの見た目と走りの雰囲気を愛するファンに、現代のジャガー・デザインを浸透させるのは難しいことなのかもしれない。
波打つようなボンネットに朝日を映しながら高速道路をひた走るXJ。視線の先にはジャガーのマスコット、リーピングキャットが輝いている。
獲物に飛び掛かるジャガーを表現したこのマスコットを生み出したのは、オートカーのデザインにも関わっていた彫刻家のゴードン・クロスビー。
深く知るほど、初代XJは旧き佳き英国で満たされている。
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