サスペンションやシフトを独自に改良
F1のレーシングドライバーとして活躍した、ジョン・サーティース氏。1957年式BMW 503 カブリオレを購入した彼は、ダンパーを特注のコニ社製へ交換した。特別に鋳造された部品には、SURTEES(サーティース)と名前の刻印が残っている。
【画像】3台のみの右ハンドル BMW 503 カブリオレ どれがお好み? 現行のオープン4種 全99枚
オリジナルのコラムシフトを改め、フロア・シフトレバー用のエクステンションも追加している。ちなみに、彼が所有していたBMW 507にも同じ改造が施されていた。
サスペンションには、独自に設計されたアンチロールバーも備わる。多くの50シリーズと同様に、フロントのドラムブレーキはバキュームアシスト付きのディスクへ、BMWによってアップグレードされている。
サーティースが503 カブリオレを愛した理由は、快適さとスポーティさを兼ね備えていたから。その長所は、現在でも確かめられる。製造品質は同時期のメルセデス・ベンツやベントレーへ並ぶが、ドライバー中心のBMWらしい設計が体現されている。
期待通り、路面の起伏はしなやかにいなすが、枕のようにソフトすぎることはない。細かな凹凸の存在をサスペンション・スプリングは伝えるものの、適度な硬さで、外界との隔離性は素晴らしい。
期待以上に機敏にコーナリングするのは、彼が改良を施したサスペンションのおかげだろう。車重は約1.5tあるが、ベントレーでは退屈に感じられる区間でも、ドライバーを満たしてくれる。快適でありながら。
洗練されたクロスプレーンの3.2L V8
エンジンは、通常ならドロドロと唸りを上げるであろうクロスプレーンのV型8気筒。アメリカ市場を見据えた設定といえる。しかし、他に例がないほど洗練されている。始動時のサウンドはとても控えめだ。
ブロックはアルミ製だが、バルブは従来的なプッシュロッドで動かされる。排気量は3169ccとアメリカ基準でいえば小さく、回転フィールは欧州車的。2800rpm以上回すと豊かなトルクが湧き出てきて、3速のままカーブが連続する区間を楽しめる。
息を呑むほど速いわけではないものの、レスポンシブで夢中になれる。高回転域になるとV8エンジンはメカノイズを高めるが、耳障りになることはない。
ボディサイズは現代基準でも小柄とはいえないものの、シャシーは意欲的なドライバーの気持ちを汲むように応える。特にフロント・サスペンションの落ち着きに感心する。シンプルなリジッドアクスルのリア側も、しっかり車重を受け止める。
オーバーエンジニアリングだと感じさせるのが、ボディ剛性の高さ。カブリオレでありながら、路面が乱れてもフロアや開口部が粗野に始動する様子はない。舗装状態が良くない英国の路面でも、ガシっとしたボディを感じられる。
完全に制御されているという安心感が湧いてくる。内装の豪華なトリムは、時折カタカタと鳴くけれど。
圧縮比の上昇で507と同じ157ps
アシストの付かないステアリングには、少しの慣れが必要だった。切り始めは反応が鋭く軽いものの、切り込んでいくほど重さが増し鈍くなっていく。速度が上昇し、傾ける角度が小さくなれば、問題は感じられない。
現代のステアリングラックと比べても、遊びは殆どない。手のひらへの情報量は小さくない。コミュニケーション力に長けるとまではいえないまでも、正確性は高い。
加えて、この503 カブリオレのエンジンは圧縮比が高められており、オリジナル以上のパワーを得ている。テストでは157psを発揮することが確認されており、同時期の2シーター・ロードスター、BMW 507と同値になる。
スピードメーターも507と同じものが組まれており、恐らくこの仕様で初代オーナーのビー博士は注文したのだろう。右ハンドルの503は受注生産だったため、この程度の変更ならBMWも対応したようだ。
現在のオーナーは、英国のマイケル・グレンフェル氏。サーティースが2017年に亡くなった数年後、ボナムズ・オークションで落札したという。
多くの人の記憶には残っていないBMW 503
サーティースの507は380万ポンドでハンマーが打たれ、同オークションの落札額の記録を更新した。他方、BEE46のナンバーで登録された503 カブリオレと一緒に映る彼の写真は1枚も残っておらず、価値はそこまで伸びてはいない。
「サーティースは、見た目にはあまり関心を持たなかったようです」。とグレンフェルは話す。ボディは美しさを保ち、サスペンションとエンジンは入念に手入れされていた。しかし、表面的な細部の状態は完璧ではなかったという。
近年になりカーペットが交換され、ステアリングホイールとシフトノブは再塗装されている。クロームメッキも再処理され、1992年に彼が入手した時のような輝きを取り戻している。
それでも、ボディ塗装やカーペット以外のインテリアはオリジナルのままだ。「サーティースもビー博士も、小柄な人でした。恐らく、クルマの状態を保つという意味では、好条件の体型といえるでしょうね」
歴代のBMWのなかで、特に多くの人の記憶には残っていないモデルの1台といえる、503。当時の経営部門にとっては、悩ましい存在だったかもしれない。しかし、素晴らしい所有体験を与えてきたことは間違いなさそうだ。
協力:BMWカークラブGB
BMW 503 カブリオレ(1956~1959年/英国仕様)のスペック
英国価格:4806ポンド(新車時)/25万ポンド(約4025万円)以下(現在)
販売台数:503台(503合計)
全長:4750mm
全幅:1710mm
全高:1440mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:13.0秒
燃費:5.3-7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1520kg
パワートレイン:V型8気筒3169cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:140ps/4800rpm
最大トルク:21.9kg-m/4800rpm
ギアボックス:4速マニュアル
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