一部改良を受けたホンダの新しい「ヴェゼル」のガソリンモデルに、小川フミオが試乗した。意外なほど良かった走りに迫る!
販売比率は1割程度
スタイルがよくて、機能的……“アーバンSUV”を、謳うホンダの新しいヴェゼルは、楽しいドライブができるクルマだ。人気というのもよくわかる。2024年4月にマイナーチェンジを受けたガソリン仕様の「G」に、6月初旬に試乗して、バランスのよい走りに感心した。
全長4340mmのボディに2610mmのホイールベースの組合せで、パッケージングにもすぐれ、後席空間も175cmの人間ふたりが座っても余裕がある。荷室も広い。スタイルと機能性の両立は、大きな評価ポイントだ。
Gグレードにおけるマイナーチェンジの眼目は、内外装のデザインの一部に手が入れられた点。横バーが太めになったフロントグリルをはじめ、フロントバンパーの形状変更、リアコンビネーションランプのLED化(加えて、水平基調の2段のグラフィック)が採用された。
インテリアの意匠も一部変更。前席のセンターコンソールが左右対称のデザインとなった。ホンダのデザイナーによると、「運転席、助手席双方が同じように使え、上段も下段も両席からアクセスしやすい形状になった」とのこと。
ヴェゼルにおける唯一のガソリンエンジン車、Gグレードの心臓部は、1496cc4気筒ユニット。これに4WDシステムが組み合わされる。前輪駆動は用意されない。
実はGグレード、2021年当初の仕様から、内外装の一部変更以外、ドライブトレインにもサスペンションシステムにも手が入っていない。その理由として「販売比率は、ヴェゼル全体の1割しかない」(ホンダ広報)という事実もあるのかもしれない。
ガソリンでも十分でも、今回改めて乗ってみて、私はポジティブに評価したいと思った。そもそも完成度が高くて、わざわざ変える必要がなかった、と、言えるのではないか? ひとことで評すると、バランスがよくて、気持ちよく走れるモデルなのだ。その印象が、2021年以来変わっていない。
極低速から高速道路までストレスなく走れるモデルだ。低回転域での実用的なトルクもしっかりあるし、車速が上がっていくときのエンジンの回転マナーはスムーズ。ハンドルの動きへの車体の反応もいいし、サスペンションシステムはよく動いて、乗っていて快適、走って楽しいのだ。
難をいえば、速度が上がっていったときの車内への透過音がけっこう大きい点。ちょっと前なら常識的なレベルだけれど、いまのクルマは静かになっているので、気になる人もいるかもしれない。ふだん使う速度域がそんなに高くなければ、気になることないだろう。
組み合わされる「リアルタイムAWD」は、「常に四輪に最適な駆動力配分をおこうよう再調整した」と、開発責任者の奥山貴志氏は説明。たとえば、発進時は後輪も駆動されてよりスムーズさを狙ういっぽう、ブレーキング時は最適のタイミングで前輪のみの駆動になって自然なフィールが追求されたという具合。
メーター内に前後輪への駆動トルクが表示される“見える化”も実現されている。停止しようというときにメーターに目線を移すのは難しいので、あまり意味はないかもしれないが、ユーザーの使い勝手を重視しての全輪駆動システム搭載という、オーナーにとってはよろこびを感じさせてくれる装備かもしれない。
今回同時にマイナーチェンジを受けたハイブリッドモデルにおいては、「PLaY」や「HuNT」なる内外装のパッケージオプションが用意される。けれど、Gグレードは素のまま。ただし、それでも十分。
ハイブリッドの4WDなかでもベーシックグレードの「e:HEV X」 は¥3,108,600。それに対してGグレードは¥2,648,800。競合としては、トヨタ「ヤリスクロス」(ガソリンエンジン+4WDの「Z」で¥2,782,000)が強力だろう。ヤリスクロスは納車時期がはっきりしないのに対して、ヴェゼルは1カ月から2カ月程度という。
なるほど。ヴェゼルの優位性は、価格だけではなさそうだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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