日本でいま売れているクルマは、「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる軽自動車です。全高1700mm以上と背が高く、軽ミニバンとも呼べるような四角いボディで室内が広く、後席はスライドドアで乗降性にすぐれています。
2019年の上半期における新車販売でも、上位3車種は、ホンダ「N-BOX」(約13万台)、スズキ「スペーシア」(約8万台)、ダイハツ「タント」(約8万台)と、軽スーパーハイトワゴンが占め、登録車で一番売れたトヨタ「プリウス」(全体5位/約7万台)を上回っています。
N-BOXの1/10以下はあたりまえ!? 売れていない軽自動車5選
なぜ、これらの背の高い軽自動車は売れているのでしょうか。
人気上位の軽自動車で一番オラオラ顔なスズキ「スペーシアカスタム」 これら売れ筋の軽自動車には、スーパーハイトワゴンという共通点のほかに、もうひとつ共通点があります。それは「カスタム」モデルという派生車種をあわせ持つ点です。
近年では「オラオラ顔」ともいうべき威圧的なフェイスデザインのクルマが流行っています。トヨタ「アルファード」や「ヴェルファイア」といった高級ミニバンに代表されますが、軽自動車界も例にもれません。
しかし軽自動車の場合は、標準モデルとは別に「カスタム」モデルという派生車種を設定し、それを「オラオラ系」に仕立てることが多いようです。
同じ「N-BOX」にも、ノーマルモデルの「N-BOX」とカスタムモデルの「N-BOXカスタム」が存在します。一車種なのに異なるスタイルを選べることは、売れ筋モデルのポイントかもしれません。
軽自動車におけるノーマルとカスタムの違いは、ノーマルが親しみやすさや安心感を持たせるデザインであるのに比べ、カスタムではメッキやエアロパーツを使用して、高級感や迫力ある存在感を際立たせたオラオラ系にデザインされることが多いようです。
フロントグリルはメッキを多用し、押し出し感の強いデザインを表現。また、フロントフォグランプが追加されます。ホイールはアルミになり、グレードによってはワンサイズアップも選択可能。サイドやリアには専用スポイラーが装着されます。
ボディカラーは複数色用意されますが、モノトーンが基本的となり、室内も黒基調にまとめられ、革皮素材を使うなどして高級感を演出する傾向です。
価格帯は、ノーマルと比べて20万円から30万円ほど高くなりますが、それでもノーマルよりカスタムの方が人気の傾向があります。
ダイハツ「タント」の担当者は、カスタム仕様について次のように話します。
「新型タントでは、現時点でカスタムが約60%を占めます。カスタム仕様が人気の理由には、標準仕様と比べて装備を満載にできる点が挙げられます」
売れ筋のオラオラ顔軽自動車を紹介! 販売台数上位のモデルに設定されているカスタム仕様には、どのような特徴があるのでしょうか。人気のN-BOX、スペーシア、タントのカスタム仕様を紹介します。
販売台数ランキングにおいて、不動の1位を誇るのが、ホンダの「N-BOX」です。2017年から2019年上半期まで、新車販売トップを独走中の人気モデル。
現行モデルは、2017年にフルモデルチェンジした2代目。ノーマルモデルの「N-BOX」と、カスタムモデルの「N-BOXカスタム」の2タイプを設定しています。
N-BOXカスタムのフェイスデザインは、つり目のような細いヘッドライトと、中央の太いメッキバーが特徴的。水平基調のデザインはスタイリッシュな印象で、オラオラ度は控えめ。
近年のホンダ車に共通する「ホンダ顔」をしています。ウインカーは流れて光るタイプで(連鎖点灯式)、軽自動車では、N-BOXカスタムが初めて採用しました。
N-BOXカスタムの価格帯(消費税込)は、FF車が169万8840円から、4WD車は182万520円からです。ノーマルとの価格差は、カスタムが30万円ほど高く設定されています。
標準仕様、カスタム仕様以外にアクティブ仕様を設定しているのが、スペーシアです。2018年、2019年(上半期)の新車販売台数にて2位を獲得しています。
現行モデルは、2017年にフルモデルチェンジした2代目。初代に比べ室内を大幅に拡大しました。また発進時にモーターのみで走行する「マイルドハイブリッド」を全車に搭載し、低燃費に貢献しています。
グレード展開では、標準仕様「スペーシア」、カスタム仕様「スペーシアカスタム」に加え、2018年にSUVタイプの派生車「スペーシアギア」を追加しています。
スペーシアカスタムのフェイスデザインは、大迫力の巨大グリルがオラオラ度高め。N-BOX、タント、のフェイスがスタイリッシュ系なのに比べ、メッキグリルの面積が大きいのが特徴的です。
スペーシアカスタムの価格帯(消費税込)は、2WD車が151万7400円から、4WD車は163万8360円からです。ノーマルとの価格差は、25万円ほど高く設定されています。ちなみにSUVタイプ「スペーシアギア」はカスタムよりさらに10万円ほど高い設定です。
スズキ「スペーシア」のカスタム仕様(左)と標準仕様(右) 2019年7月にフルモデルチェンジしたばかりのタントは、初代モデルが2003年に登場した「スーパーハイトワゴン」のパイオニアです。
初代発売時はノーマルモデルのみでしたが、2005年に「タントカスタム」を追加して以降、ノーマルとカスタムの2モデル体制をつづけています。
助手席側のセンターピラーをドアに内蔵した大開口のスライドドア「ミラクルオープンドア」が特徴的で、累計200万台以上を販売したダイハツの基幹モデルです。
新型タントカスタムのフェイスデザインは、水平方向のラインを入れたスタイリッシュなデザインで、流れて光るウインカーを採用しています。
また、新型モデルでは標準仕様、カスタム仕様ともに純正パーツが豊富に設定されており、標準仕様でエアロなどを装着したカスタマイズができるのも特徴です。
タントカスタムの価格帯(消費税込)は、2WD車が174万9600円から、4WD車は187万3800円からです。ノーマルとの価格差は、20万円ほど高く設定されています。
※ ※ ※
人気の軽自動車は、標準仕様以外に流行りの「オラオラ顔」を意識したカスタム仕様が選べるなど、多様化するニーズを上手く捉えた戦略が、売れている要因といえそうです。
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