ホイールベースを延長しボディも拡大
どの世界でも二代目というのは難しい。とくに先代がセンセーショナルで、カリスマ性がある場合……。名機RB26エンジンを搭載した第二世代GT-Rの二代目、R33GT-Rもその二代目の難しさを嫌というほど背負って登場した1台だった。
【ニッポンの名車】これぞ究極の1台! 日産スカイラインR34GT-R
デビューは、1995年の東京オートサロン。モーターショーではなくオートサロンでの発表は、このR33GT-Rが市販車では初の試みだった。コンセプトは「究極のドライビングプレジャー」。その開発の主眼は、シャーシ性能のさらなる向上である。R32GT-Rで最後まで打ち消すことができなかったアンダーステアを解消すべく、前後重量バランスを改善。
フロント59.4:リヤ40.6と、フロントヘビーだったR32GT-Rの前後重量バランスに対し、R33GT-Rでは、ホイールベースを105mm延長し(全長は+130mm)、燃料タンクをリヤシート下に配置。バッテリーもトランクに移設し、インタークーラーも軽量化。
これらの改良で、R33GT-Rの重量バランスを、フロント57.5:リヤ42.5まで適正化し、本質的な部分でニュートラスステアに近づけている。そして見えにくいところでは、R32GT-Rが現役だった5年間のうちに、タイヤが驚くほどの進化を遂げていた。
R32GT-Rよりも剛性を44%アップし国産最強のボディに
R33GT-Rのタイヤサイズは、R32GT-RのVスペックIIと同じ、245/45-17。しかしR33GT-R専用に開発されたポテンザのパフォーマンスは非常に高く、そのグリップ力を受け止めるべく、ボディにはベース車に対し30カ所以上もの補強を追加した。
エンジンパワーはR32GT-Rと同じで、国内自主規制上限の280馬力だったにもかかわらず、ボディのねじれ剛性はR32GT-Rより44%もアップして、国産スポーツカー史上最強のボディを誇る一台となった。これらの技術的進歩により、ドイツのニュルブルクリンクのテストでは、アクセルの全開時間がR32GT-Rよりも、15~20%も増している。
これにはボディ剛性、タイヤの高性能化、サスペンションの最適化も大きな影響を与えているのは言うまでもないが、のちにいろいろと不評を買うことになった、ホイールベースの延長(105mm)による直進性や制動時のスタビリティの向上も、大きく貢献している。
また空力面でも、角度調整機構付リヤスポイラーを採用し、空気抵抗係数Cd値もR32GT-Rの0.40に対し、0.35とロードラッグ化に成功。リフトフォースもさらに減って、前後の空力バランスも適正化がすすめられている。先のロングホイールベース化に加え、このエアロダイナミクスのアドバンテージによって、高速安定性にも優れ、空気抵抗が少ない分、最高速も伸びる強味も持っていた。
エンジンは前記のとおりR32GT-Rと同じRB26DETTだが、過給圧はR32GT-Rの0.78kgf/cm2から、0.84kgf/cm2へと、0.06kgf/cm2のブーストアップ。
コンピュータもそれまでの8ビットから16ビットと処理能力が向上し、レスポンスがアップ。最大トルクも、1.5kg-m増えて、37.5kgになっている。
電子制御についても、スーパーHICAS(4WS=四輪操舵)はさらに洗練され、Vスペックには電子制御LSD=アクティブLSDも投入。アテーサE-TSと合わせ、ハイテク4WD車としても、世界最先端の制御技術を武器にしていた。
4ドアのオーテックバージョンや400馬力のニスモ400Rなども登場
モータースポーツでは、1995年のルマン24時間レースで10位、1996年には15位でフィニッシュ。全日本GT選手権では1998年にシリーズタイトルを獲得。
1996年5月には、ルマン参戦記念として、専用色「チャンピオンブルー」でペイントされた「LMリミテッド」が期間限定の特別仕様車として販売。
1998年には、スカイライン生誕40周年を記念して、4ドアのGT-R=オーテックバージョン40th ANNIVERSARYも登場。GT-Rの開発テストドライバーで、現代の名工にも選ばれた、加藤博義氏の愛車としても知られている。
その他、ルマン出場のためのホモロゲーションをクリアするために、たった1台だけ製作された、「NISMO GT-R LM」や、NISMOが作った400馬力仕様のコンプリートカー「400R」(44台限定。1200万円)なども、R33GT-Rのバリエーションで記憶に残る1台だ。
このように、機械的には大幅に進化した1台であったが、人気の面では現役時代も、中古車になってからも盛り上がりに欠け(主にスタイリングが不評。モータースポーツとの関連性も弱かった)、総生産台数は、R32GT-Rの半数にも満たない、16,520台に留まり、1998年に生産終了。翌年、R34GT-Rにバトンタッチをして、その役目を終えた……。
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