現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 現実と変わらないとも言われるイマドキのレースゲーム! それでもレーシングドライバーが感じる「ゲームの限界」とは

ここから本文です

現実と変わらないとも言われるイマドキのレースゲーム! それでもレーシングドライバーが感じる「ゲームの限界」とは

掲載 7
現実と変わらないとも言われるイマドキのレースゲーム! それでもレーシングドライバーが感じる「ゲームの限界」とは

 この記事をまとめると

■SIMゲームがどこまで実車に迫っているかをレーシングドライバー中谷明彦さんが解説

レーシングドライバーでも操れない! 運転が難しすぎる市販車3選

■「グランツーリスモ」では細かい設定が可能でほとんど現実に近い状況を再現できる

■「F1」シリーズは年間シリーズが戦え、また1レースに特化したレースチャレンジも可能

 もはやグラフィックはリアルかCGかを区別できないレベル

 ドライビングシミュレータとも言えるような高度なSIMゲームがeスポーツとして確立されている。グランツーリスモに代表されるような高度なソフトが人気を博し、FIA(国際自動車連盟)も承認するなど、ゲームとは言えないほどレベルが向上しているのだ。

 こうしたSIMゲームがどこまで実車に近い動きを再現できているのか。プロのレーシングドライバー目線で解説しよう。

 SIMゲームのソフトにはさまざまな種類が登場している。前述のグランツーリスモは、国産~外車、旧車からF1マシンまでダウンロードでドライブでき、富士スピードウェイや鈴鹿サーキット、筑波サーキットなど国内のメジャーコースに加え、ル・マンのサルトサーキットやニュルブルクリンク北オールドコースなどが収録されている。また、実際には存在していない架空のコースを創造し展開しているのも特徴だ。

 リアルサーキット収録に当たっては実際にサーキットを訪れ、コーナーのR(半径)はもちろん路面のアンジュレーションやカント(斜度)などを細かく計測しデータ化している。周辺の風景も現実そのままに再現。そのため信頼度が高く再現性に優れているのだ。

 近年は自動車メーカーがメディアの取材に貸し出す広報車両でのサーキット全開アタックを制限していることが多く、僕自身グランツーリスモ上で最新モデルのサーキット走行フィールを確認することもある。グランツーリスモでは車両データを自動車メーカーと緊密に連携して作り込んでいるので、コースだけでなく車両の再現性も高いのだ。

 グラフィックも綺麗でキャプチャー画面では本物かグランツーリスモか判別するのも難しいレベル。

 グランツーリスモで惜しいのは、レース形式プログラムが現実と大きく異なる点だ。インストールされているレースプログラムでは予選がなく、いきなりレースが始まる。カテゴリーや年代の異なる車両が混在して走るケースが多く、「おいおい、お前そんな速いマシンじゃなかっただろ」と思わず笑ってしまうことも。

 ただ、オンラインでレース構築する際には、車両やチューニング、タイヤ摩耗、ダメージなど細かく設定することで、ほとんど現実に近い状況を再現できるのだ。オンラインの場合は通信状況でタイムラグが発生してしまうことがあるのは今後5Gの拡がりなどで改善されて行くのだろう。

 事前にコースを走っておくとリアルのF1観戦で親近感が湧く

 レースを主体としたソフトとしてはコードマスターズ社が開発しEAスポーツから発売されている「F1」シリーズがある。この製品はF1の公式アイテムとして販売されていて、その年の各サーキット、マシンが収録される。

 2020~2021年はコロナ禍の影響でリアルなF1イベントが開催されなかったり、場所が変更になったりして現実の再現性は難しかったが、同社はアップデートでできる限りの対応をしている。「F1 2021」では、シーズン後半になって急遽開催された「サウジアラビアGPジェッダストリートコース」がリアルイベント直前にアップデートで更新され、関係者を驚かせた。初開催のサーキットなだけに、この「F1 2021」で予習してきたF1、F2のドライバーもいたはずだ。

 このSIMゲームの場合、プログラムで年間シリーズが戦えたり、また1レースに特化したレースチャレンジも可能。僕は2017年に初めて手に入れ、毎年更新している。当初はシリーズ全戦を実際のカレンダーに沿って参戦し楽しんだ。

 現実では叶えられなかったモナコGPのコースをF1マシンで走ることができ、スパ・フランコルシャン、シルバーストーン、鈴鹿サーキットなど、実際に走った経験のあるコースでは再現性の高さに関心させられた。このSIMゲームでコースやマシン特性を試してからリアルのF1を観戦すると、ドライバーがミスしやすいブレーキポイントやライン取りの難しいコーナーがわかり、親近度がグッと高まるのだ。

 現代のF1チームは各社シミュレータを開発し、使用している。SIMテスト専用に元F1ドライバーと契約してテスト走行しセットアップを煮詰めるなど本格的で、これらは「ゲーム」とは言えない領域だ。

「F1」シリーズを試すと気になるのは視点が動かないことだ。視野が狭く、通常のモニター画面にはサイドミラーが映らない。ヘアピンカーブなどで立ち上がり方向を見たくても、マシンが向く方向しか表示されない。

 また、高速でアプローチするコーナーのクリッピングポイントなどを現認しにくい。画像の解像度が全画面同一なので、一見綺麗に再現されているが、ピンポイントで状況を確認し辛いのだ。レーシングドライバーの動体視力は非常に優れていて300km/hで走っていても路面に落ちている小さなボルトと石ころを判別できる。SIMゲームにはそうしたピンポイントの解像度が足りていない。

 レースモードではレベルが選択できる。0から100のレベルで設定。0だと誰でも優勝でき、100にすると何をしても勝てない。スピンした時にダメージを最小限に収めすぐにコース復帰できるように対処操作しても、必ずガードレールに面してストップし進行方向と逆向きにしか復帰できないようなプログラムがされて難易度を高めている。

 リアルなレースを経験してきたからわかるこうした意見をどれくらいSIMゲームに反映できるかが今後の課題だろう。

 SIMゲームを行うためにドライビングSIM用コクピット製品も数多くある。簡単なシートとステアリング、ペダルユニットを組み合わせたものから、4軸、6軸で振動やGフォースを発生させるもの、大規模な敷地を縦横無尽に走らせ現実に近いGを発生できる自動車メーカー系のSIMなどだ。また、実車を使ってベンチ上で行うものもある。

 これまでのレベルだとシートが「動く」コクピット製品はあまり具合が良くない。シートを前後、左右に動かし、地球の1Gの範囲でGを再現する場合、たとえば加速方向に1Gを再現しようとするとシートを天井に向け90度傾けることになる。理論上はそれで体がシートに1Gで抑えつけられるのだが、その過程でシートがピッチング方向に回転している。回転するようなピッチングモーメントは実車では発生しないので違和感が強い。横Gでは横方向に傾けることになる、そこでもロールモーメントが発生し実車と異なる。タイヤの転動するバイブレーションや上下動を再現する程度の方が現実的だ。

 レーシングドライバーはさまざまなG変化や振動に晒されるが、じつはそれらを無視して重要なわずかな変化に特化して感じ取るように努力している。その重要部分がなく、無視していい部分だけを無理やり再現しようとしているのが現状SIMの問題点だろう。

 また、レースモードでは競争相手のドライバーがいかなるアクションを起こすのかを予測し対処するがSIMゲームでは予測不能(現実離れした)な動きで難易度をあげている。AIが進歩することで、より現実的なレースモードに仕上げられることができるはずだ。

 今後、SIMゲームの進化はさらに発展するに違いないし、期待している。

 © 2017 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc. “Gran Turismo” logos are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc. ※「PlayStation」は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標です。

こんな記事も読まれています

グレー&シアンで「MTシリーズ」の世界観を表現、ヤマハ『MT-03』『MT-25』2025年モデル発売 
グレー&シアンで「MTシリーズ」の世界観を表現、ヤマハ『MT-03』『MT-25』2025年モデル発売 
レスポンス
KINTO、走行安定性をアップグレードする「士別フィン」を発売
KINTO、走行安定性をアップグレードする「士別フィン」を発売
月刊自家用車WEB
KINTOから、LEXUS ISをアップグレードする「Performance Upgrade “Solid” for IS」が発売
KINTOから、LEXUS ISをアップグレードする「Performance Upgrade “Solid” for IS」が発売
月刊自家用車WEB
40年の歴史を持つ伝説的なハイパフォーマンスセダンは7世代目に! 新型「BMW M5」がデビュー
40年の歴史を持つ伝説的なハイパフォーマンスセダンは7世代目に! 新型「BMW M5」がデビュー
LE VOLANT CARSMEET WEB
SP忠男から Z650RS(’24-)用フルエキ「POWERBOX FULL 2in1ステンポリッシュ」が発売!
SP忠男から Z650RS(’24-)用フルエキ「POWERBOX FULL 2in1ステンポリッシュ」が発売!
バイクブロス
三菱「新型デリカ」発表近い!? 超ビッグ&タフな「SUVミニバン」発表で「出たら即買う」の声! 度肝抜く「D:X」登場で期待ヒートアップ!?
三菱「新型デリカ」発表近い!? 超ビッグ&タフな「SUVミニバン」発表で「出たら即買う」の声! 度肝抜く「D:X」登場で期待ヒートアップ!?
くるまのニュース
「e-BIKE」ってなに? ペダル付き電動バイクとの違い
「e-BIKE」ってなに? ペダル付き電動バイクとの違い
バイクのニュース
モータージャーナリスト修行中のZ世代クルマ好き女子がトムスの本物フォーミュラカーFIA-F4を初体験してきた件
モータージャーナリスト修行中のZ世代クルマ好き女子がトムスの本物フォーミュラカーFIA-F4を初体験してきた件
カー・アンド・ドライバー
アウトドアを楽しもう…アンダーソン・パークとコラボ、「ワールド・ミュージック・デイ」でレクサス GX を起用した映像公開
アウトドアを楽しもう…アンダーソン・パークとコラボ、「ワールド・ミュージック・デイ」でレクサス GX を起用した映像公開
レスポンス
カッコよさ重視のデザインに!! 燃費29km超えの[カローラツーリング]はハンドリングが抜群!
カッコよさ重視のデザインに!! 燃費29km超えの[カローラツーリング]はハンドリングが抜群!
ベストカーWeb
【BYD シール】「売れるかは未知数」縮小する日本のセダン市場で、中国のEVはどう戦うのか
【BYD シール】「売れるかは未知数」縮小する日本のセダン市場で、中国のEVはどう戦うのか
レスポンス
アウディの高性能SUV『RS Q8』、600馬力ツインターボ搭載…発表
アウディの高性能SUV『RS Q8』、600馬力ツインターボ搭載…発表
レスポンス
「えっ!」捕まるのはイヤだけど…乗ってみたい!? 爆速「“2ドア”パトカー」3選
「えっ!」捕まるのはイヤだけど…乗ってみたい!? 爆速「“2ドア”パトカー」3選
くるまのニュース
専門店もあるのにPBブランドまで展開! いまホームセンターが「カー用品」を充実させる理由を大手に聞いてみた
専門店もあるのにPBブランドまで展開! いまホームセンターが「カー用品」を充実させる理由を大手に聞いてみた
WEB CARTOP
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「モビリティ業界の新規事業のつくり方~ヤマハ発動機の成功と失敗に学ぶ~」
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「モビリティ業界の新規事業のつくり方~ヤマハ発動機の成功と失敗に学ぶ~」
レスポンス
ハミルトンへの嫌がらせ告発する怪メールに警察「犯罪行為無し」と結論。チーム側には今後に向けアドバイス与える
ハミルトンへの嫌がらせ告発する怪メールに警察「犯罪行為無し」と結論。チーム側には今後に向けアドバイス与える
motorsport.com 日本版
Wedsの注目ブランド MAVERICK(マーベリック)から新作2ピースモデル「1613M」誕生
Wedsの注目ブランド MAVERICK(マーベリック)から新作2ピースモデル「1613M」誕生
ベストカーWeb
日産“新型”「和製スーパーカー」発表! まさかの「“スカイライン”なR34仕様」! もうファイナルな鮮烈ブルーの「GT-R」アメリカに登場
日産“新型”「和製スーパーカー」発表! まさかの「“スカイライン”なR34仕様」! もうファイナルな鮮烈ブルーの「GT-R」アメリカに登場
くるまのニュース

みんなのコメント

7件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

337.0439.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

69.8389.9万円

中古車を検索
キャプチャーの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

337.0439.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

69.8389.9万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村