既定路線だった生産終了。オーダーの余裕は1年間
ホンダの軽ミッドシップ2シーターオープンスポーツカー「S660」が、ついに生産終了を発表しました。
S660を製造している三重県・四日市のホンダオートボディーが生産するもう一台のモデル「アクティトラック」の生産終了がアナウンスされており、“S660専用工場”として残るというのは考えづらい状況で、生産終了自体は既定路線だったといえます。
とはいえ、生産終了の1年前にホンダが発表したというのはファンを思ってのことでしょう。金策を練るなりしてファイナルモデルをオーダーする時間の余裕があるわけです。
ファイナルエディションというべき特別仕様車「S660モデューロXバージョンZ」の発売も同時に発表されました。こちらも期間や台数限定となっていないので、いわゆる転売目的でのオーダーは抑えられるはずです。
S660モデューロXバージョンZにはブラックエンブレムや専用アルミプレート、カーボン調インテリアパネル、専用シートセンターバッグなどが与えられ、メーカー希望小売価格は315万400円となっています。
軽自動車として考えるとあまりに高価ですが、完全専用シャシーに、専用ターボチャージャーを与えられた3気筒エンジンを積んだミッドシップスポーツカーの最後のエディションと考えればリーズナブルと言えるかもしれません。
もちろん標準車のほうは230万1700円から設定されていますから、生産終了の前にS660を手に入れたいのであれば、そちらをオーダーするという手もあります。
総生産台数はビートと同様の3万台半ばになりそう
ところで、S660を製造しているホンダオートボディーの前身は、八千代工業・四日市製作所で、S660のルーツ的モデルといえる「ビート」を生産していました。2台の軽ミッドシップは同じ工場から生まれていたのです。今回のファイナルエディション的特別仕様車に“バージョンZ”とついていますが、ビートの最後の特別仕様車もバージョンZという名前でした。このあたりもヘリテージを大事にしている様子がうかがえます。
ビートの総生産台数は3万3892台でした。S660は現時点で約3.2万台が生産されたといいます。S660の販売実績をみると2020年実績で2747台、おおよそのイメージで毎月200台強が売れている計算になります。S660が生産されるのは、あと1年ほどですから、このペースでいけばギリギリでビートの総生産台数を超えそうですが、ほぼ同じような数字に収まるのは、日本の自動車市場において軽ミッドシップ2シーターを求めているユーザーは、このくらいの規模感でしかないという証明なのかもしれません。
S660を新車で買えるラストチャンスに迷っている人に、S660開発時の開発責任者を務めた椋本 亮さんのメッセージをお伝えしましょう。
“残念ではありますが、S660は2022年3月で生産を終了します。S660にご興味がある方におかれましては、新車で購入できる最後の機会となりますので、ぜひ後悔の無いようじっくりご検討ください。そしてS660を愛車に選んでいただけましたら幸いです。”
ちなみに、発表された2022年3月というのは生産のエンドです。そしてS660の生産ラインは最大でも月間800台程度だといわれています。ファイナルということでオーダーが集中して、生産エンドまでの生産能力を超える受注が集まるようなことがあると、来年3月を待たずに受注停止となることも考えられます。最後のS660を狙うならば、はやめに動くのが吉といえそうです。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
※
写真1、2枚目:S660モデューロXバージョンZ
写真3、4枚目:ビート バージョンZ
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