自他ともに認めるクルマ好きで有名なフリーアナウンサーの安東弘樹氏が45台目の愛車に選んだのがスズキジムニーのMT。
そんなジムニーでハマっているのが林道ドライブなのだが、季節的にほとんどの林道は通行止めになり、ならばということでかねてより興味のあった「奈良井宿」にドライブとなった。奈良井宿のあとは、国道19号とワインディングを走って、お気に入りの苗木城跡へ。
MT車運転フェチ、安東アナがジムニーでの木曽路絶景ドライブで改めて感じた「ジムニーならではの醍醐味」とは!?
自称MTフェチの安東弘樹氏が愛車ジムニーの魅力について熱く語ります。
文/安東弘樹、写真/安東弘樹、編集部、AdobeStock
■宿場町とジムニー
昨年末から始めたYouTubeチャンネルで奈良井宿に行った時の模様を動画にして上げています。季節的にほとんどの林道は通行止めになり、ジムニーで、どんな動画を上げるか悩んでいた時に、ずっと興味があった「奈良井宿」を訪れてみようと思い立ち、仕事の予定を絡めて、翌日の休みを利用して実際に奈良井宿内にある宿に泊まる旅にしました。
長野県塩尻市にある奈良井宿は、中山道のちょうど真ん中に位置する宿場町。その古い町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており江戸時代の面影を色濃く残す(HIYORIKO@AdobeStock)
昨年11月下旬でしたので、まだ雪は降らないと思っていたのですが、そこはオールテレインタイヤを履いたジムニーですから、いざという時にも安心です。
当日は長野自動車道塩尻インターチェンジから国道19号線を経由して奈良井宿に入りました。
予約サイトを使って奈良井宿内にある宿を予約すると、その宿からメールが来て、「弊館は宿場街のなかにあるので、(一般車通行止め)と書いてありますが、そのまま宿の駐車場までお入りください。出発の際も、同様に宿内を走行して、奈良井宿から出発してください」とのご連絡をいただきました。
これは嬉しいお知らせです。宿場街を、ゆっくりクルマで走る、というのが長年の夢でしたので、このような形で叶うとは思いませんでした。
仕事を終えて夕方、暗くなる直前に奈良井宿に到着。しかし、かなり激しい雨が降っており、宿の駐車場にクルマを停め小走りで宿に入りました。
■軽規格のジムニーはレトロな宿場街にベストマッチ
優しい雰囲気の女将さんに出迎えていただき、襖だけで区切られた昔ながらのお部屋に通されました。江戸時代から続く本館とは違う建物でしたが、それでも昭和初期の建物で、雰囲気は「素晴らしい」のひと言です。
古いとはいっても、肝心なところはリノベーションされており、不便なことはありません。すっかりリラックスして、貸し切りのお風呂に浸かり、近くの部屋のテレビの音以外は快適に過ごし、眠りにつきました。
翌日は、チェックアウトの前に少し宿場街を散策し、当時の建物を利用したカフェでチーズケーキとコーヒーをいただき、改めて宿を後にしました。宿の駐車場から奈良井宿の出口まで、歩行者の皆さんに細心の注意を払い、ゆっくりと走行し(時速10km程度)、宿の雰囲気を堪能することができたのです。
ここでジムニーの美点が遺憾なく発揮されました。軽自動車規格なので車幅は狭く、宿場を歩いている方々の邪魔になりにくいのです。しかも車高は高いので遠くまで見渡せ、より安全に運転できました。
■国道19号線を80km走って苗木城跡へ
当時とほとんど変わらない景観の宿場街を現代のクルマで走行する、という夢が実現したのです。すっかり嬉しくなった私は以前行ってみて、その景色にすっかり魅了されたにもかかわらず隣接の資料館が休館だった、苗木城跡に行ってみることにしました。
岐阜県恵那市にある苗木城跡までは旧中山道と並行する国道19 号線を通り、80kmほど距離があります。
一般道での80kmというのはかなりの距離感ですが私にとっては、嬉しいかぎり。
時間も充分にありますので、高速道路を使わずに中山道の名残を辿るドライブを楽しむことにしました。
ちなみに、この選択がジムニーの燃費を向上させることになるのを、後で実感することになります。
■MTのジムニーでワインディングを堪能
国道19号線を離れて苗木城跡へ向かう間に数kmのワインディングがあり、MTフェチの筆者はジムニーのスポーツカーとは違う独特な乗り味をご機嫌に堪能した(「安東弘樹 / no car, no life」YouTubeチャンネルより)
国道19号線はまさに風光明媚で、少なくとも当日は渋滞も皆無でした。しかも、奈良井宿を出た直後から粉雪が舞い始め、その景観と相まって、終始非日常感を味わうドライブになっています。さらにこれまで私が訪れて感銘を受けた馬籠宿や妻籠宿も通過しながら2時間半の夢のようなドライブの後、苗木城跡に到着しました。
途中、国道を離れた後には、これまた牧歌的な景色のなかを通るワインディングロードがあり、ここでMTを駆使して走った際には、痺れるほどの快感を味わえたことを付け加えておきます。
もちろん、ライトウェイトスポーツカーのような軽快な走りとは違う趣のドライブなのですが、粉雪と落ち葉が舞う滑りやすい路面をがっちりと掴むタイヤで、ロングストロークのシフトレバーをそれぞれのゲートにしっかりと入れて走る、というサーキット的なスポーツ走行とは別のシフトチェンジの醍醐味を楽しむことができました。
■MT操作の快感を知らないなんて「人生の大半を損している」
これがATだったら、非力なエンジンと組み合わされているだけに、頻繁にキックダウンを繰り返して耳障りだわ、音のわりに前には進まないわ、で運転を楽しむことはできなかったと思います。非力ながらも自分が選ぶシフトポジションのゲートにシフトレバーを入れて、自分が想定できる音と加速感を味わう。これぞMTの醍醐味ではないでしょうか?
私はお酒が飲めないので、たまに「お酒が飲めないなんて人生の半分は損している」などと言われることがありますが、私に言わせれば、MT操作の快感を知らないなんて「人生の半分、どころか大半を損している」と申し上げたいです(笑)。
先ほど申し上げた、奈良井宿での取り回しも含めて、シエラではない「軽」の「MT」のジムニーにしてよかったと、改めて実感しました。
そして奇跡的に苗木城跡に着く頃には雨もあがり、小山の頂上にある天守跡からは絶景を拝むことができて大満足のジムニー小旅行となったのです。
■今回の旅は私のジムニー史上最高の燃費を記録
私史上ジムニー最高の燃費「15.7km/L」を記録。これはひとえに空いている国道を80km走った恩恵と言える。高速道路主体走行での燃費は12.0km/L 前後
しかし、帰路に着いてしばらく経って、凄いことに気付きます。私は、前回苗木城跡を訪れた時に休館だった資料館に行くために再訪したことに気づいてしまいました。
雨があがったばかりの景色に大満足してしまい、駐車場を出た時間にはまだ開館中であったにもかかわらず、迷わず帰路についてしまったのです。まさに痛恨……なんということでしょう……。
次の日の仕事は早い時間からだし、しかたがないか……と無理矢理自分に言い聞かせました。
帰りは高速道路を使い、順調に走って自宅のある千葉に到着。給油警告灯が点いたので、帰宅直前に自宅近くのガソリンスタンドで給油しました。その際に燃費チェックをしたところ、なんと15.7km/L という私のジムニー史上最高の燃費数値が出たのです(注:満タン法での計測では15.2km/L)。やはり高速道路だけでなく、80kmほどの距離を空いている国道で走れたのがよかったのでしょう。
高速道路中心での長距離走行時の燃費は12.0km/L 前後ですので、やはり軽自動車は高速道路よりも一般道の速度域で実力を発揮できるようです。
最後に痛恨の事実を、もうひとつ。今回、動画は撮ったのですが、楽しすぎて静止画をほとんど撮っておらず、本記事に載せるこの時のジムニーの写真がオンボード平均燃費数値の写真しかなかったことをお詫びします。
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