皆さん、こんにちは。自動車ライターの伊藤梓です。
前回のモナコGPに引き続き、第6戦のアゼルバイジャンGPは、バクーの歴史的な街並みが広がる市街地コースです。モナコほどではないですが、全体的にコース幅が狭く、ストレートが長いのが特徴です。
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「市街地コースで抜きづらいから、予選から大きく順位は動かないかな」と思っていたのですが、終わってみれば、今シーズンのなかでも、大波乱のグランプリとなりました!
文、イラスト/伊藤梓、写真/HONDA
【画像ギャラリー】F1第6戦アゼルバイジャンGPはモナコに続いて市街地コース!! 角田は!? フェルスタッペンは!?
■観戦経験を重ねた筆者、角田裕毅の好調を敏感に察知!?
角田裕毅の好調を感じ取った筆者の観察力!!
私は、例によってフリー走行から観戦していたのですが、角田選手が2回目のフリー走行(FP2)あたりからぐんぐん調子を伸ばしていることが気になりました。
角田選手は、モナコに続いて、バクーは未経験のコース。それにも関わらず、FP2では10番手タイムをポンと出したり、さらにFP3では8番手タイムで終了したりと、今回はかなり期待が持てそうです。
バクーは、タイトなコースなので、フリー走行からクラッシュするドライバーも多数。予選でも、その波乱は続きました。予選1回目(Q1)開始から、ものの数分でアストンマーティンのストロールがクラッシュ!
バクーは直角に曲がるコーナーがいくつかあり、ストロールがクラッシュした15コーナーは、特にクラッシュ率が高い様子。狭い市街地コースは、クラッシュによって赤旗が出てやすいため、予選でアタックする時間が無くなる可能性があることも難点のひとつ。
Q1では、クラッシュが2回起きるなど、荒れた展開になりましたが、角田選手は11位で通過することができました。しかし、Q2を通過するには、10位以内に入らなければいけません。ドキドキしながら見守っていると、1本目のアタックは12位。Q2を通過できるボーダーラインのタイムまで、あと0.4秒足りません。
■なんと0.8秒も短縮! 角田初のQ3進出!
初めてQ3へと進んだ角田裕毅。Q3ではクラッシュに終わったが、成長がうかがえる走りだった
F1では0.1秒タイムを縮めるのも難しい世界。「通過は厳しいか……」と思いながら見守る、2本目のアタック。角田選手は、クリアになっているところに上手くコースイン。
さらにホームストレートで、前を走っていたアルピーヌのオコンを捕まえてトー(スリップストリーム)を使い、スピードを増していきます。コントロールラインを通過した瞬間、なんと角田選手は4番手に飛び込みました!
トーを使ったとはいえ、先ほどの1本目のタイムから、実に0.8秒も短縮! これには私も絶叫(笑)。角田選手は、まだ荒削りかもしれませんが、この短時間でここまでタイムを縮められるということは、やはり何か“持っている”選手なのでしょう。
Q2は、その後マクラーレンのリカルドのクラッシュによって赤旗終了。並み居る強豪を前に、角田選手はQ2を4番手で通過。自身初のQ3進出を果たしました!
しかし、ここまで調子が良いと不安になるのが、クラッシュ。すでにQ1、Q2で3台もクラッシュしているので、「まずは無事に帰ってきて!」と祈りながらQ3の行方を見守ります。
1回目のアタックは、角田選手が前を走り、ガスリーが後ろについて、トーを使ってタイムを伸ばす作戦です。その結果、角田選手は8番手、ガスリーは4番手タイムを記録。そして、アルファタウリは、タイヤ交換せず、そのまま次のアタックに入りました。
その周で、タイヤ交換した他のチームもコースインしてきました。角田選手の前には誰もおらず、トーは使えません。それでもタイムを出さなければいけない最後のアタックラップ。その思いが強すぎたのか、角田選手は、90度に曲がる3コーナーでクラッシュしてしまいました。
最後は残念だったものの、これまで角田選手がミスしてきたクラッシュとは違い、攻め切った上でのクラッシュだったので、個人的には前向きな失敗だと感じました(赤旗でタイムを出せなかった選手には申し訳ないですが)。
■自己最高位の7番グリッドからスタート!!
決勝は自己最高位の7番グリッドからのスタートとなった角田裕毅
決勝は、マクラーレンのノリスのペナルティもあり、角田選手は最高位の7番グリッドからのスタートとなりました。ファンにとっては心躍る展開です。
スターティンググリッドを見ると、ポールポジションは前回に引き続きフェラーリのルクレール、2番手がメルセデスのハミルトン、3番手がレッドブルのフェルスタッペンです。
いよいよグリーンフラッグが振られ、レーススタート!角田選手は、スタート直後にアルピーヌのアロンソにオーバーテイクされ、8番手に後退。フェラーリは、思いのほかレースペースが良くないようで、ハミルトンがルクレールをオーバーテイクしてトップに立ちます。
その後もルクレールはずるずると後退し、ハミルトン、フェルスタッペン、ペレスの3人がレースをリードしていく展開になりました。
先に動いたのは、ハミルトンです。12周目でピットインし、ハードタイヤに交換。フェルスタッペンも猛プッシュしつつ、次の周にピットインしました。レッドブルの素早いピット作業にも助けられ、ピットアウト後には、ハミルトンの前へ出てオーバーカットすることに成功!
その後、ペレスもオーバーカットに成功し、レッドブルが実質1、2位を独占します。角田選手は、ハードタイヤに交換した後も8番手を守りながら走行。タイヤ交換後は、ほぼ順位は変わらずレースは推移していきました。
流れが変わったのは、31周目。アストンマーティンのストロールが、ホームストレート上で突然のバースト喫し、そのままクラッシュしてしまいました。まさかこのクラッシュが最後の大波乱のきっかけだったとは誰も思わなかったことでしょう……。
再スタート時に多少の順位変動はあったものの、トップ集団は変わらずフェルスタッペンが率いています。フェルスタッペンは、その後も2番手以降をぐんぐん引き離し、32周しているハードタイヤでファステストタイムを叩き出すなど、「このまま優勝できる!」と確信するほど、力強い走りを見せています。
レッドブルにとっては何もかもが順調に思えたその時。黄旗が振られたかと思うと、ホームストレートの映像が大写しになりました。そこにはデブリがバラバラに散らばった路面と、クラッシュしたであろう、紺色のマシンが。
「フェルスタッペンだ……!」
絶望的な気持ちで映像に見入りました。レースも残り4周というところで、まさかのバースト。レッドブルチームからFIAに対して「予兆のないバーストだったので、全車両タイヤ交換をした方がいいのではないか」と無線が飛びます。
それもあってか、ストロールのクラッシュ時とは違い、赤旗が出て、全車ピットインすることになりました。
■残り2周からレース再開!! 最後の超スプリントを制したのは!?
波乱のレースを制したのはレッドブル・ホンダのセルジオ・ペレス。レッドブル移籍後初優勝となった
マシンとデブリの回収で、しばらくレースは中断。レースは残すところ、あと2周。「このまま赤旗終了かな?」と思いつつ、フェルスタッペンのクラッシュのショックが大きく、まだ受け入れられない状態です。
現時点では、1位ペレス、2位ハミルトン。前回のモナコGP終了時点では、フェルスタッペンがドライバーズランキング1位でしたが、このままアゼルバイジャンGPが終了すれば、ハミルトンに1位を奪還された上に、ポイントも大きく離されてしまいます。
「チャンピオンになるためには、この差は大きすぎる……」意気消沈していると、レースを再開するというアナウンスが。
正直、「やるの?!」と驚きました。ストロールとフェルスタッペンが同じようにバーストしたのを見て、嫌な予感が続いていたからです。全車タイヤ交換したものの、「何かまた起きたらどうしよう」という不安が募ります。
一方で、各チームとドライバーは、やる気満々の様子。どのチームも、2周の超スプリントレースのチャンスを活かし、「ひとつでも順位を上げてやろう」という思いのようです。
再び全車グリッドに整列し、緊迫した空気のなか、再スタートが切られます。シグナルがブラックアウトすると、2番手のハミルトンが良いスタートダッシュを見せました。1番手にいたペレスも、何とかハミルトンを押さえようと、1コーナーに飛び込む際、ブレーキングを遅らせて対抗します。
すると、次の瞬間、さらなるレイトブレーキングを狙ったハミルトンが、完全にブレーキをロックさせ、白煙を上げながらコースオフしたではありませんか!
ハミルトンは、最もミスが少ないドライバーとして知られていますが、今シーズンは追い詰められて精彩を欠くシーンが見受けられます。そのままハミルトンは、15番手まで転落。ポイント圏外まで追いやられてしまいました。
上位で混乱が起きるなか、角田選手に目を向けると、6位から再スタートしていたのが、若手のなかでも勢いのあるノリスと、2度タイトルを獲得しているアロンソにオーバーテイクを許した様子。
角田選手は、そのまま7位でチェッカー受けました。まずは、初戦以来、ポイントを獲得できたことに歓喜!ここまでうまく噛み合わないレースが続いていましたが、これをきっかけに角田選手らしい走りを取り戻してくれたらいいなと感じました。
■チャンピオンシップリーダーは依然フェルスタッペン
最近精彩を欠くハミルトンだが、このまま終わるはずがない! チャンピオンシップの行方から目が離せない
そして、ハミルトンがノーポイントに終わったことで、チャンピオンシップリーダーは、フェルスタッペンのまま。ハミルトンファンにとっては残念だと思いますが、ホンダを応援するファン(私)としては、正直ホッとしました。
また、今回の表彰台は、1位がレッドブルのセカンドドライバーであるペレス、2位が移籍後初の表彰台であるアストンマーティンのベッテル、3位が角田選手のチームメイトであるアルファタウリのガスリーと、珍しい顔ぶれが揃ったことも、個人的には嬉しいグランプリでした。
次戦のフランスGPは、角田選手も経験のある、ポール・リカール・サーキット。今回の結果で弾みを付けて、次戦でも良い結果が残せることを祈っています!
【画像ギャラリー】F1第6戦アゼルバイジャンGPはモナコに続いて市街地コース!! 角田は!? フェルスタッペンは!?
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みんなのコメント
最初は角田に限らずみんな様子見でアタックしてたから、全員その後ぐんぐん上がってたでしょ