レーシング活動から市販車へ
古くは「TMSC-R」だろうし、ちょっと前なら「TRD」、今なら「GAZOO Racing(GR)」。
【画像】アクアGRスポーツ、ヤリス・クロスGRスポーツの細部【標準車と比べる】 全83枚
他のプロスポーツのような有志によるクラブチーム的なイメージは強まっているが、モータースポーツにおいては実質トヨタ・ワークスである。
ただ、勝利を活動の唯一無二の原動力としている訳でもない。
例えば、水素エンジン車によるレース参加が象徴的だが、GRの活動ではレーシングフィールドで得た知見・技術の“市販車へのフィードバック”が重要であり、それを最も分かりやすく具現化したのがGRブランド車である。
GRの市販モデルは3系統で構成する。
限界性能を追求した「GRMN」を頂点として、スープラや86等が属し車体設計からスポーツカーとして開発された「GR」、そしてここで試乗したアクアとヤリスが属する「GRスポーツ」である。
やり過ぎない 薄味デザイン
「GRスポーツ」はいずれもトヨタ標準ラインナップをベースに開発され、性能面では最も穏やかなブランドである。
内外装とサス周りを専用設計とするが、搭載パワートレインのスペックはベース車と共通。なお、アクア、ヤリス・クロスともに標準系の中間グレードとなる「G」をベースに開発されている。
スポーツモデルなら走りが一番気になるところだろうが、GRスポーツのキャラを分かりやすく表しているのが内外装。スポーツモデルにありがちな「熱さ」を感じない。
例えばヤリス・クロスGRスポーツはベース車からラジエターグリルのメッシュのデザイン変更などが加えられているが、遠目には標準車と見分けが難しい。
アクアは専用バンパー等でフロントマスクを変更したので、前方からは一目瞭然だが、フレンドリーから精悍に嗜好を多少変更した程度で、攻撃的にもマッチョにも見えない。
内装/オプションをチェック
内装は、シートやステアリング等がGRスポーツ専用仕立てとなる。
スポーツシートはこれ見よがしの土手盛りもなく、乗降の邪魔にもならない。
さらに言えば、アクアGRスポーツは運転席イージーリターンのOP装着も可。
OP設定に関しては、ヤリス・クロスGRスポーツはベース車に比べて制限が多めだが、アクアGRスポーツでは標準系では「Z」のみに設定されるカラーHUDのOP装着も可能であり、標準系と同じ感覚でOPを選べるのも特徴である。
要するにベース車の使い勝手を損ねるような部分はない。
スポーツの演出はごく控え目であり、ちょっとスポーティ、ちょっとプレミアムくらいで抑えているのが大人っぽい雰囲気を生み出す。
元ネタを台無しにしない一工夫といった感じが、粋でもありオシャレにも思えた。
車体の変更点について
ヤリス/アクア/ヤリス・クロスは基本プラットフォームを共用している。
ならばGRヤリスのサス周りを移植すれば……と考えても可笑しくないが、GRヤリスとGRMNヤリスのプラットフォームはGA-BとGA-Cを組み合わせたオリジナル。
ただ、強化ブッシュなど部分的にはGRヤリスから技術移植されている。
また、アクアGRスポーツ、ヤリス・クロスGRスポーツともにフロアトンネルの2か所とロアバックにブレースを入れ車体剛性を強化。バネ/ダンパーだけでなく関節や骨格まで手を加えている訳だ。
もたらされたフットワークだが、アクアGRスポーツとヤリス・クロスGRスポーツで印象が異なる。
(つづきは「試乗/価格編」で)
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