極上の体験を劣化させないために
text:John Evans(ジョン・エバンス)
【画像】老いても魅力は衰えず【ちょっとクラシックなフェラーリ6選】 全104枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
ようやく、フェラーリの魅力がわかってきた。360スパイダーのマニュアル車を借りて、お気に入りの道で運転していたときだ。
それまでミッション操作は面倒で、クラッチは重すぎるだろうと思っていた。しかし、実際にはシフトレバーは完璧に調整されており、クラッチは心地よく軽かった。サスペンションは硬くて乗り心地が悪いのではないかと思っていたが、やはりそれも間違いで、しなやかで快適だった。
3.6L V8エンジンには何の疑いもなかった。8500rpmのレッドラインまで回転数が上がると、マラネロの心臓から湧き上がってくる音に胸を躍らせた。
360の運転は素晴らしい体験だったが、それと同じくらい信じられないのは、そのわずか1時間ほど前に、360はガレージの手術台のような場所に置かれ、ホイールをはじめ部品の多くが取り外されていたということだ。
タイミングベルト、ブレーキライン、燃料ライン、クーラントホース、燃料ポンプ、インジェクターレール、パワーステアリングホース、ステアリングゲイター(ラックブーツ)、何十個ものOリング……数日かけて、英スウィンドンにあるフェラーリ正規ディーラーの2人の若いメカニックによって、これらすべてが取り外され、交換されたのである。
わたしはこの作業を見届けようとスウィンドンにやって来た。なぜ資格を持った整備士(ジャック)と有能な見習い(ジェームス)が、18年前の360スパイダーに何時間もかけて作業をしたのか、その理由を知りたかったのである。
トラブルを防ぐ予防メンテナンス
その答えを聞くまでに時間はかからなかった。クルマの横に置かれた台車の上には、古い部品がいくつも置かれていた。その中には、短い燃料ホースもあった。握ってみると、両端の内側の面に小さな亀裂が入っている。
360のような年代モノのクルマでは当然のことだが、ジャックの説明によると、これ以上劣化させると、ホースが破れて燃料が漏れてしまう可能性があるという。
「予防的メンテナンスを行っているんです」と彼は言う。
「定期点検では行わない作業です。オイル、フィルター、プラグ、ブレーキなどは定期的に交換しますが、ホース、ブレーキライン、燃料ポンプなどは故障してから交換します。わたし達は、故障する前に交換するのです」
フェラーリオーナーの懐が深いのは知っているが、必要かどうかわからない作業にお金を払うほど深いのだろうか?実はこの2人のメカニックは、360に「フェラーリ・プレミアム」と呼ばれるメンテナンス・パッケージの作業を施していたのだ。
2019年に開始されたフェラーリ・プレミアムは、登録から15年目までをカバーする「ニュー・パワー」保証の適用外となってしまった古いフェラーリを、徹底的にチェックして最新の状態に戻し、その証明書を発行するという予防的なメンテナンス・パッケージだ。
燃料、ブレーキ、冷却、ステアリング系のシステムを対象としており、現在、360、456、550、575、612スカリエッティ、F430、599、フェラーリ・エンツォなど、13車種が対象となっている。オーナーの予算に応じて、複数回に分けてパーツを交換することも可能だ。
いずれにしても、フェラーリ・プレミアムを受けるには、最低でも「スターター・パック」の購入が必要となる。スターター・パックの内容と価格はモデルによって異なるが、例えば360の場合、ポンプ、パイプ、バルブなどの燃料系のパーツが含まれている。英国では付加価値税(VAT)と人件費(ディーラーによって異なる)を含めて約4000ポンド(約60万円)、プレミアムはさらに8400ポンド(約130万円)かかる。
これまでのところ、英国では50台以上、欧州では約400台がこのプログラムに参加しているという。
事実:フェラーリにはお金がかかる
フェラーリ・プレミアムに加えて、20年以上経過したクルマを対象とした「フェラーリ・クラシケ」というプログラムがある。旧車を点検して認証するフェラーリの部署にちなんで名付けられたもので、ディーラーによる検査から始まる。
英国のフェラーリ・ディーラーは、クルマを隅々まで検査し、特にオリジナル性に注意を払い、写真付きの報告書を作成する。報告書はフェラーリ・クラシケに送られ、チェックを受けて承認される。承認されたクルマには、状態とオリジナル性を証明する証明書と、それを裏付ける証拠が詰まった大きな革製のファイルが送られる。希少なモデルにとっては特に、その価値を高める資産となるだろう。
フェラーリ・プレミアムと同様に、クラシケの価格はモデルによって異なる。最も安いものでもVAT込みで約5215ポンド(約80万円)、これにディーラーの検査料1200ポンド(約18万円)がかかる。360と550ではこの価格となる。
最も高価な場合、1万5645ポンド(約240万円)とディーラー検査料がかかる。1958年の250TRなど、希少性の高いモデルにのみ、この価格が適用される。
高走行距離の360オーナーにとっては、クラシケはあまり魅力的とはいえない。だが、わたしが乗せてもらった360のように、低走行でコンディションの良い個体であれば検討する価値があるし、売却時にも有利に働くかもしれない。
これまで見てきたように、費用は決して安くない。予防的なメンテナンスにそれだけのお金を払う価値があるのだろうか?その答えを出すには、従来の価格やコストパフォーマンスの概念を捨てなければならない。
事実、フェラーリは、所有と維持に多大なコストがかかる特別なクルマだ。些細なトラブルでも、それを解決するためには多額の費用がかかるが、フェラーリ・プレミアムは、そのようなトラブルを未然に防ぐことを目的としている。
何年も愛用するつもりなら、プレミアムを受けることが大きなメリットとなる。この作業を終えれば、フェラーリが意図した通りの運転を楽しむことができる。
フェラーリを消耗させない作業
フェラーリ・プレミアムは、それを実行するメカニックがいてこそ成り立つものだ。わたしが訪れたスウィンドンのフェラーリ・ディーラー、ディック・ロベットは、幸運にも優秀で若い2人のメカニックを抱えている。ジャックは8年前に見習いとして入社し、4年間のトレーニングを経て資格を取得。同僚のジェームスは、1年半前に見習いとなった。
わたしが運転した360スパイダーは、ジャックにとって3台目のプレミアム適用車だ。2人のメカニックは、古いフェラーリの整備経験を積むことができるだけでなく、日常のサービス作業を超えて自分自身に挑戦するチャンスでもあるため、このプログラムを気に入っているという。
ジャックは、1週間におよぶ作業は充実したものだったと語っている。
「主要な付属品のほとんどを交換しましたが、そのためにはしばしば大掛かりな解体が必要でした。例えば、燃料タンクを取り外すには、まずトランスミッションを下ろさなければなりません。でも、それだけの価値はありますよ。プレミアムがあれば、クルマは決して消耗することなく、長く楽しむことができます」
ちなみに、ジャックとジェームスが修理した360スパイダーは、2003年式で走行距離1万3000km、現在11万ポンド(1680万円)で販売されている。きっと誰かを幸せにするだろう。
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