プジョーが発売したマルチパーパスヴィークルのリフターは、 SUVテイストを盛り込み、ルノー・カングーや兄弟車であるシトロエン・ベルランゴに立ち向かう。ここでは、いま狙い目のフレンチMPVの3台をピックアップして徹底分析してみた。
フレンチMPV市場に異変あり!
テーマは”ワーケーション”! 「カングー・キャンプ2020」が10月に開催
日本の路上でもっとも目にするルノーは何だろう? それは、若いファミリーを中心に支持されているカングーに違いない。実際、カングーは日本市場ではルノーの一番人気モデルであり、2019年は販売台数の3分の1以上を占める。シンプルなデザインとしゃれた雰囲気、広大なラゲッジスペースが多くのファンを魅了し、日本市場で揺るぎない地位を確立しているのはご存知のとおりだ。
現在販売されているのは、2007年に日本導入が始まった2代目。初代が5ナンバーサイズであったのに対し、現行型は全長×全幅×全高=4280×1830×1810mmの3ナンバーサイズに拡大。当初はファンのあいだから“デカングー”と揶揄されたが、デビューから10年以上経ったいまでも、その人気に陰りはない。現在は、1.2L直列4気筒ターボと6速オートマチックを積むZEN EDCと、6速マニュアルのZEN6MTというラインナップで、ともに前輪駆動仕様だ。
長らく日本ではカングーの独り勝ちの状況が続いてきた輸入MPV市場、ここにきて、同じフランスのシトロエンとプジョーがライバルを送り込んできた。それが、シトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターである。2018年に登場したこの2台は基本設計を共有するフレンチMPVで、カングー同様、4ドアボディと2列5人分のシート、そして、広い荷室を持つのが特徴だ。
ベルランゴのボディサイズは、全長×全幅×全高=4405×1855×1840mmと、カングーよりひとまわり大きい。180mmと少し高めの最低地上高が特徴のリフターは、全長×全幅×全高=4405×1850×全高1890mmというサイズ。どちらもパワートレインは1.5L直列4気筒ディーゼルターボと8速オートマチックの組み合わせで、両モデルともに前輪駆動を採用する。
さて、この3台、リアサイドにスライドドアを採用したり、2列シートで5人乗りとしているところなど共通点が多いが、それぞれの個性につながる相違点がたくさん見つかるのも事実だ。たとえばリアゲートもそのひとつ。カングーの場合、2分割式のダブルバックドアを採用するため、片側だけ開閉したり、狭い場所でドアの開け具合を調整することができるのが便利だ。しかし、リアゲートを閉めた状態では中央部に柱が残るので、ドライバーの後方視界の邪魔になるという弱点がある。
その点、ベルランゴとリフターは跳ね上げ式のテールゲートを採用するため後方視界が良好で、しかも、狭い場所でも荷室から荷物の取り出しができるよう、ガラスハッチが設けられているのだ。
荷室については、後席を使用した状態で、カングーの奥行き約90cmに対し、全長に余裕があるベルランゴ/リフターは約10cm長い100cmを確保。幅は約120cmでほぼ同じ。高さはカングーが約110cmだが、ベルランゴとリフターはルーフ後方にシーリングボックスがあるため、低い部分の高さが約100cmにとどまる。ラゲッジトレイの高さを変えて効率的に収納できたり、後席に加えて助手席を倒してスペースを確保できるのは3台に共通だ。
天井部分に棚が多いのも、これら3台の特徴だ。ベルランゴとリフターでは、ガラスルーフとルーフストレージが一体になったモジュトップにより、機能性に加えて、スタイリッシュなデザインを実現したところが実に魅力的だ。一方のカングーは、前席天井に蓋のないオーバーヘッドコンソール、後席天井に蓋付きのオーバーヘッドボックスを設置。ベルランゴとリフターのようなシャレっ気はないが、高さ方向に余裕があるのと、蓋がある安心感がうれしい。
多くの点で強みを示すベルランゴとリフター
コクピット周辺の収納は、ベルランゴとリフターが充実。とくにリフターは、ベルランゴには備わらないセンタコンソールがあるぶん、小物の置き場には困らない。
後席は、カングーが2分割式、ベルランゴとリフターが3分割式だが、3台とも大人3人がさほど窮屈な思いをせずに移動できるスペースを確保し、ヘッドルーム、ニールームにも十分な余裕がある。細かいところでは、チャイルドシートISOFIXアンカーがカングーでは後席の左右2席に設けられるのに対し、ベルランゴとリフターは3席すべてに設置される。家族構成によっては選択時のポイントになるだろう。
一方、乗り心地については、全高が高いということもあって、3台とも軽いピッチングが気になることも。ベルランゴは揺れは小さいものの収まりが悪く、最低地上高が高めのリフターは、それに輪をかけている。カングーもピッチングが気になり、乗り心地も他より硬めだが、そのぶん揺れの収まりは速く、個人的にはカングーの味付けが好みだった。
動力性能は、1.5Lディーゼルのベルランゴとリフターは余裕ある加速を見せる。オフロードをイメージさせるリフターでは、前輪駆動ではありながら、トラクションコントロールを用いて悪路でも最適なグリップを実現するアドバンスドグリップコントロールを採用するのが頼もしい。一方、 1.2Lガソリンターボのカングーでもストレスのない加速を見せ、十分満足のいく仕上がりだ。
先進運転支援システムは、ベルランゴとリフターが衝突被害軽減ブレーキやアダプティブクルースコントロール、レーンキープアシストなどを搭載するのに対して、カングーにはその手の装備がないのが正直つらい。そういった部分を含めて、クルマの完成度という意味では、新世代のベルランゴとリフターに軍配が上がるが、シンプルなデザインや手頃な価格のカングーは、ライフスタイルを楽しむための素材として、その魅力は色あせない。約30年前、カングーの前身であるルノー・エクスプレスで走り回っていた自分にとっては、飾らないカングーに懐かしさを覚えるからかもしれない。
LUGGAGE SPACE
BERLINGO
巨大なリアゲートはガラスハッチのみを個別に開閉可能。容量は通常時で597L、2列目シートを倒すと2126Lを確保する。
RIFTER
荷室容量はベルランゴと同様で、597~2126Lを確保。現行型プジョーで最大の容量を持つ5008の1862Lを上回る。
KANGOO
荷室はスクエアな上にバンパーレベルも低く、荷物の出し入れは容易だ。容量は通常時で 680L、後席を倒すと2866Lに。
【Specification】CITROEN BERLINGO DEBUT EDITION
■全長×全幅×全高=4403×1848×1844mm
■ホイールベース=2785mm
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1498cc
■最高出力=130ps(96kW)/3750rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1750rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=205/60R16:205/60R16
■車両本体価格(税込)=3,250,000円
お問い合わせ
グループPSAジャパン 0120-55-4106
【Specification】PEUGEOT RIFTER DEBUT EDITION
■全長×全幅×全高=4403×1848×1878mm
■ホイールベース=2785mm
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1498cc
■最高出力=130ps(96kW)/3750rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1750rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=215/65R16:215/65R16
■車両本体価格(税込)=3,360,000円
お問い合わせ
グループPSAジャパン 0120-840-240
【Specification】RENAULT KANGOO ZEN EDC
■全長×全幅×全高=4280×1830×1810mm
■ホイールベース=2700mm
■車両重量=1450kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1197cc
■最高出力=115ps(84kW)/4500rpm
■最大トルク=190Nm(19.4kg-m)/2000rpm
■トランスミッション=6速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=195/65R15:195/65R15
■車両本体価格(税込)=2,647,000円
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みんなのコメント
カングーとリフターが2分割、ベルランゴが3分割になります。
筆者はもっと確認して記事を書いてほしいものです。
先代シエンタとかファンカーゴとかこの辺に通ずるデザインで良かったのになぁ