過日、ボルボのXC60 AWD D4 R-DesignというSUVにて2日間、北海道をぐるりと回る機会を得た。期間中は北海道の大自然とボルボXC60の素晴らしき雪上性能ならびにオンロード性能に酔いしれていたわけだが、それと同時に「あること」も、常に頭の中にあった。
それは「ところでボルボXC60とオレが持ってるスバルXVって、どっちがより優れたSUVなのだろうか?」ということだ。
馬鹿げた問いであることは重々承知である。XC60とスバルXVではクラスがまるで違う。
ギャラリー:300万円弱のスバル XV と約700万円のボルボ XC60による異種格闘技戦今回無謀な戦いに挑んだ、筆者の愛車スバルXV。高性能4WDにスバルお家芸の安全デバイス「EyeSight」などを備え、発売以来高い人気を誇る。価格は220万円~。ボルボ XC60 D4 AWD R-デザイン|VOLVO XC60 D4 AWD R-Design2台で圧倒的な差を感じさせるのはやはりインテリア。1つ1つのデザインや質感は比べるまでもない。唯一の対抗手段は安全デバイスの性能か。D4が積むエンジンは水冷4気筒ディーゼルで排気量は1968cc。ディーゼルらしい低回転からの大トルクを特徴とし、最高出力190ps/4250rpm、最大トルク400Nm/1750-2500rpmというスペックになっている。ボルボ XC60 D4 AWD R-デザイン|VOLVO XC60 D4 AWD R-Design雪上ドライブも最新のAWD技術とスタッドレスタイヤがあればほぼ万全。限界ギリギリまでテストすれば違いも現れるかもしれないが、一般的な使用であればXVとXC60で大きな差は感じなかった。ボルボ XC60 D4 AWD R-デザイン|VOLVO XC60 D4 AWD R-Design2日間、旅のパートナーとして様々な素晴らしさを感じさせたXC60。ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッドの3つの動力源が用意されている。ディーゼルのD4は659万円~。いわゆる車格は1クラスか2クラスほど異なり、サイズ的にもXC60がDセグメントでXVはCセグメント。そして車両価格も、XC60 AWD D4 R-DesignのほうがスバルXVより2.5倍ほど高額である。ちなみにXC60のD4 R-Designが714万円で、XVの2.0e-S EyeSightというグレードは287万1000円だ。
そんな両者を比較するのは、「ところで井上尚弥と村田諒太って、どっちが強えの?」とナイーブに尋ねるぐらい馬鹿げている。
しかしスバルXVというSUVは──オーナーとしての贔屓目が多分に入っているのかもしれないが――ついつい上位の存在と比べてしまいたくなるほど出来が良いというか、コストパフォーマンスに優れる名作SUVなのだ(と筆者は思っている)。
それゆえ自分はボルボXC60に試乗中、その走行フィール等を脳内にメモるとともに、同じく脳内で「ボルボXC60 vs. スバルXV」という戦いも繰り広げていた。
それはすなわち「700万円以上のボルボXC60と200万円台のスバルXVって、どっちが強えの?」という不毛で馬鹿げた、しかし少々興味深い異種格闘技戦である。
走りでは以外に健闘できるXVまずはオンロード性能。ドライ路面の市街地をごく普通に走ったり、同じくドライ路面の高速道路をまずまずの速度で巡航したり、あるいはドライな山坂道をほどほどのペースで駆け抜ける際のフィールである。
これは「互角」と見た……と言うとボルボ愛好家各位から毒矢が飛んできそうだが、とにかく「ほぼ互角」というのが私見だ。
無論、400Nmというぶっといトルクを低回転域から発生させるディーゼルターボエンジンを搭載するXC60 D4のほうが、いわゆる出足も高速域での伸びも明らかに優れていることは言うまでもない。しかし常識的な速度域で直進または回頭している限りにおいては、「まあだいたい同じようなもの。どっちも素晴らしい乗り味なんじゃないですか?」というのが、現役XVオーナーとしての偽らざる評価だ。ただしブレーキのタッチと利き方に関しては、明らかにXC60が上であると感じたが。
お次はオフロード性能、すなわち主に雪上や氷上における安定感やコントロール性云々についてである。
これも……ほぼ互角と見た。や、厳密な比較テストをしたわけではなく、そもそもそこまでハードコアな雪道を真剣に攻めたわけではないので、ここはなんとも言えない部分ではある。もしかしたら、4WDに関する経験年数はスウェーデンのボルボを大きく上回る群馬のスバルが、ジャイアントキリングならぬ「高額車狩り」を果たす可能性はあるだろう。
そのあたりについては雪道走行に詳しい識者の意見を待ちたいところだが、自分が今回北海道の各所をXC60にて走り回ってみた雪上での印象と、真冬の岩手県界隈をXVで走り回った際の印象は「ほぼ同じ」なのだ。
新雪と圧雪、そしてシャーベット状とカチカチの氷状など、路面コンディションが目まぐるしく変化していくなかでも、スタッドレスタイヤを装着した両者の走行はひたすら安定している。それでもさすがにダメな局面においては、XC60の場合はドライブモードを「オフロード」にしてやれば統合制御によりあらかたの局面から脱出することができ、スバルXVの場合は「X-MODE」にすれば、これまた統合制御によりおおむねの悪路から脱出できる。「それでも、どうしたって限界はある」という部分についても、両者はほぼ同じだ。
そしてGQ読者層にとっては些末な話かもしれないが、燃費に関しても両者は似たようなものである。
ボルボXC60 AWD D4 R-Designで約1000km走っての実燃費は、車載の燃費計によれば12.1km/L。それに対してスバルXVの実燃費は、「2.0i-L EyeSight」というグレードを筆者が約2年間乗った場合で通算11.9km/L。まあXC60 D4は安価な軽油を使用するので、そちらのほうがより経済的だ。だが「まぁでもだいたい同じぐらい」と雑に言うことも許される程度の差でしかないのだ。
ここまでの「ラウンド」における私的採点を途中集計すると、結果は以下のとおりとなる。
●オンロード性能|ほぼイーブン(ブレーキはXC60が上だが)
●オフロード(雪上)性能|おおむねイーブン
●燃費性能|ほぼイーブンだが、燃料単価の関係でXC60 D4が上回る
予想通り後半戦はXC60の圧倒的優勢に車両価格200万円台のスバルXVは、ここまでは十分善戦した。奮闘した。だがこの先はXVにとっては鬼門。お次に戦わせたいのは「たたずまい」あるいは「高級感」「デザイン性」などと言われる要素についてだからだ。
これはもう700万円級のクルマ vs. 200万円台のクルマだからなのか、あるいは北欧と群馬の差がどうしても出てしまうのか、基本的にはボルボ XC60の圧勝であった。
スバルXVも、言ってはなんだがデザインセンスに優れているわけではないスバル車のなかでは突然変異的に洒落ていると思うのだが、「敵」はさすがにその何枚も上を行っている。
写真で見てもおおむね伝わるだろうが、インテリア各所の手触りやビジュアル、あるいは間近で感じる鉄板類のオーラなどについは「勝負にならない」というのが正直なところだ。
だがこれはもう当たり前の話で(なにせ700万円級 vs. 200万円台である)、筆者の正味の感想は「負けは負けたけど、スバルXV意外と善戦したなぁ」というものであった。負けて当然の試合であるのだが、決して0対20のコールド負けをしたわけではなく、「3対8で負けました」ぐらいのニュアンスなのだ。
以上の戦い(?)から見えたものは、下記のとおりサマライズできる。
すなわち、あくまで道具としてのSUV(人や荷物を十分に収容でき、舗装路だけでなく雪道や砂利道、泥道なども走れるクルマ)を求めているのであれば、無理にボルボXC60を買う必要はない。車両価格で200万円台、支払総額でも300万円ちょいとなるスバルXVで十分というか、十分以上である。
だが、そこに「伊達」というのか「洒脱」というか、あるいは「モテ感」「いいモノ感」と端的に言ってしまったほうがいいのか、とにかくそういった要素も確実にプラスさせたいのであれば、やはり四の五の言わずにボルボXC60を選んだほうが、圧倒的にシアワセになれるだろう。
ただ、もはや「高額で高級なモノを身につける=カッコいい」とは単純に言えない時代ゆえ、逆張り的にあえてスバル車を選ぶというのも、それはそれで素敵であるはずだ。スバル車オーナーとしての贔屓目抜きで、そのように思う。
だがそれは実際の運用を考えると、正直なかなかの高等戦術であろう。
一般的には、無駄に策は練らずにサクッとボルボXC60 D4を買い、優雅に金持ちっぽく、時にワイルドに乗りこなすことこそが、一般的な日本人男性の個人的な幸福度ならびに「周囲からの評価」を高めるうえでは肝要となるはずだ。
スバル車オーナーとしては残念なのだが、筆者は心からそのように思う。
文・伊達軍曹 写真・柳田由人 編集・iconic
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みんなのコメント
そんな事は記事ではなくブログで書け。
書くなら無差別級じゃない?