ジムニーの試乗記を書けという依頼だったが、ちょいお待ち。乗って走ってどうだったの話から始めるのはあまりにオーソドックスに過ぎる。これまで定番乗用セダンorハッチバック車ばかり乗り継いできた私が、なぜシエラに手を伸ばしたかをお話ししよう。いや、そう大した理由ではないのですがね。3ページ目では、購入にあたって何を参考にどうしたかのお話もしていきましょう(後が怖いのですが)。TEXT & PHOTO●山口尚志(HISASHI Yamaguchi)
■いきなり本格ヨンク(4WD)に走ったなぜ?
『よろしく! スズキ・ジムニーシエラ』オーナー目線で好き勝手にインプレッション
もともと本格4WD車(あえてSUVなどとはいわない)に興味はなかったが、どういった心変わりか、ジムニーだけは、ある時期から「いちどは所有してみたいクルマ」だと思い始めた。
ただその頃私は前車・マイナーチェンジ版日産ティーダを新車で手に入れたばかり。
ジムニーを買うことはあるまいと思いながら、ティーダを私用やら取材やらで走らせているうち、2008年3月の購入から9年半=2017年秋での走行20万キロ達成が見え始めたのは2007年初夏のことだった。
ちょうど10年を迎える翌2018年3月まで半年強ある。
私用に取材、いろいろなところを走ってきたが、今後、取材での長距離走行中、何かの不調が起きないとは限らない。
帰りならまだしも、行く途中での立ち往生で周囲のひとたちに迷惑をかけることは避けたいものだ。
そう考えると、余力あるいまのうちに入れ替えたほうが得策かも知れぬ。
不安要素も出てきていて、前の車検で、リヤショックアブソーバーからのわずかな油漏れの指摘を受けている。
右よりは左のほうが漏れが多いのだそうだが、逆に、リヤよりも負担が大きいはずのフロント側は左右とも異常がないというから不思議だ。
えらいぞ、ティーダの足まわり!
そろそろ次のクルマを半年がかりで検討するか・・・そう考え始めたとき、相変わらず三代目のままでいたジムニーが急浮上してきた。
「クルマの家電化」が叫ばれるようになって久しい。
そんな声を耳にするたび、「いや、そんなことはない」とかなり無理して反発していた私である。
だが、2010年12月に国内販売開始の純粋な電気自動車・日産リーフ(初代)でいよいよ降参。
EVでなくとも、ひと頃とは比べものにならないほどの電子化、過熱気味の低燃費志向になだれ込んだクルマたちに、本当はつまらなさを感じ始めてはいたのだ。
途端に、ジムニーを含む、いわゆるオフロード4駆というヤツらは、いったいどんな使われ方、楽しみ方をされているのかが知りたくなってきた。
Youtubeで見てみるとどうだろう、省エネ・省資源・省ナントカなどどこ吹く風とばかりに大地をかけまわるオフロード4駆たちが、草食グルマに辟易する目にいかに新鮮に映ったことか!
身軽さにものいわせ、ぴょこたんぴょこたん岩場を跳ねゆくジムニーが「わんぱくやんちゃ坊主」なら、道なき道を重厚な足取りでじわりじわり進んでいくランクルやパジェロ、ジープラングラーこそまさに「男の乗るクルマ!」だ。
私はいつも自分で料理をするが、低カロリーをよしとばかりに、油揚げを肉の代用にしたようなヘルシー一辺倒の食事をするより、よろしくないとわかっていても、高カロリーにまみれた肉料理のほうを選びたいし、満足度も高い。
母親から譲り受けた故障続きの4気筒550ccレックス(4速MT・1990年型の8年もの)、働き始めてから初めて自分のお金で買った、3年落ち中古のN15型パルサーセダン(油圧4AT・1996年型)、次に初の新車・後期型のU14ブルーバード(電子制御4AT・2000年)、そしてティーダ(CVT・2008年)・・・選択の余地がなかったレックスは別に、私はクルマ好きのくせに、そこいらとおりいっぺんのクルマ好き連中からクルマ好きとは認められないようなクルマばかり選んできた。
そういったクルマが性に合っていること、クルマに興味のない普通の人が選ぶようなクルマに好んで乗ることで、普通の人の立場に立ってクルマを見つめていくことができるというふたつが自然と合致していたのだ。
だがそれも3台4台続けばいいだろう。
ここいらでひとつ、趣味性の高いクルマに乗ってみようかとなったわけだ。
まずランクルに憧れるしラングラーも魅力だが、ハナから射程圏外。
新車は高いし、中古にしても安くない。
安かったとしても維持費がバカにならない。
かといって、他のカテゴリーに買いたいと思うクルマはもはや皆無だ。
となると、ひとり1998年のままでいたジムニーががぜん輝きを帯び始めてくるではないか!
うん、決めた。
次はジムニーにしよう。
とまあ、このような経緯で2017年初夏あたりからジムニーを模索し始めたわけだが、ここへきていきなり次期ジムニーの画像および動画がインターネット上にリーク!
一挙世間がジムニーに注目し始めた。
クルマを買うときはなぜかいつでも桜の頃=3月と決めていたから、モデルチェンジが2018年3月以前なのか以後なのかがまず気になった。
この頃、おおかたのスクープ記事では、新型の登場時期を「10月」と予想していたから、現行型は3月登録が可能と踏んだのだが、横滑り防止装置義務化(シエラは2014年型から対応ずみ)と歩行者脚部保護規制に対応できず、2月24日以降は登録不可=生産終了になることをすっかり忘れていたため、3月登録目標を前倒しせざるを得なくなった。
■維持費、特に税金面で不利なジムニーシエラに決めたなぜ?
当初、維持費の観点から軽ジムニーのつもりでいたのだが、よくよく考えた挙句、けちな話だが単純にオイル交換の頻度で決めた。
エレメントと同時のオイル交換は、ティーダでは1回につき工賃込みで約5500円(日産ディーラー)だった。
年によって長短があるものの、私の年間走行距離は平均2万2000キロ。
したがってオイル交換は、メンテナンスノート記載の「シビアコンディション」のBに従わなければならない(表1参照)。
ティーダでの条件を単純そのままジムニー&シエラにあてはめ、関連税&オイル(とエレメント)交換費用を試算してみると(表2参照)・・・
想像はしていたが、年間の納税額とオイル&エレメント費用を軽ジムニーとシエラ、比較ずくで見ると、いっけん軽ジムニーのほうが税金の面では有利でも、私のクルマの使い方ならオイル&エレメント交換代はシエラのほうが下まわり、出費の面では軽だからといってありがたみはないことがわかる。
たとえ数千円の差だとしても、軽ジムニーの方が出費が増えてしまうのである。
ここでは購入時にかかる取得税や、保険関連の数字を入れておらず、これらを含めたらどうなるかわからないが、少なくとも軽のイメージほどには安くはならず、トータルで見たらトントンになると考えてもいいのではないか。
ましてや軽ジムニーはターボ。
きちんと使おうと思ったら、シビアに交換時期を守らなければならない。
ティーダだって交換時期の指定はあったが、オイルの状態をときおりチェックしながら2万キロや3万キロはすっとぼけてそのまま使うことができたから、私の使い方ならデリケートなオイル管理を要求されるターボの軽ジムニーより、少々車両価格や税金が高くとも、ジムニーシエラの方がむしろ合っていると判断したしだいだ。
もちろん、判断材料は出費面だけではなく、静粛性や走りの印象、値引きの期待値などをも含んでいることはいうまでもないが、そのあたりについてはあとの機会にゆずりたい。
迷ったのは、標準モデルか、特別仕様の「ランドベンチャー」か。
この時期にジムニーを買うなら、軽ジムニーであれジムニーシエラであれ、9割がたが特別仕様車の「ランドベンチャー」を狙うのだそう。
だが、シエラ「ランドベンチャー」は税込み価格175万8240~186万9480円で、全ジムニーシリーズの中で一番高い。
その特別装備品にしても、多くが飾り立てパーツで見映えを変えるだけのものだし、好みの白はパール入りの特別塗装になってさらに高くなる。
そのどれもこれもに、価格上昇分に見合う必要性が認められなかったため、車両価格が約9万円安い、標準の「ジムニーシエラ」を選んだ。
■時流に乗らず、会社裏切り、値引き情報たどる先?
それにしても10年ぶりというひさびさの新車購入である。
21世紀の現代、インターネットで価格情報を得て新車購入に臨む人が多いのだそうな。
私の場合、クルマの仕様や本体価格の情報はメーカーサイトから得るが、値引き情報はやはりインターネットからよりも自動車誌から、そして実際に数店舗を見てまわり、肌で感じ取ってということになる。
これは私が自動車雑誌社にいるということと無関係ではないが、それ以前に、何でもかんでもいすに座ったまま、画面を見てマウスカチカチで完結というのはがらじゃないのだ。
時流に乗っていないのは承知の上。
やはりものを調べるなら、自分の足で動かなきゃ!
私が元来、落ち着きがない性格だったことが幸いしているようだ。
ここから先、インターネットよりも責任性がある(ものでなければならないと私は信じているが、その割にこの記事をネット用に書いているのがわれながらジレンマ)自動車誌からの情報で、新型ジムニー、またはほかの新車を検討中の方には、以下に述べる2誌をおすすめしよう。
新車の値引き情報入手のため、三栄書房・モーターファン・アーカイブ編集部にいる私がまず取った行動は、内外出版社「月刊自家用車」の購入だった(おい)。
18年前のブルーバード、10年前のティーダ、そしてこのたびのシエラ・・・クルマを買うときは、この月刊自家用車の値引き交渉ドキュメント「X氏」のページを毎度参考にしている。
さすがにジムニーシエラを検討する「X氏」はいなかったが、それでも長年忘れていた値引き交渉術を私に思い出させてくれた。
もうひとつ、今回セカンドオピニオンに据えたのが、ぶんか社から三栄書房に献本されてくる「ザ・マイカー」(おいコラ)。
こいつを勝手にかっぱらって自分の机に持ってきたのだが、これも「自家用車」と同じくらい役に立った。
自動車雑誌社の老舗を誇る三栄書房所属の身でありながら、値引き情報についてはよそ様の雑誌をアテにしたわけだ。
そんな姿勢を許す寛大さを、三栄書房のえらい人たちにはぜひともお願いしたいものである。
・・・これ以上この件に触れると、会社上層部からぶ厚いドアの重厚なお部屋にお呼ばれされるような気がするので、このへんでもうやめておこう。
話を戻して。
当初予定を早め、お正月ボケもまだ冷めやらぬ年末年始の休み明けから、数回に渡って数店舗をまわり始めたあとの1月28日。
照準をとあるスズキ販社1店舗に定めた。
というのも、その前にまわった業販店で契約をと思っていたのだが、穴があくほど見た見積りの内容と説明に納得がいかず、一気に買う気が失せたのだ。
詳細は省くが、手を変え品を変えのサービスパッケージ商品は、いっけん客に得なように見えて、やはり店側ががっぽり儲かるようにできている。
納得いかない点を指摘すると、若いセールス氏は
「おっしゃるとおりで、その点に気づかれるお客様(山口のこと)のような2割の方は納得されずに他のお店に行かれますが、気づかれずに契約されるお客様が8割いらっしゃるなら、実際にはそれでよしということになっておりまして・・・」
口ごもりながらも正直に答えてくれたのは好感だが、だからといって納得のいかないことにお金を払うことはできない。
この業販店とスズキ販社、仮に100万円なら100万円、両方が同じ金額を提示してきたとしても、その意味はまるで異なるのだ。
ここは保留に見せかけ、とっとと店を出ることに。
外はもう真っ暗だったが、やはりあそこのスズキ販社かなと、先週行ったスズキ自販に電話を入れてから再度赴く。
2月に入ったら「歴代ハイエースのすべて」(またまた宣伝・1080円。3月26日より発売中。買ってね!)の制作が始動するから、いつまでも引っ張るわけにはいかないのだ。
閉店間際にもかかわらず、向かった店舗で応対してくれたのは前回と同じ女性セールス氏。
ジムニーシエラの4AT車、車両本体価格・税込み177万9840円。
税金、諸費用に本体値引き、用品オプションとその値引き、加えて無料サービス、下取り車買い取り5万もろもろ・・・
女性だからといって怯まず、先週の続きをビシッと決める!
金額詳細は差し控えるが、ハンコ持参の旨と、
「この支払総額にしてくれたら、保留中の業販店に断りの電話を入れ、いまここでハンコ押して1台買いましょう。」
と伝える。
私はこれを「ハンコちらつかせ作戦」と呼んでいるが、この手法&交渉展開は「月刊自家用車」からの伝授である。
「自家用車」は「ちょっと無理かな? と思うくらいの数字がベスト」というが、私の場合は「ちょっと」どころか、当の本人がいった直後に「無茶だったかな」と思ったほどの、かなり無理な数字(だったと思う)で、担当セールスさんは店長との相談に35分間、裏に引っ込んだままだったっけ。
女性セールス氏再登場。
そして店長さんが初登場!
敵の2人体制に、こちらも警戒モードをスイッチ・オン!
もっとも、もしこのコラムを彼女&彼が読んでいたら、
「そんなのこっちだっておんなじだったわよ!」
と思っているかも知れない。
ほがらかな談笑のようで、その実お互いの目は笑っていない(ウソです)交渉が続いたが、結局は目論見どおりの数字となり、契約に至った。
今回はここまで。
また次回お会い致しましょう。
(第3回につづく)
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