ベストカーの名物といえば、なんといってもメーカーが今後投入するモデルを暴くスクープページ。
編集部に舞い込む多くの情報から信頼できるものを厳選して展開するのだが、それでもある時から情報がパタリと出てこなくなるものもある。
ハイラックスサーフが生き残っていた! トヨタ北米専売SUV「4ランナー」日本発売熱望!
クルマの開発は水物。メーカーも限られたリソースをどの車種に投入するかを常に判断しているため、「これはやっぱり……、もう1回考えようか」と、開発の凍結または優先順位が大きく下げられることはありえる。
もちろん、観測気球のように「(反響がよければ)市販の可能性も」というメーカー関係者からのコメントを、1200%真に受けて「市販するぞ!!」と先走って報じてしまうケースも多々ありまして…(本当にすみません)。
そこで今回は、かつては誌面やサイトを賑わせていたものの、いっこうに姿を現さず、いつまでたっても市販されないスクープ情報の、なぜそうなったか、今どうなっているかを、ごめんなさい、すみません、面目ないなどなどな気持ちを精一杯こめてご紹介します。
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※本稿は2020年6月のものです
文・写真・予想CG:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年7月10日号
■トヨタ S-FR(盛り上がっていた時期 2016年)
●5ナンバーサイズの低価格エントリーFRスポーツ
「EVスポーツとして再出発」との情報が入った時に作成した予想CG。確かにEVならばパワーユニットレイアウトの自由度は高く、付加価値も付く
〈どんなクルマだった?〉
2015年の東京モーターショーに出展された86より小さなFRモデルで、車両重量=約1トンの、軽量なエントリースポーツ。
ベストカーは、その軽量ボディに140psの出力を発生する1.5Lエンジンを搭載し、価格は200万円以下からスタートという内容で、2020年に登場すると紹介した。
〈今どうなってる?〉
コンパクトすぎる車体は、グローバル基準の安全性を確保できないとの理由で開発が凍結されたという情報も流れたが、実際は「すでに86が存在するのに、本当にこのクルマを作る必要があるか」という販売的判断で凍結。
その後、EVスポーツとして開発が再スタートしたとの情報も流れたが、こちらもその後の動きが入っていない(一説には「コンパクトサイズのスポーツモデルはヤリスGRとGRコペンが担当する」ということで、その2モデルに開発資源が振り向けられたという情報も)。
とはいえ現在のトヨタには何をしてくるかわからない勢いがあり、今後、再び計画が動き出す可能性もゼロではない。
2015年の東京モーターショー出展時の写真。かつての「ヨタハチ」を思わせるデザインも魅力だったが……
●望みを捨てるのはまだ早い度…★★☆☆☆
■トヨタ LQ(盛り上がっていた時期 2020年)
●近未来的なルックスながら、公道走行試験も実施
昨年の東京モーターショー出展時のひとコマ。こんなナリだがステアリングやシートなどは現行市販車同等のものが装備されていた
〈どんなクルマだった?〉
2019年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカーで「未来の愛車」を具現化したEV。AIエージェントやレベル4クラスの自動運転機能を搭載する。全長4530×全幅1840×全高1480mmと、意外と大柄。
〈今どうなってる?〉
2019年の東京モーターショー出品時には、トヨタブースに詰めかけた記者陣の誰もが「さすがにデザインが未来的すぎる…。こんなクルマが市販され公道を走り回るようになるのは、早くても10年後とかの話だろう」と思ったものだが、ショー会場でのトヨタ側の説明によると「このまま公道走行可能なように、国内法規制をクリアしました」と驚きの説明がなされた。マジですか。「ということは、このまま市販する可能性も…?」と畳みかけると、「それは反響次第ですし、ご想像にお任せします。ご期待ください」との回答。
さらに取材を進めていくと(2020年春時点で)、LQは東京オリンピック2020に合わせて公道テストを繰り返しているとの情報が入り、SNSでは実際に仮ナンバーを付けたLQの公道走行目撃写真がアップされ始めた。
期せずして、トヨタが2020年内に量産型EVの市販計画があることも判明。
おお、す、すごい。この時点で当サイトにて「LQこのまま市販!」と報じました。はい、すみません(←もう謝る)。このLQ、すくなくとも数年は、市販はありません。勘違いでした。
トヨタが2020年内に市販を計画しているのは2人乗りの超小型EV(名称未定)で、LQとは別のシティコミューター。 いっぽうLQは市販化の予定はなく、公道走行のための国内法規クリアは、東京オリンピックの際のデモンストレーション走行のためだったことが明らかに。
当サイトの市販記事に期待を寄せてくださった皆さま、本当に申し訳ありません…。もちろん、この未来的なデザインで公道走行のための法規をクリアすることは、それだけでもすごいことなんですが、さすがに市販は無理でした。オリンピック開催を記念して50台限定販売とかしたら話題になるだろうに…。そんなわけで2021年夏に延期となった東京オリンピック開催時に、【デモ走行で】東京の街をLQが走ります。
今夏市販予定だったということで、ショー出展時にアナウンスされたレベル4クラスの自動運転やAIエージェントの搭載は疑問だが、とにかくこの姿で売られることに意味があった
●望みを捨てるのはまだ早い度…★★★☆☆
■トヨタ Tjクルーザー(盛り上がっていた時期 2018-2019年)
●アメリカンな雰囲気が魅力のクロスオーバー車
昨今のトヨタデザインからは逸脱した外観だっただけに、不安要素もなくはなかったが、「それでも今のトヨタなら」と誰もが期待していた
〈どんなクルマだった?〉
2017年の東京モーターショーに出展。SUVとバンのクロスオーバーというコンセプトで4300mmのコンパクトな車体ながら、後席にスライドドアを採用し、フラットになるシートと併せ、高い実用性を持っていた。搭載パワーユニットは2LエンジンベースのTHS-II。
シートの厚みなど、コンセプトカー然とした部分はあるが、優れた使い勝手がわかる。インパネまわりも現実的だ
〈今どうなってる?〉
こちらも当サイトが「市販するらしい!」と報じまくったのに、市販計画はなかった…というモデル。すみませんでした。
2017年の東京モーターショー出品時にパッケージング的にはどこにも大きな困難となるものは存在せず、「反響が大きければ市販も」という情報が入り、実際に大反響だったこと、その後に「トヨタ内で新型SUVの開発が動いている」との情報が加わったことで、「これは出るぞ!」と先走ってしまいました。
しかし残念ながら、2020年に入っても具体的な開発・市販化計画は聞こえてこず、関係者に取材したところ「市販プランはない」ということが判明。あああ…申し訳ない。今後、似たようなコンセプトのクルマが出る可能性は当然あるが(エスティマに代わる新型コミューターの開発計画は進んでいるとの情報はある)、Tjクルーザーとは別ものと考えたほうがよさそう。無念です…。
●望みを捨てるのはまだ早い度…★☆☆☆☆
■ホンダ S2000後継車(盛り上がっていた時期 2015年)
●電気に頼らない410ps発生エンジンをミドに搭載
「ビジョングランツーリスモ」用に作られたものをベースに市販型を予想
〈どんなクルマだった?〉
7500回転で410psを発生する高回転型の2L直4ターボを、運転席後方に積むミドシップマシン。組み合わされるミッションには8速DCTが採用され、まさにNSXの弟分といえるモデル。
2015年時に製作したリアスタイル予想CG
〈今どうなってる?〉
S2000後継モデルの情報を追っていたスクープ班が色めきたったのは2015年夏。海外でホンダの新しいミドシップスポーツのデザインが流出した時だった。
というのも、スクープ班はその年の春にホンダ関係者から、NSX(当時開発中)を小さくしたモデルを計画していると聞かされていたからだ。
そして2017年11月、ドライビングシミュレーターゲーム『グランツーリスモ』関連プロジェクト、「ビジョングランツーリスモ」に前出のスペックを持つモデルが登場。そのあまりに現実的な内容に、スクープ班は実車開発に向けたプレゼンテーションと解釈し、さらなる情報を追った。
で、肝心の現在だが、残念ながら実車開発に向けた具体的な動きの話は現時点で入ってきていない。セダンのラインナップ縮小など、ホンダの経営状況もよいとは言えないだけに、横展開しづらいミドシップモデルの開発優先順位はやはり低いということだろう。もちろん気長に待てば可能性はある。
…が、現在ホンダ社内では「日本国内販売はN-BOXが大ヒットしており、それ以外のモデルに注力する意味があるのか」という、そもそも以前の雰囲気のようだ。つらい。
ホンダ29年ぶりのFRということでファンの多いS2000。1999年登場
●望みを捨てるのはまだ早い度…★★☆☆☆
■ホンダ S1000(盛り上がっていた時期 2017年)
●S660の兄貴分はマッスルなフェンダーが魅力!
S1000の予想図
〈どんなクルマだった?〉
S660をベースとしたステップアップモデルで、名称どおり1Lエンジンを搭載する説と、エンジンは660ccのまま出力を1Lエンジン級に引き上げる説の、ふたつの説が存在する。海外での販売を考慮し、全幅は大きく拡幅され、よりスタイリッシュに。
張り出したフェンダーが魅力的
〈今どうなってる?〉
S2000後継車同様、最近では市販に向け開発が進んでいるという情報は入ってきていない。しかしミドシップというある種特殊なモデルを日本市場だけでペイするのは難しいため、海外での展開は充分ありえる話。初代コペンは1.3Lエンジンを搭載して、欧州でも販売されたが、それと同じような考えだ。
ベースとなる車両があるため、S2000よりは開発のハードルが低いが、S660自体登場から5年が経過しているため、このままS1000計画消滅という可能性もある……。
●望みを捨てるのはまだ早い度…★★☆☆☆
■スズキ ジムニー5ドア(盛り上がっていた時期 2018年)
●実用性と日常性を高次元でバランス。魅力的です
純粋な悪路走破性ならホイールベースの短い3ドアだが、5ドア化で得られる日常性は魅力だ
〈どんなクルマだった?〉
ジムニーシエラをベースにホイールベースを延長し、5ドアとしたモデル。全長は3900mmとなり、後席居住性が大幅に改善。タフギアとしての実用性と、使い勝手などの日常性を高次元でバランスさせたものとなる。1.5L NAエンジンに変更はない。
もうひとつ可能性があるのが2019年のオートサロンに出たシエラベースのピックアップ。このほうが可能性が高いというスズキ関係者も
〈今どうなってる?〉
過去から現在までスクープ班にとって一番手ごわい相手がスズキ。とにかくニューモデルの情報が出てこない。
そんなスズキにあって、このジムニー5ドアは、今後まだまだ期待できる1台。というのも、新型ジムニー発表会の場で鈴木俊弘社長自ら「まずは3ドアでいきますが、おいおい市場の声も聞きながら検討していきたい」との発言をしているからだ。
現状、まだジムニー、ジムニーシエラとも納車まで1年近くかかるといわれており、スズキとしても派生モデルにまで手が回せない状況だが、人気が少し落ち着けばカンフル剤として投入される可能性はかなり高い。
ちなみに5ドアとなると、ますます某ドイツメーカーの老舗SUVに外見が似てくるが、そこはそれとして楽しみたい(数年後の話ではあるが)。
●望みを捨てるのはまだ早い度…★★★★☆
■まとめ
まだまだ期待できるもの、もはや厳しいもの、いろいろ紹介してきました。新型車の登場に一喜一憂させて本当に申し訳ないけれど、「これ出ます」と報じているときは、編集部も本気中の本気で「出ます」を信じています。なので「やっぱり出ません」という話をお伝えすることは、身を切るような思いです。だからといって許される話ではないとは思いますが、それでも(途中で開発計画や販売計画が立ち消えになったとしても)市販化の動きが流れてきたら、懲りずに「これ出ます!」と報じてゆきます。ご迷惑をおかけしますが、今後もスクープを楽しみにしてくれたら嬉しいです。
【番外コラム】編集部内でも「何だったんだアレは」状態 究極のSTI製コンプリートマシンSTI 20B
2017年頃、「STIが創立30周年に向けたメモリアルなモデルを用意している」という情報を、当時編集部に在籍していたメンバーがつかみ、部内で話題になった。
350psまで引き上げられたEJ20を積むとされたSTI 20B。ゴールドのホイールがまぶしい
その編集部員によれば「ボディメイクにまで手が入った初代インプレッサ22B STiバージョンの再来」、「EJ20エンジンのパワーも大きく引き上げられる」とのことだったので、上のような予想CGが作られ、「STI 20B」なる呼称も与えられたのだが、結局それらしいモデルは出ないまま、WRX STIもEJ20型エンジンも終了した。
編集部内でも「何だったんだアレは」状態なのだが、期待を持たせてしまった読者の皆様には謝罪したい。すみませんでした。
出力的に近いのは北米で2019年に販売された「S209」か。345psを発生するEJ25エンジンを搭載していたが日本には導入されなかった
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