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【ヒットの法則389】カイエン GTSはポルシェらしい「スポーツカーのようなSUV」だった

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【ヒットの法則389】カイエン GTSはポルシェらしい「スポーツカーのようなSUV」だった

2007年秋、初代ポルシェ カイエンに新グレード「GTS」が登場。「GTS」というモデル名は、快適な長距離走行と優れたスポーツ性能を高いレベルで両立させたモデルだ。カイエンGTSはどんなモデルに仕上がっていたのか。ここではポルトガルで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年1月号より)

俊敏な動力性能と印象的なエクステリア
フェイスリフトされたカイエンの販売は相変わらず絶好調である。生産を担当するライプチヒ工場は現在、日産180台というペースでフル稼働していて、これ以上の増産は不可能なほどだという。そんな好調ぶりをさらに後押しするであろうニューモデルが、このカイエンGTSである。

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その生まれもユニークで、市場調査の結果、カイエン Sとカイエン ターボの間に相当するモデルへの需要が高いと判断されたからだという。

オンロードのスポーツSUVとして明確な個性を与えるという方針により、パワーアップされた4.8Lエンジン、標準モデルより低い車高、強化されたサスペンションシステム、カイエン ターボに準じた専用エクステリアなどが採用された結果、これこそポルシェが本当に作りたかったカイエンなのではないか、と思わせるモデルの登場となったのだ。

まず最初に試乗したのはオプション設定のエアサスペンションと、エアサスペンションにのみ組み合わせることができるPDCC(ポルシェダイナミックシャシコントロール/前後アクティブスタビライザーシステム)を備えた6速ATモデル。なおGTSには標準で可変式ダンパーを採用するPASM(ポルシェアクティブサスペンションマネージメントシステム)が装備されている。

リップによって片側14mmずつ張り出しが増したホイールアーチとタイヤとの間隔の狭さ、専用のサイドシルやリアゲート上端に装着されたウイングというGTSならではのエクステリアを確認して、左右のサポートが強調された運転席のスポーツシートに乗り込む。

エンジンを始動させ、低音の強調された排気音が標準装備のスポーツエグゾーストシステムから響くのを聞くと同時に、試乗会場のリゾートホテルをスタート。ルートマップに沿って走り出すとすぐに、郊外の一般道へと出た。先行するGTS(6速MT)に続いて右折、流れに乗るべく加速するが一瞬、頭の中で「?」マークが点滅する。先行車との車間が予想よりも大きく開いたからだ。

V8エンジンは相変わらず低回転からトルクフル。標準仕様で295/35R21サイズという大径タイヤが伝えてくる感触もスムーズで不満は覚えない。そして、およそSUVというイメージを感じさせないハンドリングに感銘を受ける。車高が低められたとはいえ、それでも絶対的にはまだ高い視点とのバランスがむしろ不自然に感じられるほどだ。とはいえ、この感覚こそがカイエンらしさだとは思うのだが。

エンジンは、回すほどに力感を増す。GTSのV8エンジンは、カイエンS用の4806ccユニットをベースに、吸気系を中心とした見直しを実施したもの。排気量の変更はなく、吸気カムシャフトにバルブタイミングとバルブリフトの可変制御を行う「バリオカム・プラス」、直噴システムのダイレクトフューエルインジェクション(DFI)方式を採用するなど、基本システムも同一だ。

吸気系の変更点は、吸入抵抗を減らすべくスロットルバルブ直径を76mmから82mmへと拡大、Y字型のエアインテーク部の断面積も合わせて拡大することで吸入空気量を増加させたこと。この結果、最高出力は385ps/6200rpmから405ps/6500rpmへと20ps向上。なお最大トルクは変わらない。

リミットの6700rpmまで回すと、1速で50km/h強、2速で90km/h強まで速やかに到達する。資料を見ると、同じく3速では140km/h、4速では190km/hとある。カイエンSでも十分なパフォーマンスを備えているのだから、GTSはもう十分以上に速い。

高速道路での巡航性能と一般道での満足いく走りっぷりを確認した後、今度は助手席へと移る。ルートマップのコマ図を読みながら行くと、段々と標高が高くなり路面も荒れてくるが、格好のワインディングルートに入る。ボディのロールを極力抑え込むPDCCの効果もあり、グイグイと走り抜けていく。コーナーでのロールが小さいだけでなく、コーナーを抜けて次の姿勢へと変化する際の揺り返し量が小さいので、ドライビングは楽しそうだ。ただし、ボディのロールは抑えられているが乗員の身体にはその抑えが効かないので、自分の頭部や上半身が振り回される印象を受け、軽いクルマ酔いを覚えたほどだった。

また2.2トン強という車重はカイエンSと同等だが加速性能が上がった分だけブレーキシステムへの負担も増している。フロント:対向6ピストン式/リア:対向4ピストン式キャリパーとローター径も含めてカイエンSと共通だが、ここはもう少し強化してもいいと感じた。

6速MTの素直さと標準仕様のシャシに好感
昼食の後に、今度は標準仕様であるコイルスプリング式サスペンション+PASM(これまでこの組み合わせは911やケイマンなどスポーツモデルだけの設定だった)、その6速MT仕様に乗り換える。クラッチペダルの操作力は軽く、そのつながり具合もわかりやすいので、とても運転しやすい。アクセルペダルへの操作に対して、クルマの反応が非常にダイレクトだと感じられる。

1速、2速と加速していくと、最初に感じた「?」マークの答えが出た。6速MT仕様は、明確に加速力で優れているのだ。GTSは、6速AT/6速MT仕様ともにファイナルギアがカイエンS用の3.55か4.10へと15%ほど低められている。これによって0→100km/h加速で6.1秒(6速MT)/6.5秒(6速AT)を実現しているが、ここでの0.4秒差というのはけっこう大きいのだ(カイエンSは6.6秒/6.8秒)。

乗り味も先ほどまでとは違う。路面の凹凸を正直にトレースしながら、かといって突き上げることなくいなしていく。PASMはコンフォート/ノーマル/スポーツの3段階を選べるが、スポーツだとやや硬すぎて跳ねる感じなので、ノーマルを選ぶとちょうどいい印象だ。

先ほどとは別のワインディングロードに入ると、確かにボディのロールは大きいが、個人的にはこの仕様の方がシックリと来る。シフトチェンジの際に発生する前後Gの変化具合も、自然な感じで気持ちいい。

リミットの6700rpmまで回してみると1速で45km/h強、2速で85km/hまですぐに到達。同じく資料によれば3速は130km/h、4速では180km/hに到達すると記されている。その後、エアサスペンション仕様の6速MT、コイルサスペンション仕様の6速ATにも試乗、一通りの組み合わせを確認した。

その結論としては「どの仕様でもいい」というものになった。なぜなら、カイエンGTS最大の魅力はそのスポーティなスタイリングにこそあると理解したからだ。

パワフルなエンジンやスポーティなシャシの持ち味は、他のモデルでは味わえない設定だ。だがそれは、このスタイリングに説得力を与えるためのものだとも考えられる。そうであるならば、どれでも自分好みの仕様を選べば満足できるからだ。

日本でのデリバリーは2008年春早々の予定で、標準モデルで1020万円からという設定である。(文:香高和仁/Motor Magazine 2008年1月号より)



ポルシェ カイエン GTS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4795×1957×1675mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:2225kg(EU)
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4806cc
●最高出力:405ps/6500rpm
●最大トルク:500Nm/3500rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速MT[6速AT]
●最高速:253km/h[251km/h]
●0→100km/h加速:6.1秒[6.5秒]
※欧州仕様

[ アルバム : ポルシェ カイエン GTS はオリジナルサイトでご覧ください ]

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